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「セドリックがさ、最近アディリナに会いたいってうるさくて。こんなこと今までなかったから珍しくてさ。」
目の前にいるセドリックは微笑みながらも表情を一切変えなかった。
アディリナはそんなセドリックの言葉に何も答えることはできなかった。
「だからね、アディリナ。私の事も同じように愛してほしいんだ。」
セドリックは表情を変えることなく、アディリナを見て告げた。
「…セドリックお兄様、あの、…どういうことでしょうか?」
アディリナはセドリックが言わんとすることがすぐに理解できなかった。
「あれ、分からない?」
そう言って、向かいのソファーに座っていたセドリックは、アディリナの座っているすぐ隣に座った。
「いつもセドリックにはしているだろう?」
そして、アディリナの膝に頭を置き、アディリナの腰に腕を回した。
「…私にも同じように抱きしめて、頭を優しく撫でて。…簡単だろう?」
そう言ってセドリックは早くそうしてほしいと言うように、アディリナの身体に顔を擦り付ける。
だって、だってあの弱いセドリックが優しくされて、こんなに頑張っている私が優しくされないなんて起きていいはずがないのだから!
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ここ最近、あの弱く泣いてばかりのセドリックの声がうるさい
アディリナに会いたい、愛されたいとうるさくてたまらない。
今までずっと、お前はただ泣いているだけで何もしなかった癖に。
私が身体を操るようになってから、膝を抱えて泣いてばかりいる弱い弱いセドリック。
お前の分以上に私は努力し、皆の期待に応え、完璧に振舞ってきた。
今まではそれで良かった。
お前はただ泣くだけで、セドリックのモノはすべて私のモノだったのだから。
だが、あの日セドリックがアディリナに愛されてからだ。
あの弱くて何もできないセドリックの癖にうるさい。
うるさいのだ。
アディリナはなぜか弱いセドリックにはひどく優しい。
セドリックがどんなに泣いても、甘えても、醜く縋ってもそれでも決して呆れたり、見捨てたりしない。
優しく優しく包み込むだけだ。
それなのに!それなのに、私には何もしてくれない!
セドリックのモノはすべて私のモノ。
セドリックが愛されて、私が愛されない等あっていいはずがないのだから。
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アディリナが優しく優しく、セドリックの頭を撫でる。
その手つきに満足そうにセドリックは目を閉じた。
あの日アディリナは、セドリックが何を抱えていようと、セドリックを愛すると決めた。
ああ、この愛しくも悲しい兄を愛そう。
アディリナにできることは、ただただ相手を愛することだけなのだから。
結局セドリックの根本は一緒なのです。




