第3話 初めての食事
家に近づくと、庭は荒れ果て、扉に続く石畳みにも破損が多く見られた。だが先程までラシルが居た城跡のような場所と比べるとまだ劣化はそれ程激しく無く感じた。
「誰か居ますかー?」
と試しに扉を叩き声を出してみたが、返事は無く、物音もしなく人の気配は感じられなかったので、恐る恐る扉を開けて、家の中に入って見た。
中に入ると目の前には長い机と椅子が4つ程置いてあり、その奥には台所があり、向かって右側には別の扉があった。
まずはアームラビットを長い机の上に置き、この家が安全かどうかを確認する為に、周囲の探索を行う事にした。台所を見ると調理する為の道具がある様だったのでアームラビットをどうやって調理しようかなどと考えながら、苦しくなって鳴いているお腹を抑えつつ、台所を見て右側にあった扉を警戒しつつ開いた。
扉の向こうには左側に向かう通路があり、その通路を挟んですぐにまた扉があった。まずはその扉を開き、中を見るとベットが2つある部屋だとわかった。
部屋の中をある程度、物色すると大人の男女が着るような服があったが自分とサイズが合わないため、そのままにしておき、部屋の中が安全である事を確認して扉を閉め、通路の先に向かう。
通路の先には前方と右側に扉が有り、まずは右側の扉から開けたところ、その部屋にもベットが2つ置いてあったが先程よりも小さかった為、子供部屋だろうと想像した。
子供部屋ならもしかしてと思い、タンスを開けるとそこにはなんと子供服が入っていた。子供服を手に取るとラシルはすぐに服を着用した。生まれてからずっと裸の状態で来ていた為、多少の恥ずかしさと肌寒さがあったので着る物が有ったのは助かった。子供服は着てみるとシャツもズボンも今のラシルよりも少し大きめだったのでラシルよりも成長している子供が住んで居たのかなと想像しつつ、シャツの袖とズボンの裾を捲りラシルの身体に合わせた。
子供部屋が安全かどうかを確認し終えてから、次に通路の先にあった扉を確認すると、そこは物置きのような部屋で、壺やら箱やらが置いてあった。
壺の中身を確認すると、白い砂のような物が入っていて、舐めて見るとしょっぱさを感じたので、これが塩かと認識した。
箱の中を見てみると黒い焦げた木のような物が大量に入っていたので恐らくこれが炭だと考え、アームラビットを生で食べずに済みそうだと焼けた肉を想像したら、お腹の音が鳴り止まなくなり、家の安全も確認出来たので台所へと向かった。
台所に行くとフライパンと包丁が棚に入ってるのを発見して、他の棚には火打ち石が置いてあり、それを使用して炭に火をつけようとしたが、使い慣れてないせいでなかなか着つける事が出来なく、悪戦苦闘しながらも試行錯誤を行ったが全くと言っていい程、火がつく様子が無かった。
そこでラシルは火の精霊と名が付くぐらいだから火ぐらい起こせるだろうと、火の精霊を召喚して見る事にした。
「召喚」
と唱えると最初に見た時の光の球では無く、火の球が現れた。
ラシルは炭を手に持ち火の球に近付けて火を着けようとしたが予想以上に熱さを感じた為、火の球を動かせないか念じて見ると自分が念じた方へと動かせる事が出来たので、火の球を炭に近づけておいた。
火の球が近づいた炭を見て見ると、ばちばちと音を立てて火が灯りそうだったのでそのままそこに置いておき、次に先程机に置いたアームラビットの解体を始める。
といっても解体などは、当然した事が無く手探りで行うしか無く、包丁を使用して手探りで内臓らしき物を取り出してから、ある程度肉を小分けにする。
肉の解体が終わり、炭を見てみると火が着いていたので火の精霊を元に戻し、フライパンの上に肉を置いてついに肉を焼いてみる。
すると肉の香ばしい匂いがあたりを支配してまたお腹が鳴り出した。
見た目が充分に焼けた事を確認して、ラシルは焼いた肉に先程発見した塩を肉にまぶしそれを食べてみた。
「美味い!!」
生まれて初めて食べた料理である、アームラビットの肉はとても美味しく、塩が程よいアクセントを醸し出していた。
空腹だったのもあるが、ラシルはアームラビットを見つけたらまたすぐに狩ろうと心の中で誓った。
結果として解体した肉は全てひとしきり調理をして食べてしまった。
満腹になったラシルは眠たくなってきたので子供部屋へと向かい、ベッドで眠るのだった。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
目を覚ましてラシルは、まずは自分の状態を確認するために閲覧を使用した。
名前:ラシル
レベル:2
種族:幼精人
種族特性:吸収・変化・召喚
スキル:閲覧・髭
HP:16(1)
MP:10
腕力:7(5)
防御:3(1)
知力:3(2)
敏捷:4(2)
器用:2
技術:2
魔力:2
精神:2
勇気:2
再生:2
五感:4(2)
吸収した物(火の精霊・土の小精霊・光の小精霊2・風の小精霊2・月の小精霊2・岩2)
アームラビットを倒した時に現れた黄色の光の球は月の小精霊だったらしく、月の小精霊は五感のステータスを上げ、火の小精霊は5になった後に火の精霊になったようだった。
他の精霊も召喚したが、それぞれが光の球が出てくるだけで、火の球になったのは精霊になったからだと考察する。
精霊を集めるたびにステータスが上がるようだし、召喚や変化は集める数により能力が上がるようなので今後は積極的に集めようと思う。