09
※急に登場人物が増えます。
「アディリナ姫殿下がご到着でございます。」
扉の前に立っている2人の衛兵にリチャードは声をかけ、扉を開けるよう促した。
衛兵は、アディリナの姿を見て一瞬動きを止めたが、すぐに我にかえり、重そうな扉を開けた。
「アディリナ姫殿下がご到着でございます。」
扉の前に立っている2人の衛兵にリチャードは声をかけ、扉を開けるよう促した。
衛兵は、アディリナの姿を見て一瞬動きを止めたが、すぐに我にかえり、重そうな扉を開けた。
扉を開けると大きな広間があり、中央に豪華な卓と煌びやかな椅子があった。
少しの空席はあるが、既に王と王妃以外席に付いているのが見える。
そして、ドアが空いた瞬間、複数の目がアディリナを捉えた。
給仕係が、少し戸惑いながらもアディリナを卓の席へと案内しようとするが、アディリナは入口で足を止めてしまった。
―不安、戸惑い、恐怖―
そんな感情に身体全身が支配された様だった。
「アディリナ様」
後ろに控えていたリチャードが優しく名前を呼び、落ち着かせるように肩に手を置いた。
そうして、穏やかに微笑む。
「…ごめんなさい。少し驚いてしまっただけです。」
給仕係は、再び足を動かしたアディリナに安堵した様に席へと案内した。
席へ着き、卓を見渡す。
1番奥にある装飾が豪華な椅子が王の席である。
そこから王に近い順に、身分や王位継承権が高い順に座っていく。
王に最も近い席が、王妃の席だろう。
その向かいに位置する位置に座っているのが、第二妃である。
王妃の隣に座っているのが、王妃の子で王位継承権第一位のセドリック・ル・イヴァノフ、その向かいに座っているのが、第二妃の子、第二王子のカール・ル・イヴァノフ。
セドリックの隣の空席が、今は亡き第三妃の席で、その向かいは第三妃の子の第三王子ロドリク・ル・イヴァノフの席だが、現在隣国へ留学中のため、空席となっている。
第三妃の隣の席は、王妃の子である第四王子のヨハン・ル・イヴァノフ。
そして、その向かいには第四妃テレーゼ・ル・イヴァノフ、ヨハンの隣には第五妃の子の第五王女プリシラ・ル・イヴァノフの席だ。
第五王女の向かいは、第五妃であるフェリシナの席だが、そこは空席となっている。
アディリナは、第五王女の隣へと案内された。
アディリナの向かいの席は第六妃ナタリナ・ル・イヴァノフ。
隣には双子の第七王子ソフィアン・ル・イヴァノフ、向かいに第八王女レベッカ・ル・イヴァノフの席である。
最後に卓の一番端に最も幼い第九王子クラウス・ル・イヴァノフが座っていた。
双子の第七王子と第八王女、そして第九王子は、第六妃の子である。
席に腰掛けてから多くの視線を感じるがアディリナに声をかける者はいなかった。
アディリナも自身から、初めて会う家族に話しかけられるほど心に余裕はなかった。
席につき、顔に笑みを浮かべる事で精一杯だったのだ。
「王妃殿下のご到着でございます。」
衛兵の声と共に、先程アディリナが入ってきたドアが再び開いた。
王妃のマリアンヌ・ル・イヴァノフである。
美しい赤髪を靡かせ、切長の瞳が意志の強さを感じさせる。
今日の食事会にアディリナが参加するのを聞いていたのだろう、アディリナの席の近くに立ち止まり、マリアンヌは声をかけた。
「アディリナ、呪いが解けたと聞きました。体調はいかが?」
言葉自体はアディリナを気遣う内容であったが、アディリナはマリアンヌが自身の存在を疎ましく思っている事をその短い言葉だけで感じた。
「お気遣いいただき、ありがとうございます。身体の方ももう問題ありません、マリアンヌ様。」
そう答えて、ドレスをつまみカーテシーをする。
「…そう。それは何よりだわ。」
マリアンヌはそれ以上は何も言わずに、自席へと向かった。
後はこの国最大の力を持つ、国王の到着を待つのみである。
マリアンヌから、幾分か遅れて、再びドアが開かれた。
「国王陛下のご到着でございます。」
―開かれたドアの先には11年ぶりに会う父がいた―