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106.ダークヒーローですが何か!?

こんなに本気で走ったのはいつぶりだろう?

明日はきっと全身筋肉痛だな……。


まぁ無事に生きて帰れたらの話ですけどね……。


心結達の体力も限界に来ていた。



その時だった……。


「まずい!!」


急に先頭を走っていたギャルドさんが叫んだ。

前をみると階段が途中で崩れてなくなっていた。


「ここに来て嘘でしょう……」


かなり崩れてなくなっている……。

大人のギャルドさんなら余裕で飛べるかもしれないが

子供達は厳しいだろう。

心結は完全にアウトの距離だ。


「まずは私がアガタ様を向こうまでわたす。

その後順番に連れて行こう……」


「わかった!」


「僕はなんとか飛べると思います」


「よし、ならば行こう」


まずはアガタを抱いたまま、キールと一緒に

ギャルドは先の階段まで飛んだ。


(わーやっぱり鷲の羽は凄く大きくて広いんだな。

直線状に広がっているのが綺麗よね~。

カッコイイ~!!)


こんな状況なのに一人密かに興奮していた心結であった。


二人を向こう岸まで送るとすぐに舞い戻ってきた。

心結はフェリィちゃんをギャルドに渡した。


「すぐ戻る、持ちこたえてくれ」


心結は頷いた。


『キュキュ!!』


モンチラが任せろ!というように強く鳴いた。


もうすぐそこにイヌワシ獣人が迫ってきているのが見える。



ギャルドが向こう岸の階段にいるキールにフェリィを

ちょうど受け渡した時だった。


『キュキュ!!』


ひときわ高いモンチラの声と心結の悲鳴が聞こえた。


「モンチラちゃん!!」


イヌワシ獣人と戦闘になったのだろう。

いくらモンチラが戦闘種族とはいえ……まだ幼体モンチラだ。

大人二人相手では分が悪かったのだろう。


切られ弾き飛ばされたモンチラが目に入った。


しかもそのモンチラを受け止めようとイヌワシ獣人を

振り切って自らも空中に飛んだ心結が見えた。


「おねえちゃん!!」


フェリィが叫んだ。


ギャルドも心結達を助けようと飛び出そうとしたが

また上から矢が降ってきた。


「いいから逃げて!!」


暗闇の中から心結の声だけが聞こえた。


「く……」


ただ心結とモンチラが暗闇に落ちて行くのをみているしかなかった。



心結は腕の中で痛みに耐えているモンチラを抱きしめた。

自分も意識が半分朦朧としてきているのがわかる。


「モンチラちゃん……。

最後まで守ってくれてありがとう」


『キュゥゥ……』


(あっ! そういえば私……

自然回復能力のスキル持っていたわ。

どうしたらいいのだろう、ヒールとか唱えればいいのかな)


まぁ、その前にこのままいけば真っ黒こげ決定なんだけどね。


その時不意にラウルの顔が浮かんだ。

怒っている顔……照れた顔……

狼の時の精悍な横顔……。

それに一度だけ見せてくれたとても甘くて優しい笑顔


(あぁ……これが走馬灯ってやつかな)


しらずのうちに涙が溢れていた。


「………………ラ……さん……っ、私死ぬのかな」


ガシッっと何者かが心結の身体を受け止めた。


「危機一髪でしたね……

死にませんよ……。

もしそうだとしてもその時は……

この私が自ら手にかけてあげます……安心してください。

フフ……他の人なんかにさせません」


怖っ!! 全く安心できないよ!!

この人本気でやりそうで怖いよ!!

意識がなくてよかったよ、心結ちゃん。



「…………さん」


「はい?」


「助けにきてくれた……()()()()()……」


愛おしそうにラオの頬に手をあてて微笑むと

心結は完全に意識を失った。


「まったく……。

こんな時にさえ他の男の名前を呼ぶのですか……。

ひどい人だ……」


〈まぁ……私はヒーロではありませんからね……。

あなたの王子様には敵わない……ダークヒーロですよ〉


苦笑しながら、他のコウモリに指示をだす。


「全員配置につけ!一匹たりとも逃すな」


そう言って階段の方へ飛んだ時だった。


「ラオ様!!」


フェリィとキールの声が聞こえてきた。


「二人とも無事でしたか」


そういってふりかえった時だった。

ラオの目の前に長年焦がれていた人が立っていた。


「母……様…………!?」


〈私は夢でも見ているのだろうか……〉


あまりの動揺に抱いている心結を落としそうになったくらいだ。


「…………!!」


「ラオなの?……ラオなのね……」


その震えた涙の滲む懐かしい声を聞いても……

いまだに信じられない様子でしばらく固まっていた。


しかし今は再会を懐かしんでいる猶予はなかった。


「ギャルド大佐、この先に仲間が待っております。

どうか母とこの子達をよろしくお願いいたします」


心結をギャルドに手渡した。


「承知した」


後ろ髪惹かれる思いでラオは上で戦っているであろう

仲間の元へと急いだ。




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