113.生クリームの虜からの三つ目!!
今日はついに空の神様エリゼちゃんとの正式な対面の日です。
お供えのお菓子はしっかりと持参しております。
心結はバスケットを胸に抱きしめながら……
一人神殿の奥にある女神像の前へと進んだ。
相変わらず祭壇の上には……
ドドドングリが大量にスタンバイされております。
もうこれで何回目だろうか……。
そう思いながら作ってきたクッキーサンドを祭壇に供えると
いつもの如くひざまづき、祈りを捧げることにした。
(空の神様“エリゼ”様……
いらっしゃいますでしょうか……)
「…………」
一回目で現れないのは想定済みだ。
(美味しいクッキーサンド作ってきました)
そういうと女神像が微かに輝きだした。
おっ!興味が少し出てきたらしい。
(エリゼ様の大好きなドドドングリ形のクッキーですよ。
そのクッキーを重ねた中に、美味しいクリームが入っています)
更に激しく女神像がキラキラ輝き始めた。
(私達が初めて出会った山で採れた野いちごと胡桃が入った
甘い白いクリームが挟まっているお菓子ですよ~)
ごくりっ……
どこからか喉がなる音が聞こえてきた気がした。
するとまたもやシュッと何かが女神像の中から出てきて
クッキーサンドを一枚取って消えた……。
シャクシャクと咀嚼音だけ聞こえてくる……。
「おいしい~これ、おいしい!!
中に入っている白いやつが特においしい~」
心の呟きがガッツリ声に出ていますよ女神様。
ドドドングリ会話は、今日はしないのかい?
気がつくと供えていたもう一枚もいつの間にかなくなっていた。
「もっと食べたい……」
「それならば姿をお見せください」
もう一度ひざまづいて祈りを捧げた。
少し間があっただろうか、やがて一言返ってきた。
「…………わかった」
祭壇の中央にそれは現れた。
とても美しい小鳥だった。
両翼の間からのぞく背中の水色は鮮やかで、光の加減だろうか
時には緑色にも見える羽を持っていた。
それなのに……嘴には生クリームをガッツリつけての登場だ。
「飛ぶ宝石“カワセミ”ですか」
「そうだよ~。
胸と腹毛は橙色でモフモフだよ。
モフモフスキーにはたまらないでしょ?」
そう言って羽を広げてポーズを決めてくれていますが
なんかちょっと違うのよね。
むしろモフモフならヒヨコの方がモフモフではなかろうか。
とは口が裂けても言えない雰囲気でした。
それに目がクッキーサンド早くおかわりくれ!
と言っていたので、素直に渡した。
器用に嘴で突いて食べてらっしゃったよ。
キツツキか?というくらい高速で突いて食べていたよ。
2枚ペロリと食べて落ち着いたのだろう。
ようやく話のできる状態になった。
だからここはもう直球に聞いてしまおうと心結は思った。
「エリゼ様……
またこの国に戻ってきてくれませんか?」
「んー」
祭壇の上を行ったり来たりして悩んでいる様子だった。
「そもそも何故この国を出ようと思ったのですか?
イヌワシ獣人のやり方がお気に召さなかったですか?」
「あのね……」
エリゼちゃんはぽつりぽつりと話し出した。
要約すると……
遊んでくれる人がいなくなったのが原因らしい。
それまではラオさんのお父様、つまり国王様が毎日のように
エリゼちゃんと共に山の散策などをしながら遊んでくれていた。
(国王様って分刻みのスケジュールな職業じゃないのかい?
毎日幼女の女神様と遊ぶって……セレスト王国緩いな……)
エリゼちゃんが楽しい気持ちになればなるほど
山や川は潤い、たくさんの恵みをもたらせた。
ひいてはそれがセレスト王国の発展に繋がっていたのだ。
それがある日突然国王は来なくなった。
エリゼちゃんは何日もの間いつもの場所で国王を待っていた。
しかしいくら待てども国王は来なかった。
それどころかコウモリ獣人の姿さえみかける事がなくなった。
置いて行かれたような、裏切られたような気持になったらしい。
そうなるとみるみるうちに女神の力も弱くなっていった。
そしてエリゼちゃんはこの国を去った。
「でもね~ある日私のお庭に、小さいコウモリ達がきたの」
「キールくん達ですね」
「うん、そこで初めて本当の理由を知ったの。
それでまた悲しくなっちゃって……」
(暗殺の事とコウモリ獣人の迫害を知ったのか……
放ってはおけないけど、イヌワシ獣人達の為には恵みを与えたくない
というところかな……)
「二人がまた昔みたいに遊んでくれるようになったから
少しずつだけど力が湧いてきた」
(キールくん達、本当にグッジョブだよ!!)
「モフモフスキーにも美味しいお菓子貰ったから
また更に力が取り戻せている」
(モフモフスキーは名前ではないのですが……)
心結は苦笑した。
「白いやつ……凄く美味しい。
もうこの味を知ったら……他には戻れない」
カワセミこと女神様は恍惚の表情で身体を震わせた。
(ヤバイもの入ってないからね!!
誤解を生むからそういう言い方やめてください。
あくまで純正生クリーム100%ですから)
「あの、もしよかったら生クリームだけ食べます?」
心結は籠の中から瓶をとりだしてみせた。
「いる!!」
凄い勢いでカワセミが自分の手元にツッコんできた。
目のキラキラが凄い。
大丈夫かな、こんなに生クリーム摂取して……。
その小さい身体のどこに入っているのさ?
心結は瓶の蓋をあけて、祭壇の上に置いた。
カワセミは器用に瓶の淵にとまり、頭を中につっこんで食べている。
夢中になりすぎたのだろう。
(あっ……足滑らせた!!)
カワセミことエリゼちゃんは、生クリームの海にダイブした。
当然の事ながら全身生クリームまみれになっていた。
心結はオロオロしながら、助けようとしたのだが。
「最高~生クリームの海で溺れて幸せ~」
気にせずそのまま、ご満悦で生クリームを食べ続けていた……。
(どうしよう、とめるべきなのか悩むわ)
「…………」
心結は思う存分楽しんでいるカワセミを複雑な思いでみていた。
最後の一滴まで舐めて食べたカワセミは
満足そうに毛繕いをしながら言った。
「では、お礼に恒例の行事をはじめます」
(行事だったのか?あれ!!)
【チー……キッキッキッ……ピッピピピピピ、ツィー!!
新しいスキル
:天候操作 レベル7
スキル:動物魅了のレベルが40に上がった!
特殊スキル
:メロメロまっしぐら魅惑の調理 レベル30に上がった!
新しい特殊スキル
:謎の飛行物体を召喚できる レベル15
新しい称号
: 空の女神に未知の喜びをバーンと与えた聖女候補
エリゼからの一言:それは乾いた大地に花開く。
黄金を継ぐ者と共に旅立て。
お互いを知った時に初めて
手に入るものがあるだろう。
を手に入れた!】
「力が戻ってないから、あまり授けられなくてごめんね」
カワセミはシュンとしていた。
「とんでもございません、ありがとうございます」
心結は神妙に頭を下げた。
「それから、これもあげる」
カワセミは心結の掌にピンク色の宝石を一粒落とした。
(おぉ!! 肉球の欠片……連続でゲットしてしまった)
「これからも幼いコウモリの兄弟が遊びに来てくれると嬉しい」
「わかりました、伝えておきます」
「また白いのも食べたいから供えてね」
そういうとカワセミは女神像の中に消えて行った。
今回もツッコミどころは満載だが……
一言だけ言っておきたい。
謎の飛行物体を召喚できる レベル15
謎の飛行物体って……UFOの事かい?
じゃないとしても怪しいよね。
空の神様の管轄なのかしらあれって。
呼んでどうするの……使いどころあるのかしらこれ。
使ってみたいような、みたくないような……。
使わない方向で調整したいと思います。
他の疑問点は飲み込むことにする!!




