第1話 一からの始まり
かつてこの世界の名である『ガルズヘイム』は、精霊王が治めていた。精霊王がその力を失い、崩御してから約2000年程の時が経った。
舞台であるこの国は、精霊王が住んでいた時には『エレスプタル』と言う名前で呼ばれていた。精霊王が居なくなってからは、仕えていた者達も精霊王が崩御した事により徐々に散り散りとなり、2000年も経った今では、誰も住んで居なかった。
そんな人の暮らして居ない国だが、無色透明で無臭のガスのような状態でずっと存在している者が居た。それはある日、突然に自我が目覚めたのだった。
自我が目覚めた事により、自然と動きやすい形状へとガス体が変化をした事により、徐々に人型に形成された。変化が終わると、見た目は人間で言う6歳ぐらいで髪はシルバーの短髪、たれ目の男子だった。
自我が目覚めたとはいえ、生まれたばかりのような状態のそれには、何もかもがわからなかった。
自分が何者なのか、ここはどこなのか、これから何をすれば良いのか。
まずは辺りを見回してみると、光る球が漂っているのが見えた、光る球は、白かったり、赤かったり、緑だったりと様々な色をしている。
生まれたばかりの為、初めて見る物には興味が湧いてしまい、そのうちの1つに手をかざしてみてた。光る球は手から自分の身体に吸い込まれて取り込まれた。
他の光る球も同様にしたが、それらは全て自分の身体に取り込まれていくのであった。
しばらく辺りをうろついては何か解らない物を手に取っては戻してという行動を繰り返していると
「グゥ〜ウ〜」
と言う音が聞こえてきた。それが、自分の中のどこからか聞こえてきたのと、自分の身体の、真ん中辺りが少し変な感じがした。
キューッと苦しくなるような感覚がして、このままこの場所にいても何も分からないままだと思い違う場所へと移動することにした。
しばらく歩いていると、扉があったがそれが自分には何を意味するものかわからずにとりあえず他の壁とは違ったので興味から手探りに扉に手を触れると
「ガシャーン!」
「ガラガラガラン」
と音を立てて崩れ去っていった。
長い時が経った事により、扉は脆く崩れさってしまった。
扉の向こう側を覗いてみると、何か模様の様な物が床に描かれていたが、それが何かも解る訳も無いが、興味が模様を調べようと上に立ったところ、突然模様が光り出し、自分を包みこんだと思ったら、風景が変わり、今居た部屋とは違う場所へと移動していた。
辺りをまた見回して見ると、1つだけ箱が置かれていてそれに近づくとその箱も光り出し自動的に開いた。
中を覗いて見ると、虹色のオーブがありそれに触れると意識を失ってしまった。
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どのぐらい意識を失って居たのだろうか。だか意識を取り戻した時に、周りにある物が何なのかが解るようになっていた。
「これは壁」
「これは床にさっきの箱は宝箱」
驚く事に先程までは理解出来なかった物の名前や用途など解るようになり、また言語を発する事まで出来る様になっていたのだった。
だがそれにより自覚してしまった。
「めちゃくちゃお腹減ったなぁ〜」
まずは何かを直ぐにでも口にしたかったが辺りを見回しても何も無い。
それもそのはず、ここは閉鎖された空間で辺り一面壁しか無く有るのは先程開けた知識のオーブが入っていた宝箱のみだった。
知識のオーブとは、ある程度の知識と数種類のスキルを保存する事が出来るアーティファクトでそれにより今の現状を知る事が出来たのだった。
知識のオーブには2つのスキルが保存されていた、1つは閲覧、もう1つは…髭。
知識のオーブにより得た知識は、ある程度とはいえ生まれたばかりのような状態だったため、急に得た知識を処理出来ずに気を失ってしまったらしい。まずは自分の状態を確認して見ることにし、1つ目のスキルを唱えてみる。
「閲覧」
名前:ラシル
レベル:1
種族:幼精人
種族特性:吸収・変化・召喚
スキル:閲覧・髭
HP:10
MP:5
腕力:4(3)
防御:1
知力:2(1)
敏捷:3(2)
器用:1
技術:1
魔力:1
精神:1
勇気:1
再生:1
五感:1
吸収した物(火の小精霊3・光の小精霊・風の小精霊2)
どうやら閲覧は、自身のステータスを確認出来るようだ。
自分の名前はラシルって言うのか、誰が付けたんだろ?種族は良くわかんないし、けど種族特性はなんとなく使い方が分かった。本能みたいなものかな?それと、さっきの光る球が小精霊だったようで、触れた数も赤が3つと白が1つで緑が2つだったのでそれぞれが火、光、風の小精霊だと思われた。知らず知らずのうちに吸収してしまったみたいだけど可哀想だったかな?生きて居たら申し訳ないとも思ったが、吸収した精霊の数だけステータスが増えてるようだし、火は腕力、光は知力、風は敏捷ってところか。
この数字が増えるとどのぐらい変わるかは解らないし項目の効果も全然解らないけど、まぁ多くて困ることはないだろうし、…見つけたら即吸収で良いかな!
さてと次は…髭、とりあえず唱えてみるか。
「髭」
するとラシルの顎から髭が生えてきた。生えた髭を手で触ってモジモジしてみる。うんなんか落ち着くなぁ…それだけ?これも自分にしか使えないのかなぁ?自分以外にも使えたら…なんかあるかなぁ…。
とりあえずこれからどうしようかな…
お腹空いたなぁ…