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101.それは個性ですから

心結は焦っていた。

まさか助けにきて自分までが閉じ込められるとは……

思ってもみなかったからだ。


ミイラ取りが木乃伊になるとはこの事か!!


一先ず二人を抱きしめながら、揺れが収まるのを待っていた。


こんなにも何度も揺れるなんて……

果たしてこれは本当に自然現象なのだろうか……。


「こんな風に激しく揺れる事ってよくある事なの?」


「いいえ、何回もこの道を通っていますが、初めてです」


キールは心結にしがみつきながら答えた。


(どうしよう……。

私のスキルで何かこのピンチを突破できるものはあったかな?)


心結は必死に考えたが特になかった……。

モフモフ関連以外何もなかったわ……聖女候補なのに。


猫吸い免許皆伝者とかいらないから

風の魔法とか火の魔法とかが欲しかったわ……。

自分の事ながらがっかりする心結であった。


すると更に激しく揺れて辺りが崩れだした。


「おねえちゃん……怖いよ」


フェリィちゃんはついに泣き出した。


「大丈夫、大丈夫だから……」


二人をぎゅっと守るように抱きしめながら心結は祈った。


(女神様どうか二人を守ってください……)


その時だった、心結達の後ろの壁が突然崩落した。


「えっ?」


と思う間もなく……三人は奈落の底へと落ちていった。




心結は目が覚めて、まず最初に目に飛び込んできたのは

乾草のような場所に倒れている二人だった。


助けに行こうと身体を起こすが……

体中が悲鳴をあげた。


「いたたたた……腰を打ったかな……」


上を見上げるとぽっかりと大きな穴が開いているのが見える。


あの高さから落ちてまぁまぁ無事なのはこの干し草がある所に

偶然落ちたという幸運のお陰かもしれない。


(女神様……ありがとうございます)

ひとまずお礼は申しあげておこう!


『キュ……キュキュ』


モンチラも心結のお腹の辺りで目を回していたらしい。


「モンチラちゃんもなんとか無事だったんだね」


『キュ…』


心結は身体に鞭をうって起き上がると、二人の元にいった。


「キールくん、フェリィちゃん大丈夫?」


「ん……おねえさん」


二人は最初のうちはボッーとしていたが……

やがて意識もはっきりと戻ってきて辺りを見まわした。


「ここは何処でしょうか?」


「どこだろうね……」


どうやら目が慣れてきて、周りの景色が認識できるようになってきた。


ここはどうやら貯蔵庫のような部屋らしい。

棚には瓶詰の果物や野菜のようなものが所狭しと並んでいた。

他にもチーズやハムなども置かれているのが見える。

テーブルの上には焼き菓子やクッキーなども置いてあった。


「大きな冷蔵庫の中に入っちゃったね」


目をキラキラさせたフェリィちゃんが嬉しそうに言った。


「フフ……たしかにそうだね」


そんなほんわかムードを壊すようにキールが叫んだ。


「フェリィ!! お前……」


心結とフェリィはその声の大きさに驚き固まった。


「どうしたの?キールくん」


「お前……仮面はどうした……」


そうキールに言われフェリィは慌てて自分の顔を触った。


「ない……みたい。

でもキールも右目の部分が割れていて半分ないよ」


「えっ!」


二人は急に青ざめて、心結から視線を逸らした。


「…………?どうしたの?」


キール達は困ったように眉尻をさげて、心結の顔色を伺った。


「おねえさん……僕たちの目が気持ち悪くないの?」


(あーまたこの問題か……根深いな……

コウモリ獣人全員の心に影を落としているな……これ)


「奇麗な宝石のようだと思うけど……

どうしてそんな事をきくの?」


「僕たちは他の獣人達と違うから……醜いから……

おねえさんも嫌かなって……」


泣きそうな顔をしながら視線をしたに落とす。


「人と違っていたら何がいけないの?

それはその種族のひいてはその人の個性でしょ?

他と違うという事はおかしいという事ではないと思うな」


心結がそんなことは大したことではないというように告げると

二人は衝撃を受けたような顔をした。


『キュ……キュキュ』


「モンチラちゃんもそうだよって言っているよ」


「もっと堂々と胸をはっていこう!

逆に私はこんなに奇麗な瞳を持っていて……

羨ましいでしょうっていうくらいにね」


心結は安心させるようににっこりと笑った。


「おねえさん……」


キールの瞳から大粒の涙が落ちた。

心結は何も言わず二人をぎゅっと抱きしめた。


そんな時……人の足音と話し声が聞こえてきた。

三人の身体が強ばった。


『キュ……』


小さくモンチラが鳴くと心結の肩からおりた。

そして扉があると思われる方向へ駆け出して行った。


どんどん足音と声が近づいてくる……。


(誰かが入ってきたらどうしよう……

確実に味方じゃないよね……)


三人は息を殺して棚の下に隠れていた。


『キューキュキュ』


すると少ししてモンチラが戻ってきて鳴いた。


「やっぱりそうか……」


心結はがっくりと肩を落とした。

そして真剣な顔で二人に向き合うと言った。


「冷静に聞いて欲しいの。

どうやらここはお城の中みたい。

先程通ったのは鷹の獣人達。

つまりここは敵陣地のど真ん中と思っていい」


ふたりはポカンと目を見開いて、しばらく呆然としていた。

理解が追いつかないのだろう。

しかし心結は続けた、一刻の猶予もないのだ。


「だから誰にも見つからない様にこの部屋を出て……

お家に帰らなければいけません」


ごくりと二人が息を飲む音が聞こえた。


「騒がない、泣かない、何があっても手を離さない。

これを約束できるかな?」


二人は神妙な顔で頷いた。


心結は緊張からか汗を掻くフェリィの手を握った。

フェリィのもう一方の手はキールが握っている。


「よし、行くよ」


心結はそっと扉を開けて外の様子を伺った。

長い廊下が見えた……。

いまのところ人影はみえない。


どうやらこの部屋は突き当りにあるようだった。

右側はすぐに壁だった。


三人は足音を立てない様に、左側へと進んでいった。



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