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「これか。…これさえあればあの第五王女を死に至らしめることができるのか!」
そう言って濁った紫色の液体が入った小瓶を光に透かす
そして、その小瓶を自身の一番の側近である侍女に手渡した。
それを手渡された侍女は手の震えを抑えきれないまま、それを受け取るしかなかった
「これを使ってアディリナを亡き者にするのだ」
成功した未来しかもはや見えない女はその言葉の叶った先の未来を想い、笑いが込み上げてきた
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久々に帰った城の自室へ戻ったロドリクは思わず息を吐いた。
今はすっかり人の減った宮、それが反って落ち着きをロドリクへと与えた
自身の手配した男は無事あの女の元で、あの薬を渡し終えただろうか
ロドリクが唯一信頼を置く、かつて母の元で仕え、サンチェス国へと渡る自身にも付き従った従者へと目を向ける。
向けられた視線で長く傍で仕えいてた従者はその意図を理解し、微笑んだ。
「問題ありません。先ほど知らせも届きました」
そして、カップへと濃いめに入れた紅茶を注ぐ。
「すべては…ロドリク様のために」
注がれたカップを冷ますことなく、ロドリクは口をつけた。
湧き上がり続ける自身の感情の様に熱いお茶が喉を通っていく感覚
それがアディリナと再会したロドリクの抱える想いを体現しているかのようで
ロドリクはそれを一気に飲み干した。
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美しい、なんて美しいのだ
今も、そして死した11年前から姿の変わらない美しきモノを見つめる
蒼銀の髪、雪のように白い肌
開くこともないその閉じられた瞳
長く飾られるそれはずっとずっと変わらなかった
ガラス越しにその頬の位置へと手を添える
決して開くことのないその瞳を今日も見つめる
冷たい墓土の下に埋められているはずだったフェリシナの遺体は
今、目の前のガラスの中で時を経ても変わることなく存在していた




