83
「お父様っ!」
そう部屋に響いたその声の主は、唯一この世でイスマエルを止めることができる人間だった。
入り口にはイスマエルが唯一愛情を注ぐ娘であるアディリナとその身体を支える3番目の兄ロドリクと、4番目の兄ヨハの存在が見える。
そして、その後ろにはナタリナの実の子供たち、双子のソフィアンとレベッカ、そして末の王子であるクラウスだった。
「アディリナ!」
娘の姿が見えたイスマエルは玉座から立ち上がり、こちらに向かうアディリナの元へと駆け寄る。
「はい。ご心配をおかけしてしまい申し訳ありません…。ロドリクお兄様がお持ちになってくださったサンチェス国の薬が効き、もう大丈夫です」
その様子にイスマエルは安堵の息をつく。
「そうか…。どこか苦しいところや痛むところはないか?」
イスマエルがアディリナを伺うように尋ねるその言葉にアディリナは頷いた。
「…父上」
その言葉に、イスマエルはアディリナに向けていた視線とはまったく別の感情を抜いた視線を向ける。
そんな視線を気にもせず、声をかけたロドリクは言葉を続ける。
「父上。アディリナも無事だったのです。毒を仕込んだのをナタリナ妃だと決め、処罰するにはいささか早すぎるのではないかと」
その言葉にイスマエルはロドリクをぎろりと睨みつける。
しかし、そのロドリクの言葉の後にアディリナの言葉が続く。
「お父様、お願いです。私は大丈夫ですから!」
「「…お父様!お願いいたします!」」
その声に双子のソフィアンとレベッカの声も続く。
ロドリクの言葉も双子の懇願も、大臣たちと同様にイスマエルにとってはどうでもよかった。
ただ一つ愛する娘の願い、それが唯一イスマエルを動かした。
一つ深く息を吐く
新たに取り入れた酸素がイスマエルの脳内をクリアにした。
傍にいるアディリナの頬に一度手を添えた後、立ち上がり振り向き、言葉を放った。
「ナタリナの処刑は…今は見送る。…しかしナタリナは今後王城への立ち入りを禁ずる」
死こそ免れたが、実質の王家からの追放宣言だった。
その言葉にナタリナは咄嗟に安堵の息をつくべきか、その言葉の重さを噛みしめるべきなのか判断ができなかった。
「「おかあさまっ!!」」
ナタリナを母と慕う双子の大きな声が部屋の中に響き渡り、床に膝をつき呆然とするしかなかったナタリナは双子が飛びつくその衝撃を受け止めるしかなかった。
更新停滞しており、申し訳ないです…
初の兄弟たち全員集合?と思ったのですが、プリシラいなかった…




