121.そうだったの!?
今日は久しぶりにモンチラの里に来ています。
無事に保護をした商人モンチラちゃん達を返すためです。
『ミユウ!! ブジダッタカ。
ソレニナカマヲトリモドシテクレテ、アリガトウ』
久しぶりにあったガレットはますます凶暴顔に
拍車がかかっていた。
大きさもまた更に大きくなった気がする。
このままいくと1mくらいまで育ちそうでコワイ。
「ガレット!!」
心結は嬉しさの余り、ガレットに抱きついた。
(スベスベモフモフは健在だ!!
フッカフカ~幸せ~これぞモンチラの醍醐味~)
心結は心ゆく迄モフモフを堪能していた。
が、すぐにベリッと何者かによって剝がされた。
「心結……そう簡単に男に抱き着くのはよくない」
そう言ってそのまま心結はラウルの元に引き戻された。
『ミユウ……コイツハダレダ。
オマエノツガイカ?』
ガレットは意味深に二人をみてニヤリと笑った。
「ガ……ガレット、違うから……」
心結は赤くなりながら必死に否定する。
ラウルは否定も肯定もしないで涼しい顔をしていた。
『ン……オマエ、アノトキノオオカミカ!?』
「そうだ。
今日はランベール王国の国王の名代としてきた。
代表たちと話をさせてくれないか」
『…………イマサラナニヲハナストイウノダ』
ガレットは怒りを隠しもせずに顔を顰めた。
「誠意をもって話し合いをさせて頂きたい」
「ガレット……」
心結は心配そうに二人の顔を見比べていた。
『フゥ……ワカッタ、ツイテコイ』
ガレットの仲介も功を奏したのだろう。
ラウルは国王の手紙を長老や代表たちに託した。
どうやら正式な謝罪や今後の関係性を話しあうみたいだ。
その間心結は、幼体モンチラちゃん達と村めぐりをしていた。
「相変わらず長閑だけど、チラホラ新しい建物も増えているね」
『キュ!!キュキュ~』
パン屋さんも更に大きくなっていた。
(あっ!後でキュイジーヌ様の祠にも顔を出さないと)
『キュ……キュ!キュキュ!』
故郷に帰ってきたからだろうか……
モンチラちゃん達も終始ご機嫌だった。
そう言えば、今まで疑問視してなかったけど
幼体モンチラちゃんの親って誰なのだろう。
ずっと私についてきてくれているけど、これはいかんな!!
ご挨拶しないといけないわ。
あ、どうしよう菓子折り持ってきてない。
そんな事を考えながら歩いていると前からガレットがやってきた。
「ガレット、会議は終わったの?」
『マダダ、イマチョウロウタチトオマエノダンナガ
コンゴノトリヒキニツイテ、ハナシアッテルダロウヨ』
「もう、だからそんなんじゃないって」
心結は恥ずかしそうに目を伏せた。
ガレットはどうして頑なに心結が否定するのかわからなかった。
何故なら心結からはあのラウルという狼の匂いがガッツリ
するからだった。
人型の心結には全くわからなかったが、きっと100人いたら
100人がそれを感じ取ったであろう。
あの日以来、ラウルは狼姿をチラつかせては
心結と一緒に昼寝をしたり……
夜も一緒に過ごすことも多くなっていた。
しかしあくまでも健全なモフモフ付き合いである。
〈やはりヘタレ狼じゃないか!〉
各方面からそういう声が上がっていますが……。
多めに見てやってください。
なんせ拗らせ狼と恋愛偏差値底辺の天然女の二人なので……。
モフモフスキーの心結にとっては……
狼のラウルに包まれて寝る事は極上のご褒美であった。
獣人や獣体は、自分の番に自分の匂いを纏わせて
他のものから奪われないようにする性質があるのだ。
こうして心結の知らないところで着実に外堀を埋めていく
ラウルなのであった。
「ガレットはこんなところで油を売っていていいの?」
『オレハブトウハダ。
コマカイコウショウナドハ、アイツラニマカセタホウガイイ」
「ところで、ガレットに聞きたいことがあるんだけど」
『ナンダ』
心結は腕の中にいる二匹の幼体モンチラを見せながら言った。
「この子達の親御さんに挨拶したいんだけど」
「…………」
今更何を言い出すのだろうという顔をされた。
(えっ?何この微妙な間は……)
心結は首を傾げながらも更に質問をした。
「その前にこの子達の名前って知ってる?」
『マダナイナ。タシカ15バンメト16バンメノコダナ』
「ん?誰の」
『オレノダガ』
「ええええええ!?
ガレットの子供達だったの……似てない……。
じゃなくて本当に!?」
心結は思いっきり目を剝いた。
そして何度もガレットとモンチラちゃん達を見比べた。
(ま……まさか
こんなに可愛い子達が将来こんなにイカツイ凶暴顔の
巨大モンチラになるとでもいうのか……)
『オマエ……
ナニカシツレイナコトヲ、カンガエテイルダロウ』
心結はギクッとして顔を引きつらせた。
「えっ?してないよ、うん。
このまま元気に育って欲しいなぁ~って」
露骨に目を逸らした。
『…………。
アンシンシロ。オレハトクイヘンシュダ。
オレミタイニソダツノハ、レアケースダ』
あからさまにほっとする心結であった。
『アカラサマニホットスルナヨ……』
ガレットは苦虫を噛みつぶしたような顔になった。
「ごめん……。
だってこんなに可愛いモフスベちゃん達だから」
心結は二匹を抱きしめて頬ずりをした。
するとそんな二人のやり取りを黙って聞いていた
幼体モンチラ達が何かを訴えて鳴き始めた。
『…………。ワカッタ、ワカッタ』
ガレットはなだめるように何度も頷いた。
「どうしたの?」
『コイツラガ、ミユウ二ナマエヲツケテ
ホシイトイッテイル』
「つけてもいいの?確か双子ちゃんだよね」
『ソウダ』
「悩むな……。その前に確認だけど君たちはオスだよね」
『キュ!キュキュ』
『メスハシッポガ、ハートガタダ』
「そうなの?知らなかった。
後でパン屋の看板娘の黒モフちゃんに見せてもらおうっと」
『オテヤワラカニナ』
心結の黒いモフモフスキーのオーラが見えたのだろう。
ガレットは顔を若干引きつらせながらそう言った。
心結は幼体モンチラを一匹ずつ掌にのせて
じっと見つめてよく個体を観察した。
「この耳の縁が黒い子が“ノワール”。
そして耳が真っ白なこの子は“ブラン”にする」
心結がそう言うと、二匹は嬉しそうに鳴きながら飛び跳ねた。
『アリガトウ!』
『アリガトウ!』
「………………!!」
心結とガレットは目を見合わせて叫んだ。
「喋ったぁぁぁぁ!?」
「ガレット……しゃべったよこの子達」
『ア……アア。
チカラガアルモノニ、ナマエヲモラッタセイダナ。
トツゼンヘンイシタカ』
「うそ……よかったのかな」
『ドノミチコイツラハ、オマエトトモニアルウンメイダロウヨ』
ガレットは肩を竦めながら二匹をみた。
『ミユウトイッショニイキタイ』
『ズットイッショ』
「嬉しいけど、それは私の一存では決められないな」
二匹はシュンとした。
そして縋るような視線でガレットをみた。
『…………』
盛大にため息をつきながらもはっきりと言った。
『イイゾ、オマエラノスキニシロ』
『ヤッタァアァァァ!!』
二匹は喜びのあまり、ピョンピョン跳ねながら宙返りを
その場で何回もきめていた。
「ちょっと!!
ガレットそんな簡単に許可していいの?」
心結は焦りながらガレットに詰め寄った。
『オレタチハ、ジブンノミチハジブンデキメル。
ソレハヨウタイデモ、セイタイデモカワラナイ』
幼体モンチラちゃんまで神妙な顔で頷いているし。
どうしてこうなった!?
心結は複雑な思いで空を見上げていた。




