表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恵まれなかった物語たちへ  作者: たまマヨ
5/15

第5話 恋は突然に

砂漠にポツンと聳え立つ塔の、悠久の螺旋階段を登ると、恋ができない魔女がいます。

魔女は恋の魔法を代々継承してきましたが、意地悪な別の魔女によって恋が出来ない呪いを受けてしまったのです。

魔女は若く才能に溢れていて、きっと妬むものも多かったでしょう。

魔女は恋する年齢で肉体が止まったまま俗世と関わりを断ち、静かに暮らしています。

その様子はどうせ恋など出来ないのだからと諦めているようで、人々も滅多な事では近づきません。

しかし、新アルデンテ王国の第七王子、カラカムは違いました。


「〈恋の魔女〉殿、お初にお目にかかる。私はこの国〈新アルデンテ王国〉の第七王子カラカム。昔、私は〈無窮の魔女〉と名乗る人物に魔法を教えて貰ったり、不治の病を治してもらった。〈無窮の魔女〉殿にその御礼が言いたいが、居場所に心当たりがない。同じ年代の魔女である〈恋の魔女〉殿ならば居場所の心当たりがあると思う。案内してはくれまいか」


と自ら一人で塔に訪れ、頭を下げました。

更に案内してくれた暁にはあなたの困り事を国を上げて解決して見せると言いました。

恋の魔女の悩み事の内容は民衆には伝わっていませんでしたが、塔に引きこもった原因はあると巷では噂されていたのです。

それに対して魔女は必要ないと切り捨てました。

自分は塔から出る予定は無いし、俗世に関わるつもりもないと。

心の内で、どうせ外に出ても変わらないと。

そういうと王子は頷いて言いました。


「それは失礼した。では、心当たりはないが自分は〈無窮の魔女〉殿を探しに国を出ていく。厚かましいかもしれないが、もし〈無窮の魔女〉殿が再びこの国を訪れ、あなたの元を訪ねてきたら私が探していると伝えて欲しい」


この国の王子だと言うのに昔からとはいえ勝手に国の土地の一つである砂漠に塔を建てた非協力的な魔女に対してこれほどまでに殊勝な態度をとる王子に魔女は少し興味を惹かれました。

元々魔女は何百年も代わり映えのない塔の中で使えもしない恋の魔法に関する記述を読み耽って居たのです。

塔の外に出るならこんな絶好な機会はないと思い直しました。

魔女は言います。


「待ちなさい。あなたは旅をすると言っていましたが一人でするつもりですか?」

「もちろんだ。私が助けられたのに、私が直接お礼を言わなくては〈無窮の魔女〉殿に失礼だからな」

「国を出ていくと言っていましたが戦えるのですか?」

「…いや」

「従者は?」

「私の目的のために、兵が命を投げ出すことは無い。兵は国を守るためにいるのだからな」

「従者すらいない……?そんなのは無茶です。この砂漠だって夜になれば大きな蚯蚓が出るんですよ。…ここに訪ねてきておいて道半ばで死なれても私の寝覚めが悪いので、とりあえず私も旅に同行します」

「おお。感謝する」

「ですが、行くからには私の目的も叶えます。ですので、〈無窮の魔女〉の情報と私の目的を叶えるために各地の魔女を訪ねてみようと思います」

「それは願ってもない話だ。ぜひ、協力して欲しい」

「ですが、道は長く険しいですよ。それでもいいんですか。私の用事も加えるので、2~3年では終わらない時間になりますよ」

「私の願いが叶い、あなたの願いも叶う。これ以上望むことがあるだろうか。私はそもそも無理を言って来た身。あなたの協力が得られ、〈無窮の魔女〉殿に御礼が言えるというのなら五年や十年の遠回りなど痛くもない。それに、私一人ではなくあなたのような強く、気高く、美しい人がいるなどまるで夢のようだ」

「そうですか」


そして、魔女は王子と共に旅に出ます。

のろいがまじないに変わるのは、きっと魔女が恋に気がついた時でしょう。




【魔女奇譚 XV 恋の魔女と王子カラカム 第一章第一節】

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ