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アディリナは庭を散策しているが、あれからずっと小さな弟のクラウスの事が気にかかっていた。
アディリナにっとて自分より幼い存在と関わるというのはクラウスが初めてだったからだ。
少し浮かない表情をしながらも庭を歩き進める。
いつの間にか庭の外れの方にある池の方まで来てしまっていた。
普段から王家の者か、庭師くらいしか立ち寄ることのできない庭園である。
花の咲き誇る季節ではないため、訪れる者は少なかった。
ふと池の方に視線を向けると、小さな人影が見える。
今まで自身の心を占めていた、末の弟のクラウスである。
いつも一緒にいる双子の兄と姉も、護衛の一人も傍には見当たらなかった。
クラウスはアディリナの存在には気づいていないようだったため、アディリナはそのままクラウスの様子を見つめた。
クラウスは池の方に手を伸ばし、何かを取ろうとしているように見える。
必死に手を伸ばしているようで、どんどんと体が池の方に自然と傾いてしまっている。
アディリナは咄嗟に危ないと思い、思わずクラウスへと駆け寄る。
「わっ!」
アディリナの予想が的中していたようで、池の方に重心をかけすぎたクラウスの身体は傾く。
「アディリナ様っ!」
そんなリチャードの声が耳に聞こえてきたが、アディリナは無我夢中だった。
クラウスに向かっていたアディリナはその腕を自身の方に力いっぱい引き寄せた。
クラウスの身体はアディリナによって、池への転落は免れるが、体重の軽いアディリナの身体は引き寄せた反動で池の方に傾いてしまう。
池への転落を免れたクラウスの顔に水しぶきがかかる。
クラウスは自身の身に何が起きたか、周りに何が起きているか全く理解できなかった。
ただ顔に飛んできた水しぶきの冷たさしか彼には分からなった。
「アディリナ様!アディリナ様っ!」
リチャードは池に足を踏み入れ、アディリナの身体を引き寄せる。
アディリナはクラウスを引き寄せた反動で、顔から池へと飛び込むことになってしまった。
身体もドレスも、すべて池の水によってびしょ濡れになってしまい、自身の手で顔をぬぐった。
「…リ、リチャード卿、だっ、いじょうぶよ」
リチャードを落ち着かせようとアディリナはリチャードの方を見やるが、リチャードはすぐにアディリナを抱き上げ、池から引きあげた。
そして自身が来ていた上着をすぐにアディリナの肩にかける。
季節は既に秋を迎えていたため、水は予想よりもだいぶ冷たくアディリナの身体は無意識のうちに震えていた。
「アディリナ様!すぐに人を呼びます!少しだけお待ちいただけますか?」
リチャードは焦ったように、早口で語り掛ける。
「リチャード卿、お願いしますわ。私は大丈夫ですから。」
心配をかけまいと顔に笑みを作るアディリナにリチャードは、悔しそうに顔を歪めるがすぐに人を呼びに走り去っていった。
クラウスはやっと今何が起きたか理解できた。
―アディリナは自身を助ける代わりに池に飛び込むことになってしまったのだ―
クラウスの身体は水で冷えているわけでもないのにガクガクと震えはじめる。
何も言葉にできず、ただただ嗚咽だけが口から洩れてきた。
「クラウス、大丈夫よ。大丈夫。」
アディリナはそんな幼い弟に心配をかけまいと微笑む。
その笑みを見て、クラウスの嗚咽はどんどん大きくなる。
「まあまあ、泣かなくてもいいのよ。クラウスあなたが池に落ちなくて本当に良かった。」
そう言って、アディリナはクラウスの頭を優しく撫でる。
またその手を振り払われるのではないかと思っていたが、クラウスはただただ嗚咽をこぼし泣き続けるだけだった。
投稿前に読み直ししているのですが、晩酌しながら書いているので、誤字多くてすみません、、、。
誤字の多い話は特に酔っぱらってる日だと思います、、、。




