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その後すぐに、リチャードが人とタオルを抱えて戻ってきた。
泣きじゃくるクラウスの事を他の使用人に任せ、リチャードはタオルで包み込んだアディリナを腕に抱きかかえ宮へと全速力で走る。
扉を開け、いつものように迎えたアディリナ付きの使用人たちは驚愕する。
自身の大切な大切な主人がリチャードの腕の中でびしょ濡れになり、震えていたからだ。
宮に戻ってきたアディリナはすぐに温かい風呂に入れられ、着替えをしたが、その後高熱を出し寝込むことになってしまった。
その知らせはすぐにイスマエルの耳に届けられた。
執務中であったが、イスマエルはすぐにアディリナの部屋へと向かう。
イスマエルの目に飛び込んできたのは大切で愛しくてたまらない娘が熱にうなされ苦しそうに眠る姿だった。
眠るベッドの傍に膝をつき、アディリナの手を強く握る。
それに気づいたアディリナは薄っすらと目を明け、イスマエルに視線を向ける。
「…お父様、ごほっ、また心配をかけ、て…しまってご、めんなさい…」
苦しそうにせき込みながら謝罪の言葉を伝えてくるアディリナにイスマエルは胸が苦しくなる。
「アディリナよ、大丈夫だ。無理はするでない。大丈夫だからな。」
そう言うイスマエルにアディリナは苦しそうに言葉を続ける。
「お、とうさま、クラウス…は、ごほっごほっ、なにも悪くないのです、怒らないで、あげっ…てください」
そう言って、自身の手を握るイスマエルの手にもう片方の手を重ねる。
こんなにも自信が苦しんでいるというのに、原因の弟をかばう姿にイスマエルは愛しさが込み上げてくる。
「…ああ、分かった。アディリナ今は何も気にせず、ゆっくり休むのだ。お前が眠るまでここにいるから。」
イスマエルは汗で顔に張り付いたアディリナの前髪をかき分ける。
アディリナ少しの間イスマエルを見つめていたが、薬の効果も効いてきたのかやがて目を閉じ眠りについた。
しかし、息遣いは普段と比べても辛そうだった。
イスマエルはそんな辛そうなアディリナを見て胸が痛む。
何よりも愛しい娘の願いを聞いてあげたかったが、その願いが目の前のアディリナを苦しめる元凶である自身の末の息子のクラウスの無事とは。
似ている。
自身を傷つけるそんな存在でも庇うその姿が。
そんなところはフェリシナに似すぎている。
何故?何故なのだ。
私に任せておけば、お前たちを傷つけるものなどすぐに消してしまえるのに




