第7話 左に向かって
ラシルは昼食を済ませた後は、食材を保存用の木箱の中に入れて置く。木箱には粘土を使ってコーティングしてあるのでさらに保冷効果が期待できると思っている。
家から出てからは、左方向へと向かって歩いていく。こちらも右方向に行った時と同じ様な獣道が出来て居るのでそこを通って城壁があるだろう場所を目指した。
こちらの方向を歩いていると瓦礫の山などが多く見られ、昔は家などが並んでいたのかもしれないが今は見る影も無く、それがなんの瓦礫だったのかも今ではわからない、ただ繋ぎ合わせたら家みたいになりそうだなぁと感じて家だったのかもと思った。
瓦礫エリアを通り過ぎると草原のようなエリアとなっていて、そこには鳥が走っているのが見えた。
鳥に気づかれないように見ていると、鳥は2羽居て、1羽はどっかに行ってしまい、もう1羽はその場所でずっと居た。
「閲覧」で見てみると鳥はヒクイアリーと言うクリーチャーで風の小精霊により進化した個体だと思われる。
とりあえず1羽しか居ない今の内に、髭からの青銅の剣のコンボで速殺して、ヒクイアリーの元に近づくとどうやらヒクイアリーは卵を守っていたようで、ヒクイアリーの死体の下には卵が4つ程あった。
卵を確保してから、近場で身を潜めて、もう1羽が帰ってくるのを待ち、しっかりと倒して食材を確保してからまた歩を進める。
しばらく歩いているとようやく城壁が見え、たどり着いた。城壁に近づくまでも、何度か鳥系のクリーチャーを確認したが、鳥のくせにどれも飛ぶことが出来ずに陸を走っていた。
ただ、走ると言っても結構なスピードが出ていて、あのスピードのまま襲い掛かられたりしたら、結構な傷を負って重症になるか、最悪死ぬ事も考えられるだろう。
正面から戦うのは得策では無いのでクリーチャーが単体で居る時だけ倒す事にして、そのまま自宅へと戻る事にした。
どうやら日も傾き出したので、夜も近そうなので足早に帰っている。帰りながらも辺りの警戒をしていたが鳥のクリーチャーはどうやら夜は活動しないようで、大人しくしている個体が多く見られた。
帰宅までは残り半分ぐらいの地点まで、たどり着いたところで、周囲には暗闇が広がり完全に夜になってしまった。
夜空に光っている星々によって多少の造形は見えるが道を転ばずに歩くのが精一杯となってしまった。
それにより歩行スピードがどうしても落ちてしまい、帰宅時間が大幅に遅れてしまうので、光の精霊を召喚した。光の精霊を召喚する事により、周囲の状況が良く見えるようになったが、クリーチャーからもこちらを察知しやすくなってしまうので、ここからはより一層警戒を強めた。
結果として、ラシルは無事に帰宅する事が出来た。
夜の時には、負の小精霊や闇の小精霊、月の小精霊が
多くいたので結構ウハウハだった。
特に、負の小精霊を多く吸収する事が出来たのは良かった。MPが増えればそれだけ数多くの精霊を召喚する事が出来るので、夜の探索も今後は必要になってくるだろう。
だが、夜の探索は現時点ではまだ難しい部分もあった。と言うのも、夜のクリーチャーでは、透明なクリーチャーが多数居たのだ。特に多かったのがゴースト系のクリーチャーで、ゴーストバットだ。このクリーチャーは蝙蝠がゴースト化したクリーチャーで、群れになって襲い掛かって来るうえに、通常攻撃が一切効かない。
剣で切ろうとしてもそのまま透き通ってしまってなんのダメージも与えられなかった。なんとか火の精霊で撃退する事は出来たが倒すまでは至らなかった。
夜のクリーチャーを倒す為には、敵を一掃出来るような攻撃手段が必要になってくるだろう。
帰宅してからは、左の方向に行って手に入れた、鳥の解体を済ませる。
解体を済ませた後は、卵と解体して手に入れた鶏肉を使って料理をする事にした。フライパンで卵と鶏肉を炒めた後は豆蛙の血をかけて食べるだけだが、卵は滑らかな味わいで鶏肉は歯応えがあり、2つとも豆蛙の血と合わさるとまろやかなのに癖になる味でとても美味しかった。
ご飯を食べた後は、だいぶ疲れもあり、夜もだいぶ老けていた為、今日はそのまま寝てしまった。
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ラシルは目を覚ました後は、昨日は食材をたくさん手に入れたので今日はまた能力の検証を行う事にする。
小精霊もたくさん吸収したので、精霊に進化した小精霊もたくさん居るはずで、やれる事も増えたかもしれないので楽しみにして、まずは自分の現在のステータスを確認した。
名前:ラシル
レベル:6
種族:幼精人
種族特性:吸収・変化・召喚
スキル:閲覧・髭
HP:46(11)
MP:39(9)
腕力:21(15)
防御:15(9)
知力:14(8)
敏捷:17(11)
器用:15(9)
技術:14(8)
魔力:15(9)
精神:14(8)
勇気:11(5)
再生:12(6)
五感:18(12)
吸収した精霊
木の精霊2
木の小精霊
負の精霊
負の小精霊
火の精霊3
土の精霊
土の小精霊4
光の精霊
光の小精霊3
風の精霊2
風の小精霊
金の精霊
金の小精霊4
雷の精霊
雷の小精霊3
闇の精霊
闇の小精霊4
水の精霊
水の小精霊3
勇の精霊
命の精霊
命の小精霊
月の精霊2
月の小精霊2
吸収した物
岩6 木8 草7 青銅5
今回の探索でだいぶステータスも増えた。クリーチャーは倒したら小精霊5匹以上は確定だしレベルも上がるのでやっぱり強くなるのにも、食べるのにも美味しい、そして今回は、今まで進化しなかった小精霊がそれぞれ、負、雷、闇、水、勇、命の精霊へと進化した。
まずは負の精霊の能力を確認する為に召喚をして、能力を確かめると、どうやらエネルギーのような物を吸収する事が出来るようだった。周囲に漂っているエネルギーのような物を吸収して召喚で使用したMP
が回復したのだ。回復速度は徐々にしかしなかったし、恐らくそれ程の量も回復出来ない感覚はあったが、回復速度も、魔力を込めると早くなるようだし、今後MPの回復手段が有るのは非常に有効だろう。
次に、雷の精霊を召喚して能力を確かめた。雷の精霊は電気を発する事が出来るようで、魔力を込めれば威力も高まるようで最初触った時に、ビリッとして痺れたのが魔力を込めた物に触った時は痺れると言うよりは身体が言う事を聞かずに硬直してしまった。
ラシルは雷の精霊には2度と触る物かと思い、次に闇の精霊を召喚した。闇の精霊は光の精霊とは逆で、辺りを暗闇にする効果があり、これは昨日戦ったゴーストバットみたいな奴らから逃げる時に使用しようと思う。
次は、水の精霊で、水を生成する事が出来た。さっそくラシルは水を口に入れて飲み込むと、水は井戸水よりも遥かに美味くて身体に染み渡っていき、多少のMP回復効果もあるようだ。
井戸水を思い出した事で、そういえば近くにある、畑はどうなったのかと見に行くと、そこには土から芽が生えているのが確認出来た。順調に育っているようで精霊の水でも与えようと畑に水をやって居る時に、ふと、風の精霊も一緒に出して風を吹かせれば楽に水が撒けるんじゃないかと閃いて、やってみると、思い描いた通りやる事が出来た。
さらに前回の検証では雨で出来なかった事も思い出して。家の敷地で試すのは危ないので家の外に出て、火の精霊と風の精霊を召喚して火の精霊に風の精霊を吹きかけた。
すると炎が風によって広範囲に広がって行き火が燃え広がっていく。これはまずいと思って即座に水と風の精霊で消火したが魔力を込めて放てば相当威力も上がって喰らった物は溜まった物では無いだろう。
だが、今起きたように殺傷性はとても高いだろうが、草や木などに引火してしまっては危険だし、食材もダメにしてしまうかもしれないので使う場所は選びそうだ。
他にも精霊を掛け合わせれば様々な効果がありそうだがその検証はまた後日するとして、家に戻り進化した精霊の検証の続きをした。
勇の精霊を召喚すると、少し気持ちが昂揚した状態になり、身体能力が向上した気がし、なんだかやる気も漲って来た気がする。戦闘時に敵と真正面から戦う時に召喚するのが良いだろう。
最後に、命の精霊を召喚した。命の精霊は、HPが回復するようだ。探索の疲れにより、減っていたHPがしっかりと回復している。まだラシルは怪我という怪我をした事がないが、命の精霊を召喚すれば怪我も治ってしまう気がした。
精霊の検証も終わる頃には、外を見るともう夜になっていたので、ご飯を食べ、今日はもう寝る事にした。明日は、豆蛙の血でも集めに行こうと思う。あれは調味料としてとても優秀で、ある程度の在庫は確保しておきたい。