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いつもいつも私の前では恐れるように縮こまっている。
戦うことも嫌い、馬で駆けることも嫌い
騎士たる心構えもない。
他の息子たちと比較しても圧倒的に引けを取っている末の息子だった。
どんなに厳しく叱っても、兄たちと競わせても決して変わることはなかった。
普通の貴族だったらそれでも良かったのかもしれない。
しかし、彼は代々続く騎士家系の男としてはあまりに不出来であった。
第六王女であるアディリナ姫が呪いを受けることさえなければ、リチャードは決して騎士になることはなかっただろう。
イヴァノフ王国騎士団長を務めるリチャードの父、デヴィッド・クランストンも苦渋の選択であった。
しかし離宮から出られず、いつ呪いが解呪されるかもわからない。
もしかしたら一生呪いに苦しめられ続ける可能性もあるアディリナ姫の騎士に志願するものはいなかった。
デヴィッドも優れた兄たちを離宮に飼い殺しにすることは躊躇われた。
だからこそ、そこで白羽の矢が立ったのがリチャードである。
デヴィッドにとっても都合が良かった。
自身の息子の中で騎士になれない者を出すこともなくなったのだから。
5年前アディリナ姫の騎士として離宮に移り住んでから、デヴィッドはリチャードと会うことはなかった。
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しかし今、自身の目に映るのは主人を守る立派な1人の騎士であった。
そこにはかつて父に怯え、縮こまった末の息子の面影は消え失せていた。
自身の友であるロイからリチャードの事は聞いていたが、デヴィッドはその目で確かめるまでまったくもってその姿を信じることができなかった。
何がリチャードを変えたのかは分からない。
しかし今のリチャードは他の兄たちと比較しても引けは全くとらないだろう。
それほどリチャードの振る舞いは堂々とした騎士のそれであった
デヴィッドは久しぶりに会う息子に声をかけることすらできなかった。
遠目で立派に育った姿を見るだけで精いっぱいである。
なぜならかつて自分が期待することを諦めた
劣っていると評価したはずの息子にどんな顔をして会えばいいのか分からなかったのだ




