第2話 もう一度
ザク、ザク、ザク、ザク、ザク。
乾いた音だけがある。
土を掘り起こす音。
広大な大地には僕が作った墓標が突き刺さっている。
傍には掘った後に盛られた土。
それが何十個も隠れんぼをしてる。
もう二度と起き上がらないけれど。
赤くひび割れた大地に、ポツポツと。
寄り添うように、突き放すように。
語り合うように、別れるように。
そんな赤き地平線に僕は一人。
今日、スコップは少し重たいことがわかった。
それにこんなことを長時間やっていたら気が狂いそうなほど辛いことだとも。
狂いたいのに狂えない。
僕に狂うという機能はない。
しかし、それももうすぐでお別れだ。
最後のずた袋を先程掘った穴に埋める。
パッパと土を掛けているうちに一言声も掛けたくなった。
「もう一度、神様がやり直すチャンスをくれたなら、僕はもう一度君を愛してみるよ」
僕の背中はもし、後ろで見る人がいたのなら悲しみを語っていただろうか。
たった独りだ。
この広大な大地に。
「きっと僕が君たちの元に行くには、この頬の血が乾いた時かな」
頬の血潮を拭う。
拭った左手がまだ脂でテラテラとしている。
油を差していない手首の関節がギシギシと音をあげる。
残念ながらそれ以外音を上げるような器官はない。
腰の痛みに呻くことも孤独を恐れる心もない。
【機巧師団新大陸発見伝 最終章 第三節】より