07.再挑戦宣言
しばらくして食事が運ばれてきて、ポリーヌとハオはそれらに一気にがっついた。
「う、うまいっ! ですわっ!」
禍々しい品名と安い価格からは想像もつかない、それらは美味な料理であった。
「でしょ?」
ハオはにっこりとして受け答えした後、再び暗黒麺と格闘し始めた。
「わたくし、下々の方たちが食べる料理は、質より量なのだと少々侮っておりました」
「まあ、そういう店も多いけどね。ここは特別に絶品なんだ」
「いつもごひいきにどうも」
店主が近づいてきてうっそりと暗い声でそう言った。
「マスターも愛想が無いし、店の雰囲気は暗いけど、この味をこの価格でだから時間帯によってはもっと混んでいるんだよ」
と、言っている間に客がちらほらと入り始めた。
二人は食事を終え、苦悶のケーキを食べながら暖かい暗黒茶を飲んでいた。
ポリーヌは再び勇気を振り絞ってハオにたずねてみた。
「と、ところでハオ。あなた、どなたかお付き合いしている方はいらっしゃいますの?」
「んー? 王都に来てから親しく付き合いのある人はまだあまりいないかなあ。ヤルル老師とは今朝知り合って意気投合したけど」
「え、いや。そういうことではなく……」
ハオは苦悶のケーキをほおばりながら、子供っぽい態度で「おいしー」と言っていた。
「ず、ずばりお聞きしますわっ! あなたの好みの女性のタイプはどういう方なのかしらっ?」
「えー? そうだなあ、あんまり考えたことないなあ」
ハオは暗黒茶を一口すすりながら考えていた。
「僕より強い女の人、かなあ?」
「!!!!」
ポリーヌはがくぜんとした。これは、遠回しにフラれてしまったのであろうか? ですわっ! と。
しかし、ポリーヌは心のライフを削られてもなお、すんでのところで食いしばった。
「そ、それではもしですが、あなたより強い女の人が現れたら、好きになってしまったりするかもしれませんの?」
「うん! たぶんね。うちはお母さんもお姉ちゃんも僕より強いから」
「!!!!」
ポリーヌは驚愕した。このハオよりも強い母親と姉というのは、いったいどういう人たちなのだろうかと。
しかし、夢破れたとはいえポリーヌも一度は覇道を目指した女であった。ハオに再び挑戦し、雪辱を果たしたい。そして、その暁にはハオに告白というものをしてみたいっ!
「ハオ、私は今日の戦いに負けましたが、まだ納得は行っていませんっ! 鍛え直してあなたに再挑戦いたしますわっ!」
「え? それならいつでも受けて立つけど……そうだな。冬至祭に行われるという武術大会。そこでもう一度決着をつけよう!」
「望むところですわっ!」
暗黒料理店を出たポリーヌとハオは、店の前で固く握手をして別れた。