表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

125/168

124.謎の招待状

当たり前だけど……

本当に何処を見渡しても砂、砂、砂……。

砂丘すごいな……。

心結はラウルと一緒にラクダに乗りながらその景色をみていた。



あれから数日のうちに心結とラウルはデゼール王国へと

旅立っていた。



幼体モンチラちゃん達は、今回はお留守番だ。

何故ならばちょうど成人モンチラになる手前らしい。


今後も心結と一緒にいる為にはもっと強くなる!

そしてヘタレ狼を倒す!?という目標をかかげたとの事。


その為に、ガレットの元で強くなる修行をするのだそうだ。

ちょっと寂しいけど逞しく育って欲しい、うん。

いい加減モンチラちゃん達とラウルさん仲良くなって欲しい。



デゼール王国は国土の8割が砂漠の国。

中心に大きなオアシスがあり、そこを中心に街が発展して

今の国の形になったらしい。


ほとんどが不毛の地なので、小さいオアシスを巡って

小さいいざこざは絶えないとか……。


水は貴重だもんね……。

大概の動物は水がないと生きていけないから。



そんな砂漠の国の国王はガゼルの獣人だ。


ガゼルというとよくサバンナを舞台にした自然番組で

肉食獣に追われているイメージがある……。


乾燥地域でも生き抜くために独自の進化を遂げた動物で

水がなくても長期間生きられるらしい。


シュッとしたカモシカのようなイメージしかないな。

あとは竪琴みたいな形の角が立派!?

あんまりメジャーじゃないよね、とか言ったら怒られるかな……。


モフモフでもないし、あまりテンションがあがらない。


それに草食動物が国のトップに立つのって珍しい。

今までの国を振り返っても、ライオンや熊や……

あ、コウモリもいたか、でもイヌワシのように

獰猛なイメージが強い種族だった気がする。


そう言えば行く前にジェラール様も言っていたな。


「ラウル、心結ちゃん。

国王一派のガゼルには気をつけろ。

奴らは草食の皮を被った肉食獣だ。

一代で国王までに上り詰めた男だ……油断はならない」


「他に肉食獣の種族はいないのですか?」


「ん……いるっちゃいるが……。

数は少ないな……。

それに砂漠は小型の種族が多いからな」


(小型の種族……モフモフ、モフモフはおらんかね……)


心結が気がかりなのはその一点だった。


「本当は二人を行かせたくはない……。

デゼール王国はとにかく情報が少ない。

その割にはよくない噂が多い……」


「よくない噂ですが……」

心結は表情を曇らせた。


「怖がらせたくはないが……。

“闇のバザール”で()()()()()()()()()()とさえ言われている。

それがどういう意味なのかわかるだろう?」


ジェラールの眉間の皺がどんどんふかくなっていく。


(ヒィィッィィ……完全にアウトじゃん。

とんでもないものばかりがでるってことだよね……。

某お金持ちしか入れない、有名な美術品のオークションみたいな

健全で優雅なものじゃないって事ね!!

全てが違法品のオンパレードか……怖すぎる)


「本来ならば、我が国に招待状が届くなんて

ありえない事なんだがな。

アルテュール国王は賢王として有名なうえに

“闇のバザール”なんてものに興味を示すはずがない」


ジェラールは苛立たしげに尻尾を左右に振った。


「それにいっちゃあなんだが、我が国は大国だ。

本来ならばデゼール王国にとって雲の上の存在。

それなのに何故か、我が国に招待状が届いた」


「何か目的があるのでしょうか?」


「ここにきて、()()()()()()()()かもしれんな。

密かに参加していたのかもしれん」


(エーデル妃かぁ……。

あの方ならやりかねないわ……。

だから今年も招待状届いちゃったって事!!

本人いないのに!?)


心結は遠い目になった。


「…………」


ラウルも呆れ半分苛立たしさ半分の微妙な表情をしていた。


「本来ならそんな招待など受けないのだが

事情が事情だ……。

今回は乗ってしまおうという事になった。

しかし国王様が自ら行くのはマズいしな……。

俺はちょっとばかし顔がうれすぎていてな」


そう言って困ったようにジェラール様は頭をガシガシかいた。


「そこでお前たちに白羽の矢がたった」


申し訳なさそうに獣耳がペタンと後ろにさがった。


そうか……ジェラール様は“紅炎の野獣”として

各国に恐れられた人だったわ。


それに比べラウルさんは“銀氷の悪魔”として名前はうれている。

が、その割に大概の人は、顔をしらないもんね……。


「顔がうれていると何かまずいことでもあるのですか?」


「闇のバザールに参加しづらくなるな。

世界各国の要人や裏の世界の者が集うからな。

俺はいい意味でも悪い意味でも有名人すぎる。

それ故に命の危険が常につきまとうだろう……」


(なるほど、恨みもたくさんかっているという事か。

そんな相手がゴロゴロやってくる会場にはいけないよね。

闇のバザールに乗じて暗殺される可能性がでてきちゃう。

恐ろしいな……。

ラウルさん大丈夫かな……

というか、闇のバザールの警備体制どうなっているのよ!!)


心結は心配そうにラウルを見上げた。


そんな心結の視線にラウルは嬉しそうに碧の目を細めて

大丈夫だというようにさらりと頭から頬かけて撫でた。


「ほれ、そこイチャイチャしない」


ニヤニヤしながらジェラールは揶揄うように言った。


「…………あぅ」


心結は変な声をあげながら真っ赤になった。


仕切りなおすようにわざとらしく咳をすると

心結は話をつづけた。


「ジェラール様、そもそもなんですが……。

デゼール王国って鎖国か何かしているのですか?

今までの国なら、厳しさは違えども観光や商業など

様々な目的で入国はできたかと思うのですが」


心結は不思議そうに首を傾げた。


「デゼール王国は特殊でな。

向こうから招待されない限り決して入れない国だ」


「えっ!? なにそれ最強の国じゃないですか。

もし戦争とかになったら攻められないって事ですよね」


「そうだな。

そもそもかなり国土の小さい国だし……

特に何か目立って特産品があるわけでもないからな

他の国が攻め入ることはほとんどないと思うぞ」


(砂漠をなめたらいけない、地下に石油やら……

レアメタル的な物がごろごろ眠っているやもしれないじゃないか

ってここを地球と同じ土俵で考えたらだめなのかしら?)


「なるほど……」


一応納得している風に返事はしておいた。


「それこそ“闇のバザール”で成り立っているといっても

過言じゃない。

その闇のバザールも不定期開催だしな……。

元々、流れ者が集まってできた国だと揶揄されているくらいだ」


「なかなかの無法地帯だったのですね」


「そうだ……。

数年前まではただの自治区だった無法地帯を国まで引きあげたのが

今の国王、しかもガゼルの獣人だ」


「見た目に反してなかなかの切れ者だと聞きます」


「らしいな。

だからこそ我が国の中枢まで食い込めたんだろうな。

今となってはそれが功を奏しているが……

なんとも複雑な気分だぜ」


ジェラールは肩をすくめながら顔を顰めた。


「だから今回の旅はかなり危険な任務になる。

頼むぞラウル、心結ちゃん」


「はい」


二人は神妙な顔で頷いた。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ