第8話 強敵現る
ラシルは朝目覚めてから、昨日決めていた通りに、豆蛙の血を確保しに行こうと思う。
だがその前に、先日作って出来た、皿やコップの具合を確かめる。軽く叩いてみたり、水など入れてみたがひび割れもなく特に問題無いようだったので、今回は粘土で豆蛙の血の保存用に壺を何個か作って置いた。その後は、水の精霊と負の精霊を呼び出した。昨日寝る前にちょっと考えてた事を試してみようと思ったのだ。
水の精霊から水を出して貰う時に負の精霊で水のエネルギーを奪ってみたのだ。そうすると水は氷へ変化したのだった。
出来た氷を保存用の箱に入っている水と入れ替えてみた。これにより箱内の温度が急激に下がったのでまた保存性能が上がったはずだ。
この保存用の箱は冷蔵庫と名付けてみた。
狩ってきた肉や野菜も入れたいし、今後はもっと大きい蔵みたいな倉庫を作って貯蓄して行きたいと思う。
実験も終わったのでまた豆蛙が居た場所の近くへと向かって歩き始めた。
歩いてる途中でアメーバーみたいなクリーチャーで名前はヘドロスライムで、5体程の群れを見つけて倒した。ヘドロスライムは剣で突き刺しても効いた素振りは見せず、火の精霊の力を借りて、火を放ったがヘドロに阻まれて燃え無かった。そのため、ヘドロをまずどうにかしようと水の精霊と風の精霊を召喚して風の力で水をヘドロスライムに噴射してヘドロを綺麗にしたところを雷の精霊により放たれた電撃で一掃した。倒した、ヘドロスライムは持ち帰る事はせずにそのまま火で浄火させて処分した。
「出来るだけ倒したクリーチャーは食べたいけど流石に臭いがね、クリーチャー避けにはなるかもしれないけど」
ヘドロスライムの臭いは酷く、食欲を阻害するような臭いでこれを持ち運ぶとなると一方的にこちらの位置がクリーチャーなどに感づかれてしまう。そしてこの臭いを嗅いだ普通のクリーチャーなら近づいて来ようとはしないだろう。ラシルもこの臭いを感じた時の嫌悪感は酷かったが原因は何か探らないと家の近くでこの臭いがしたら堪ったものではないと思いその原因を探してヘドロスライムの群れを見つけたのだ。
ヘドロスライムを倒してから目的地に向かって歩くとほどなくして前回、豆蛙が居た場所へと到着した。
目的地に到着してからは、周囲の索敵を行い目的のクリーチャーが北側(向かってきた方向を東側とした)に多く居たので倒しながら北上した。
北上していくと、池に突き当たったので池の中に魚が居ないか眺めて見る。
池の水は濁っていて中が全然見ることが出来なくて魚は諦めようとした時、突然、池の水から口の大きな魚がラシル目掛けて襲ってきた。
寸前で気づいたラシルはバックステップでギリギリ避ける事が出来、口の大きな魚はそのまま池の中に潜っていってしまった。
ちょうど池から離れようとしていたこともあり、重心が後ろに向いていたので、とっさに後ろに避ける事が出来たので間一髪助かった。
しばらく池に近づき過ぎない程度に先程の口の大きな魚がもう一度出てこないか待っていたが出てくる様子も無いので、試しに雷の精霊を召喚して池に電気を放ってみた。
すると、口の大きな魚が驚き水中を飛び跳ねて、その後にラシルを確認した魚は陸へと登って来た。
どうやらこの魚もこちらをもう一度襲おうと近くで鳴りを潜めて待っていたようだ。
「閲覧」を使用して見ると、どうやらこの魚は泥魚と言うクリーチャーらしく手足も生えていた。
さっそくいつもの髭からの青銅剣変化で突き刺して殺そうとしたが、泥魚の鱗を舐めるようにして滑ってしまい突き刺さる事が出来なかった。
変化程度の力ではこのクリーチャーを突き刺す事が出来ないようなので自分の力で青銅剣を使わなければ倒せそうもない。
まずは相手の動きをしっかりと観察して対策を立てる事にした。
泥魚は手足がそれ程長くはないようで陸に上がっても大した動きは出来ないようで、ゆっくりと動いてこちらに向かって来た。
知力もそれ程高くないのは「閲覧」で確認済みで、獲物を見つけたから本能のまま狩ろうとこちらに近付いて来ているのだろう。
わざわざ自分の理を捨ててまで地上で戦ってくれるのはありがたい。まずは泥魚を覆っているあの滑る泥をどうにかしようと、ラシルは風の精霊と火の精霊を召喚して泥魚に向かって風の力で火を放った。
先程のヘドロスライムとは違い、放った火は泥魚を覆っている泥を乾いた土へと変化させたので、もう一度、風の精霊を召喚して魔力をいっぱいに込めて風を泥魚に向かって吹き荒らした。泥魚を覆っていた土は風により飛散していき、泥魚本来の皮膚が見えてきた。泥魚の皮膚はヌメっとした分泌液のような物に覆われていて、あれが剣を滑らせる原因になり、土などを泥に変えて自分の防御力を上げるために纏わせていたのだろう。
さて泥を取ってもあれじゃあまだ剣が滑りそうだなぁと思い、先程、水の中に居た時に効果のあった、雷の精霊を召喚して電撃を放ってみると、分泌液は電気を良く通すようで泥魚は電撃により皮膚は焼け爛れて、その場で痙攣していた。電撃により覆っていた分泌液も蒸発してしまい、皮膚が焼け爛れて新しい分泌液も出せない為か泥魚の皮膚はだいぶ刃が通りやすそうに見えた。今だとラシルは思い勇の精霊を召喚して気持ちと身体にパフを掛け、青銅剣を普段よりも長くしありったけの力を込めて泥魚の首と思われる辺り目掛けて斬り下ろした。
すると、泥や分泌液の守りの無くなった皮膚は柔らかなっているようで、思ったよりも簡単に首を切断する事が出来た。
泥魚は今まで倒したクリーチャーよりもだいぶ格上だったらしく大量の小精霊が溢れ出してきた。泥魚からは同種の小精霊を5匹以上出てくる事もあったが精霊として出てくる事は無かったので、精霊になるにはラシルの様に吸収するなどが必要なんだと思う。全ての小精霊を吸収した後に、倒した泥魚をどうしようか悩んだが持って帰るには大き過ぎるし、ここで食べられるだけ食べてしまおうと昼食にする事にした。
泥魚を単純に火で焼いた後に豆蛙の血を垂らして食べたのだが、味は今まで食べた中でも格別だった。
ぷりっとした柔らかい身で口の中に入った瞬間トロけてしまい口いっぱいに広がり、ラシルの食欲をさらに掻き立てて次から次へと口に運び込んだ。
泥魚はとても大きかったがこれなら一気に全部食べれそうだと思いながら食べていると泥魚の焼けた匂いとは違った、異臭が漂ってきた。どこから感じるのだろうと辺りを見渡していると突然、空から火の石がラシル目掛けて飛んできた。
火の石はラシルに直撃はしなかったが、まだ食べ残していた泥魚へと直撃し、泥魚の身は散り散りとなってしまった。誰がこんな事をと思い火の石が飛んできた方向を見てみると、ここに来た時に倒したヘドロスライムがもっと巨大化していて、身体全身が燃えているような物体がこちらに近づいて来ていた。
すぐに「閲覧」を使用してみると
名前:なし
レベル:12
種族:マグマゲルム
種族特性:可燃
スキル:火の石
HP:123(5)
MP:65(7)
腕力:52(11)
防御:54(9)
知力:18(3)
敏捷:15(1)
器用:23(4)
技術:27(2)
魔力:34(6)
精神:41(5)
勇気:36(7)
再生:56(10)
五感:21(8)
想像以上のステータスを見てラシルは驚いた。このステータス相手だとラシルもただでは済まないだろう。この場から逃げるか戦うか迷うところだがどうやら敵はやる気マンマンのようでラシルを睨みつける。ラシルも少し考えて、
「あんな奴が城壁の中に居たんじゃ安心して寝ることも出来ないしな倒してやる!」
と意気込み、逃げずにあの魔物を倒すことにした。