第9話 ヒトノユメ
煌めく星空の元、交信がなされる。
夢に魘される少女と、夢を見る少年との間に。
確かに繋がれた夢への一歩だった。
「飛び立つ私を見てくれる?」
「飛び立つ君に僕は憧れるよ」
「私は、あなたと会うでしょう」
「僕は、君に会いたい」
「私は宇宙へ帰りたい」
「僕は、君を宇宙へ送りたい」
「私はもう、死んでしまうでしょう」
「僕は死んでしまうのをわかってる」
「どうして宇宙を見上げるの?」
「何故だろう。恋しいんだ」
「どうして、夢を見るの?」
「また、君に会えるから」
朝日が登り始める。
笑顔は翳り、微笑みは嫉妬を写して。
それは二人の別離を示していた。
「なんで僕に話しかけたの?」
「あなたが死んでしまいそうだったから」
「どうしてそんな辛そうな顔をしているの?」
「眠れないの」
「眠りたくないの?」
「いいえ、夢に魘されるから。管だらけの体と、外に出れないこの容れ物が」
「じゃあ、夢を叶えよう」
「いつか夢に殺されてしまうわ」
「いつか僕は死んでしまうから」
「宇宙へ帰らなければいけないの」
「宇宙に浮かぶ方舟を僕は見てみたい」
「重さに逆らえる自由を」
「僕という傷跡を、僕が生きた証を世界に、君に、刻みたい」
「あなたに、夢の外で会いたいわ」
「きっと会えるよ。夢の果てで」
「私は──宇宙へ帰る為だけに作られたのだから」
「───僕はもう、役立たずだけは嫌なんだ」
【とある少年の夢】