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123.幻の花

今日は王宮に呼ばれています。

あんなことがあったので本当はあまり気乗りがしない。

でも大事な話があるみたい……。


「心結ちゃん、緊張しなくていいからな。

今日はプライベートな訪問だから」


ジェラール様はそう言って優しく微笑んでくれるけど

やっぱりこの雰囲気はなれない。


ラウルは相変わらずぴったりと心結に寄り添って

優雅に果実水を飲んでいた。


そこに王様がやってきた。


「待たせてすまない」


三人は立ち上がってお辞儀をしようとしたが

王様がやんわりとそれをとめた。


「君たちは臣下ではないから必要ない。

今日は来てくれてありがとう」


そう言った王様は、初めて会った時よりもオーラが増していた。

やはり毒が身体から抜けたお蔭だろう。


もう今では、胸のところにあった赤黒い靄のようなものは

ほとんど視えない。


(よかった、これが本来のお姿なんだな。

眩しいくらいの黄金のイケオジモフモフ!! )


「心結さんと呼んでもいいのだろうか」


「はい」


「この度は……愚息とわが妃があなたにしたことを謝りたい。

本当に申し訳なかった。

謝ってすむことではないかもしれないが……

どうか私の顔に免じて、謝罪だけでも受け取って欲しい」


そう言って深々と心結に頭をさげた。


「こ……困ります国王様。顔をあげてください」


心結は焦った。

まさか一国の王に頭を下げさせてしまうなんて……。


「気にしていませんというのはちょっと嘘になってしまいますが

多かれ少なかれ皆それぞれやった事の代償は払ったと思います。

私こそ国王様に謝らなくてはいけないのかもしれません。

今回のことが引き金になり……

辛いご決断をさせてしまう事になってしまったのですから……」


「それは違う。

長年燻っていたモノを解決してくれたのだ。

お陰で真相もわかり、また息子にも再会できた……」


そう言ってラウルを優しい目で見つめていた。


「…………」


ラウルは冷静な顔をしていたが、机の下ではぎゅっと心結の手を

握って離さなかった。


「それと今日はもう一つ頼みがあるのだ。

リオネルの事なんだが……」


(そう言えばリオネル様のお姿が見えないなとは思っていたけど)


王様は苦しそうにポツリと言った。


「長年の毒の影響もさることながら、今回での戦闘。

更に新たな毒を打たれた為に、正直言ってあまりよろしくない。

このままだと今年いっぱいもつかどうかなのだ」


「えっ!」


心結は紫の瞳をこぼれんばかり見開いて固まった。

ラウルも同じように目を見開いていた。


「これでもよくもっている方なのだそうだ。

本当だったらあの日に即死してもいいくらいの毒だったらしい。

主治医が不思議がっていたくらいだ」


そう言って意味深な顔で心結をみた。


(あっ!自然回復能力スキルが少しは役に立ったのかな)


そんな王様の視線に心結は困ったように微笑んだ。


「そこでだ。

二人に“デゼール王国”に行ってもらいたいのだ」


「デゼール王国ですか……。

またなぜあのような国に!?

確か国交はなかったと思われますが」


ラウルは不思議そうに首を傾げた。


「うむ……。

あの国にしか咲かない“デザエルフルーゥ”という花がある。

通称“砂漠の花”と言われているものだ」


(デゼール王国は砂漠の国なのかな……。

暑そうだな……。モフモフいるかな……)


「30年に一度しか咲かないそうなのだが……

それが今年なのだ。

しかもその花はすべての毒を解毒する幻の花なのだ。

それを是非とも手に入れてもらいたい」


「それは市場に出まわらないものなのですか?」


心結は王様に聞いてみた。


「一切出まわらない。

密かに開催される“闇のバザール”でしか手にいれられない

貴重な植物だ。

生息地はおろか……

どうやって収穫するかなどもすべて謎に包まれているものだ」


(闇のバザール。もう名前からしてヤバイ。

ラオさんに頼んだ方が早いんじゃないの!?)


そんな心結の考えを読んだかのようにラウルは不機嫌に言った。


「コウモリに頼もうなんて思うなよ。

流石にあいつでも無理だ。

デゼール王国は簡単には入国はできない」


「ラウルさん!? なんでわかったの」


心結が驚いた顔でラウルを見た。


「…………」


心結の腰に尻尾を絡ませると不機嫌そうにプイっとそっぽをむいた。


「えっ?え?なんでそんなに怒っているの?」


心結はその尻尾をモフモフさせながらラウルの横顔を

困ったようにみつめていた。


そんな二人を生暖かい目でみつめるイケオジ二人なのであった。


(これで付き合ってないんだぜ。

もうお前らつきあっちゃえよ!!)


そう心の底から思うジェラールであった。




国王様との謁見の後、すぐにリオネル王太子のお見舞いに行った。


「ラウル……心結さん……来てくれたんだ」


ベッドの中から苦しそうな息をあげながらも

微笑んで迎えてくれた。


「兄上……」


ラウルはギュッとその手を握って目を潤ませた。


「デゼール王国に……行くって聞いたよ……。

父上が無理を言ったんだね……。

あそこは未知の国だ……。

二人に危険を冒してほしくない……。

僕の事はもういいんだよ……

二人にはこのまま静かに暮らして……」


「いいえ、行きます」


ラウルはギュッと更に手を握って言った。


「ラウル……」


そんな二人の手を更に心結が上から両手で握って言った。


「僅かな可能性があるのなら私たちは行きます。

もうこれ以上大切な人を失いたくないんです」


「心結……」


ほとんど涙目の二人と心結は無言で頷きあった。


「リオネル様、安心してください。

なんと言ってもこっちには……

“銀氷の悪魔”と自称“聖女”がいるんですよ!

最強のコンビじゃないですか」


そういって心結は胸をドンとはった。


そんな心結の発言に思わず吹き出してしまうリオネルと

複雑そうな表情のラウルがいた。


「フフフ……そうだね。最強なコンビだね……

本当にありがとう二人とも……」


(どうか、少しでもリオネル様がよくなりますように)


心結はまたこっそりと自然回復能力スキルを使った。


〈ん?なんだこの暖かい魔力は……〉


ラウルは急に手から流れ込んでくる不思議な魔力に驚いていた。

リオネルも同じように手を凝視している。


「痛いの痛いの飛んでいけ~」


無意識のうちにそう呟いていた。


〈痛いの痛いの飛んでいけってなんだよ……。

きっとまた黄金の国ジャッポーネのおまじないとか

言い出しかねないな……〉


ラウルはこっそり苦笑した。


〈身体の奥から浄化されるような気がする……。

心結さんやっぱりあなたはまぎれもなく聖女だよ……〉


リオネルは幸せそうな顔をしながら眠りに落ちていった。



ラウルと心結はそっと部屋を後にした。


「心結……」


「はい?」


「さっきの力は……」


「力?」


心結は首を傾げた。


「フ……いやなんでもない」


そういってラウルは嬉しそうに目を細めた。


「そんなことよりラウルさん。

いつまで手を握っているのですか……」


ガッツリ恋人つなぎをされた手を見ながら頬をそめた。


「お屋敷に着くまでですが」


それが何か?くらいの顔をされ心結は固まった。


(狼の距離のつめかたハンパない)


心結はクラクラしながら王宮を後にしたのであった。


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