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107.意外な一面を知ってしまった

なんだろ……フワフワ揺れている……。

それに凄く温かい……。


心結は無意識にその温かいものにすり寄った。


そんな心結を優しい瞳で見つめている男。

大事そうに心結を抱いて空を飛んでいる男……。

なにを隠そうコウモリ男ことラオだ。


「あらあら……」


アガタとギャルドは意味深な視線を……。

キールとフェリィは赤くなりながらチラチラと盗み見をして……。


周りの部下達は、信じられないものを見る様に

二度見をしていた。


「なんですか……皆さん……何か言いたい事でも!?」


半分切れ気味に言うと……。


「そのこ……あなたの大事なお嬢さんだったのね」


目を潤ませながら嬉しそうにアガタに言われ

目がテンになるラオ。


「えっ!? 違います」


これは大事な商品です。

と言いかけてラオは口を噤んだ。


〈なんですか、そのみなまで言うな的な視線は!!

あーもう鬱陶しい……〉


そんな事を思いながらも顔が緩みっぱなしのラオであった。



そんな心結が目を覚ましたのは、次の日の夕方だった。


「ん……」


目を擦りながら起きようとしたが何かが自分の身体に

巻き付いていて動けない。


「えっ……」


慌てて見てみると腕が腰に絡まっていた……。

どうやら背後から誰かに抱きしめられている様だ。


(どういうこと!?この状況は何!?

またボーナスステージ突入ですか!?

いや…………違うか……というか誰!?)


なんとか体制を入れ替えて相手の顔を見てみると……。


(ラオさんっ!!)


安らかな寝息をたてるラオの寝顔が見えてきた。


(寝る時も仮面は外さないんだ……)


なんてどうでもいい事に感心した後に更にギョッとした。


(なんで上半身裸かな……。

目のやり場に困るんですが!!

でも……鍛えられている……いい身体しているな……)


って……

私は決して筋肉フェチではありません。

あくまでモフモフ押しですから!!

と誰に言い訳しているのかわからないコメントを独り言ちた。


そう言いながらもまじまじとラオを見つめてしまう心結。


(寝る時に服は着ないのに……

仮面はどんなときも装着なのかよ!!)


二度ツッコミをしてしまう心結であった。


「ククク……。

そんなに熱い視線で見つめられると溶けてしまうのですが」


耐えられないというように笑ってラオは目を開けた。


「タヌキ寝入りですか……趣味が悪い……」


「あなたがあまりにも百面相をしているので……

つい面白くなってしまいました」


「ところでこの状況を説明して頂けますでしょうか」


心結はスンと真顔になった。


「野暮なことをいいますね……。

昨日の夜はあんなにも熱い一夜を一緒に過ごしたのに」


蠱惑的に微笑をすると心結の頬を撫でた。


「ヘェーソウデスカ」


そういう冗談はお腹いっぱいなので早く言えと

心結の顔に書いてあった。


「つまらない方ですね」


ラオは腕の中から心結を開放するとベッドからおりて

シャツを羽織った。


そして今までの経緯を掻い摘んで話した。



「みんな無事だったんですね……よかった」


心結は心底ホッとしたように笑った。


「ここは、私の個人的な隠れ家の一つです。

場所は教えられませんが、セレスト王国内なのは確かです」


「そうですか」


ふと二人の間に静かな沈黙がながれる。


「あの」

「あの」


二人の声が重なった。


お互いに恥ずかしそうに目をそらす。


「ラオさんから先にどうぞ……」


「はい……では……心結さん」


(私の名前知っていたんだ!)


こんな真剣な瞳のラオさんを見るのは初めてだ。


「母を助けてくれてありがとうございます。

あなたの力がなかったら成し得なかったときいています。

この恩は一生忘れません」


そういってラオは心結に頭を下げた。


「ラオさん、やめてください。

私もラオさんに命を助けて貰った身です。

あの時ラオさんが助けてくれなかったら……

私もモンチラちゃんも黒焦げでしたよ。

だからおあいこということで!ね!」


こんなしおらしいラオにどう接していいかわからず

心結は軽く戸惑った。


するとラオは急にうって変わって……

今度は揶揄うように告げた。


「そうですね……。

あの時のあなたは可愛いらしかったですよ。

ラオ様~助けに来てくれてありがとうございます。

大好きです~。もう離さないでぇ~

と甘えた声で私にしがみつきましたからね」


心結の声真似をしながら、恍惚の表情で噛みしめる様に語った。


「はい、偽証罪で逮捕します!!」


心結は呆れたように鋭い視線を投げた。


「フフフ……照れなくてもいいのですよ」


「意識がほとんどなくて……。

その時の状況ははっきり言って覚えていません。

が、ラオさんが言っていることは断じて言ってない事

くらいはわかりますからね!」


心結はプリプリ怒りながら反論するのであった。


〈あの言葉は……無意識下で出た言葉ですか。

敵いませんね。

本当の気持ちじゃないですか、それ。

どこがいいのでしょうか、あんな男……

私の方が……よっぽどいい男ですよ〉


ラオは嫉妬に似た感情が沸き上がっていた。


「怒っているあなたが一番可愛いですね」


(変態がここにいるよ!もうやだ……)


心結がげんなりしていると、なおもラオは続けた。


「それでも私は感謝に堪えません。

何かお礼をさせてください」


「そんな事を言われましても……」


心結は本当に困ったように眉尻をさげて狼狽えた。


そんな心結をみて大袈裟にラオはため息をついた。


「全く……本当にあなたはお人よしですね。

ここは、高額な請求を吹っ掛けるとか……。

目のくらむダイヤの一つでも強請るところですよ」


(あんた今までそういう女の方と付き合ってきたのかい?)


心結はジト目で睨んだ。


「いえ、私は今までお金で割り切ったお付き合いしか……

したことがありません」


「えっ!私何もいってませんけどぉ!?

それはそれで潔いよいカミングアウトをありがとうございます?」


心結はまさかラオのドライな恋愛遍歴を聞く羽目に

なるとは思わなかったので、ちょっぴり焦った。


「そういえば……あなたの好物はモフモフでしたね……。

あいにく私が持っている商品には

モフモフがないのですよ……」


「私自身がモフモフだったらいいのですけどね……

あの男のように……」


最後の言葉は聞こえないように呟いた。


「えっ?」


「フフ……なんでもありません。

たわいのない独り言ですよ……」


そう言ってラオは意味深に微笑んだ。




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