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アディリナはようやく自由に行動する許可がでた。
ようやく自室以外の景色を見ることができ、アディリナは清々しい気持ちで息を吸い込む。
「アディリナ様」
少し後ろに控えていたリチャードがアディリナにごく小さな声で呼びかける。
そうして、ちらっと後ろに視線を送る仕草を見せた。
その視線の先をたどると、柱の陰に身を潜めてこちらを見つめる小さき存在。
自身の末の弟のクラウスだ。
本人は隠れているつもりだろうが、時々顔を出してこちらを伺っているため、誰が見てもすぐにばれてしまうだろう。
アディリナは少し前の時を思い出し、くすっと笑う。
そうしてリチャードに目で合図をした。
そして、曲がり角に差し掛かる。
アディリナとリチャードはその角を右に曲がり、すぐにその傍の柱へと身を潜めた。
タタッと、こちらに駆けてくる足音が向かってくる。
視線を向けてきた犯人であるクラウスのはアディリナの隠れる柱を通り過ぎ、キョロキョロと周囲を見渡していた。
そんな様子に、アディリナは後ろからそっと近づく。
そして、クラウスの肩にそっと手を置こうとしたその時だ。
ぱっと振り向いたクラウスはアディリナの腰へと抱きついてきた。
「アディリナねえさまっ!」
体重の軽いクラウスだったため、アディリナもその衝撃に耐えることができた。
思いっきり腰に抱き着いて、クラウスはアディリナに満面の笑みを向ける。
「もう、クラウスったら、ふふっ。」
アディリナはクラウスの嬉しそう笑顔に、同じように微笑み返す。
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あれからクラウスは、毎日のようにアディリナの元へ訪ねてくる。
最初は遠慮がちにドアの前にいたはずなのに、今では自分から無邪気に抱き着いて甘えてまで来るようになった。
今日もアディリナの後をこっそりつけてきたようだ。
「アディリナねえさま、今日はどこに行かれるのですか?」
「今日は天気がいいから、庭園に行こうとしていたのよ」
クラウスの問いに、アディリナは素直に答える。
「ぼくも!ぼくもご一緒しますっ!」
クラウスはかつてアディリナの手を振り払ったとは思えないほど、素直にアディリナに甘えてくる。
アディリナにとっては初めて関わる自身より幼い存在。
姉として慕われるということの嬉しさをアディリナは初めて噛みしめていた。
***
ねえさま、ねえさま、アディリナねえさま!
優しい優しいぼくのねえさま。
おかあさまが優しくなくなっちゃたけど、今はアディリナねえさまがぼくに優しくしてくれる。
おかあさまはいつもアディリナねえさまを悪く言うけど、それってぜったい間違いだよね。
だってぼくを助けてくれて優しくしてくれるアディリナねえさまが間違ってるはずないもん。
ぜったいぜったい、間違ってるのはおかあさまだ




