40
セドリックの拙い言葉から、アディリナはセドリックとヨハンの間に何かあったのでは?と考える。
2人は母を同じくした血のつながった兄弟である。
それに、今日のヨハンのセドリックの話をした際の取り乱した態度が忘れられずにいた。
2人に何があったかまでは分からないが、アディリナが今すべきことは、はっきりと分かる。
―セドリックお兄様を慈しむことだけだ―
――――――――――――――――――――――――
あの日から、1週間がたったが、セドリックは変わらず夜中に涙を流していた。
それにアディリナは変わらずに、セドリックの涙が止まるまで寄り添い続けた。
「ぼっ、ぼ、ぼくね、ずっとずっとずーっと、一人だったの。」
セドリックはすっかりアディリナに安心しきったのか、自分から言葉をかけてくれるようになった。
「そうだったんですね。とても寂しかったのではないですか?」
「…うん。と、とっても寂しくて悲しくて。み、みんなぼくに厳しくて怒って、とても、こっ、怖かったんだ…」
目をまた潤ませ、さらに肩まで恐怖を思い出したのか震わせる。
そんなセドリックにアディリナは寄り添いながら、そっと肩を抱いた。
最初こそ驚いて取り乱していたセドリックも今では少し慣れたようだ、アディリナにそっと寄りかかる。
アディリナはこの1週間、夜中の泣いているセドリックに寄り添って気づいたことがある。
理由は分からないが、今自身と会っているセドリックの精神はおそらく自身より幼い。
というより、10歳にもみたない寂しさに泣く子供のようだった。
「それはとっても怖かったですね、お兄様。よく、よく頑張りましたね…」
そう言って慰めるようにセドリックの頭を優しく優しく撫でる。
「…ア、あっ、アディリナはど、どうしてぼくを、おっ…怒らないの?」
セドリックは不安そうだが、意を決したように尋ねた。
この1週間でセドリックとアディリナの距離は急速に近づいた。
アディリナはセドリックが何を言っても、何も言えなくても決して怒ったり、呆れたりすることはなかった。
だからセドリックは確かめたかった。
アディリナがなぜ自分に優しくしてくれるのかを。
「セドリックお兄様、なぜ私がお兄様を怒るのです?」
アディリナはセドリックの質問の意図が分からず、逆に質問で返してしまった。
「え…だ、だって、ぼくは次の王にならなきゃいけないのに、ず、ずっと泣き虫で弱虫だし…。セドリックの方が王子としてみんなに認められてて。…こんな弱虫なぼっ、ぼくなんていないほうがいいんだっ」
自分で放った言葉に、セドリック自身が悲しくなったようでまた言葉に嗚咽が含まれる。
「お兄様は、私のお兄様なのですよ?それだけで私にとっては十分なのです。私も11年も呪いに侵されていて、ずっとお兄様と同じように自分がいなきゃいいと考えていました。…でも、ここに戻ってきてセドリックお兄様とお会いできた。それで良いのではないですか?」
アディリナの言葉に驚愕したセドリックの涙が止まる。
自分はアディリナの兄なのだ。
アディリナはそれだけを、兄としての自分だけを求めてくれる。
アディリナ、
ぼくにずっとずっと、優しくして。お願いだから傍にいて。
ずっとずっと優しくぼくを慰めて。
―お願いだから、ぼくを否定しないで―




