03
「…呪いが…消えています…」
この事態にすぐに現在の国一番の魔術師であるレナート・フェリーノは召集された。
突然の知らせに王宮の一室に集められたのは、宰相エメナド・ファラスカと、魔術師レナート、アディリナの乳母のマーサ、そして国の上層部を担う数名の大臣だ。
「…本来呪いというものは、その呪いをかけた魔術師本人、そしてその者より高位な力をもつ魔術師しか解呪できないのです。」
アディリナの異変を乳母のマーサから報告を受けたエメナドは、レナートからのアディリナの診察の結果を聞いていた。
「ですが!アディリナ様のお部屋には昨日誰もいらっしゃっておりません。それに昨日お眠りになる際は、変わらず呪いに苦しんでおられました…」
マーサは驚愕した様に昨日の事実を伝えた。
マーサの言葉を聞き、レナートは静かに目を伏せた後、事実を伝えるため口を開いた。
「呪いの解呪には先ほど申し上げた方法以外にあと1つだけ、方法があるのです。」
額に汗を浮かべ、緊張した面持ちでレナートは言葉を続ける。
「…呪いをかけた魔術師本人の死です。」
そして一つ息を吐いた後、重い言葉を放った。
「今朝、私の師であった国一番の魔術師ディーノ・レヒナーの死体が見つかりました。」
その言葉で、部屋全体が息をつけない程の沈黙に凍りついた。
レナートの放ったその言葉は、誰もが事態を想定することが余りにも容易かったからだ。
そんな重苦しい沈黙を破ったのは、宰相のエメナドである。
「陛下へは私から伝える。…そしてこの事は一切の他言を禁止だ。」
そう言い放ち、エメナドは国王の元へ向かうため、立ち上がり、ドアに手をかけた。
今のエメナドには、真相を知った自分を悔やみ、唇を噛み締めることしかできなかった。