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「国王陛下並びにアディリナ姫殿下のご入場でございます!」
会場中に響き渡るほどの大声にて入場が告げられる。
その声と同時に会場中の視線が扉へと向けられた。
会場の中ほどにある大きな扉から、イスマエルにエスコートされたアディリナが入場してくる。
それに2人の護衛騎士のロイとリチャードが続いて来る。
向けられた多くの視線はいまだ逸らされない。
あの厳格な国王陛下があんなにも気を使いエスコートをする姿など見たことはなかった。
妃たちですら必要がなければエスコート等一切することながないのに。
しかし、それよりもだ。
幼き頃に呪いを受け、一度も公の場に出ること等なかった第六王女。
誰しもがその存在を重要視せず、相手にしてこなかった。
国王に手を引かれる第六王女の美しさたるや。
会場中の男性はおろか、女性すらも釘付けにした。
見つめていた大人たちは気づく。
かつて国王陛下の寵愛を一心に受け、フェリシナ妃の存在に。
アディリナ姫はあの時誰もが夢中になったフェリシナ妃に瓜二つだったのだから
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会場の奥に位置する玉座へとイスマエルが腰掛ける。
アディリナとそして、同じくデビュタントを迎える第五王女のプリシナがその横に立つ。
「今日を持ち、正式に王族の公務へと参加する、第五王女のプリシナと第六王女のアディリナである。皆よろしく頼む。」
イスマエルの紹介の挨拶が終えると、2人はそろってカーテシーを取る。
2人に向かって割れんばかりの拍手が鳴り響く。
その後しばらくすると会場をゆっくりとした店舗の音楽が鳴り出す。
その音楽を合図に参加者はダンスに興じたり、談笑、挨拶回り等様々に動きだす。
王族の座る会場の奥の方の席に腰掛けるアディリナの元には瞬く間に人が集まる。
国王であるイスマエル自らのエスコートの様子を伺い、貴族たちは確信している。
同じくデビュタントを迎える第五王女ではなく、国王陛下は第六王女を選択したのだ。
先ほどの様子を見て王の寵愛を最も受けているのが第六王女であるためそこに付け込もうとする者たち、そしてそれ以外に純粋にアディリナの美しさに惹きつけられた者たちが多数だ。
こういう場は本来であれば母であり妃を通して選別された者のみが交流が叶うのだが、アディリナの場合はフェリシナが亡き今、それもかなわない。
いきなり多くの人間に囲まれたアディリナは戸惑い視線を右往左往し、不安そうに両手をぎゅっと握りしめる。
その時すっとアディリナの前に立つ者がいた。
「皆様、大変恐縮ではございますが、アディリナ姫殿下へのご挨拶の際は一度国王陛下を通してお願いできますでしょうか」
護衛騎士のリチャードである。
普段の穏やかなリチャードとは異なり、凛とした態度でアディリナを守るように立ちはだかる。
リチャードは先ほどのマーサやアディリナ付きの従者たちの言葉が胸にしっかりと刻まれている。
今日この場でアディリナ様を守れるのは自分だけなのだ
リチャードは貴族たちから視線を向けられても一切怯むことなく立ちふさぐ。
そこにいるのは1人の立派な騎士であった
そして、その様子を少し遠くから見つめるのはかつてリチャードに期待することを諦めた父がである。




