密室育ちの十三才 ーコソ泥さん、私を連れ去ってー
青年・ウィリアムは失業者である。
半年ほど前に勤めていた工場をクビになり、家賃が払えずアパートを追い出されてしまい、あげくの果てには空き巣に手を染め、アメリカの各地を転々としていた。
「今日はここにするか。すげえ豪邸だな。へっ、どうせ毎日いいもの喰ってんだろうな。俺には一生かかっても手にできねえもんだよ。少しぐらい恵んでくれてもばちは当たらないよなぁ、へへへ……」
ウィリアムは幼い頃からあまり裕福な環境では生きてこなかった。おまけに失業したこともあいまって、終始金持ちへの妬みを抱きながら過ごしていた。踏んだり蹴ったりの毎日に、もう真っ当な生き方など諦めてしまっていたのだ。
街の中でも一際大きく、広い庭園に囲まれた屋敷に目を付けた。侵入し一通り内部の状態を見て回ったところ、入念にいくつもの鍵がかかった地下室にたどり着いた。
ウィリアムは以前の仕事の過程で身につけたピッキングを駆使して、かかってる鍵を片っ端から外していく。
「これだけ鍵をかけてるんだ。きっと貴重品が眠って――」
扉を開けるとウィリアムは言葉を失う。
「――え?」
地下室の中にいたのは、なんと――――――――中学生ぐらいの一人の少女だった!
「あなた、だれ?」
「……や…………やべっ」
なんでこんなところに女の子が? 疑問が生まれたが、それどころではない。顔を見られてしまった、逃げなければ……! ウィリアムは彼女に背を向ける。
「ちょっと待って! ……あの、……その、私を助けて!」
「はあ?」
少女の名はアンネ、十三才。
この屋敷の主であるアンネの両親は、娘を愛するあまり、あろうことか生まれてから十三年間、地下にある密室に閉じ込めて、誰の目にも触れられぬように育てていたのだ。
両親は大切にしていたつもりだったのだろうが、歪んだ愛情の下に支配を受けていたアンネはこれまで、外の世界に対する憧れを抱いていた。
「お願い、あなた――私を連れていって!」
「……ええ? めんどくせぇ…………」
ウィリアムに無理矢理ついてくる形で、アンネは屋敷を飛び出した。
不本意ながらも誘拐犯になってしまったウィリアムだったが、目に映る世界の全てに胸を躍らすアンネとの逃亡生活を経て、少しずつ彼女との絆が芽生え、人生に希望を見いだしていく――。
海外ドラマっぽい雰囲気を意識して書いた作品。
幼い頃から隔離されて育った
書き終えてから
「某ドキュメンタリー系バラエティ番組に
出てきそうだなあ」と思いましたw