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09話.[諦めたくはない]

「えっ、由愛先輩と付き合い始めた!?」

「うん、実はこの前から」


 桜ちゃんはそれはもう大盛りあがりだった。

 で、それなら姉と嘉代はフリーだよねともっとハイテンションになった。


「楓ちゃんっ、甘いものを食べに行こー!」

「あ、残念ながらお金がないから」

「楓ちゃ――楓、ここに3000円があるから持ってきな」

「で、できないよ、それは桜ちゃんのお金でしょ」


 とりあえず盛り上がられすぎても困るから由愛を連れて外に出た。

 相変わらず寒いけどいまとなってはそれで良かったと思える。

 冬でなければ嘉代が心配してくれていなかったし、そこから姉や由愛と仲良くできていなかったから。


「よし、それなら嘉代にまたパフェを作ってもらおうっ」

「い、いや、そんな煽りみたいなことはできないよ」


 それにたまにはふたりきりで過ごすのも悪くない。

 部屋でくらいでしか至近距離で見るということも構わないし、なんならどこかに行かなくてもいいんだけど。


「アイスを買って家に帰ろ」

「あ、うん、それでいいや」


 数百円のアイスを買うぐらいなら私の所持金でもできる。

 お店で食べるより安価で、そして落ち着く場所で食べられるのは大きい。


「ア・イ・スー!」

「ご飯前に食べてご飯食べられないとか言ったら追い出すわよ」

「……しょ、食後にしておこうか!」

「だ、だね!」


 今日は姉の手伝いをすることにする。

 もっとしっかり覚えて支えられるようになりたい。


「随分とできるようになったわね」

「お姉ちゃんというお手本が近くにいるから!」


 それになによりやってきた歴は私の方が長い。

 完全に我流ではあったから色々と荒が目立っていたけどそこそこできていた。

 でも、ここも地頭の差なのか、吸収効率が違いすぎるというかなんというか。

 とにかく、姉の意思はともかくとして姉はお手本みたいに存在してくれているから好きだ。

 駄目なことはきちんと駄目と言ってくれるところも嬉しい。


「お母さんも楽ができると言っていたわ」

「それはお姉ちゃんがいてくれるからだよ」

「いえ、あなたが元気でいてくれるのも大きいのよ」


 最近は普通の親子みたいに会話をできているから良かった。

 ご飯が出来たらちゃんと食べていつも通り入浴を済ませてしまう。


「アイスー!」

「落ち着いて、アイスは逃げないよ」


 やっぱり甘いものを食べているときの彼女が1番好きだ。

 私はそのまま正面から突撃するように抱きしめて勝手に満たされておく。


「あ、アイスがぁ……」

「大丈夫」

「……というかさ、本当に私で良かったの?」

「また嘉代に怒られるよ? 私は……笑顔が可愛いなって思ってさ」

「え……は、恥ずかしいなあ、それで笑顔を見せてって言ったんだ……」


 それにやっぱり彼女のためにちゃんと動けたから。

 嘉代には支えてもらってばかりだった、いてくれればいいって言ってくれたけどちょっとね。

 まあ間違いなく彼女のために動けていると調子に乗っていたかもしれないし、解決も全然できていないかもしれないけど少しぐらいはストレスに襲われる生活からは遠ざけられたわけだから。


「好きだよ」

「……私も好き、だって恐れずに動いてくれたし」

「勢いだけで連れて行くと両親が犯罪者になってしまいますから」

「『由愛のためだからね』とでも言ってくれてもいいでしょー!」

「由愛のためだよ、だってお母さんといるの苦手だったんでしょ?」


 そうでもなければあんな馬鹿なことしていないよ、叩かれ損になっちゃうじゃん。


「ありがとっ」

「うん、これからも困ったらちゃんと言ってね」


 姉と違ってできることは少ないけど、最初から諦めたくはない。

 相手のためにって努力することを忘れたくはない、そしていまならそれができる気がした。

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