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剣と剣が交わる音が鳴り響く
一人はアディリナの護衛騎士であるリチャード、その相手をするのは国王イスマエルの護衛騎士であるロイだ。
リチャードは、アディリナの護衛騎士として正式に宣言したあの日から、ロイの空いた時間に鍛錬を願い出ていた。
リチャード自身が実戦の経験が少なく、ロイに何度も剣を弾かれたり、膝をつかされたりしているが、それでも一度も挫けることなく果敢に挑んできた。
ロイ自身もリチャードがここまで倒されても、何度も挑んでくるその姿を見て認識を改めていた。
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リチャードの父であり、イヴァノフ王国騎士団団長を務めるデヴィッド・クランストンとは旧知の仲である。
父であるデヴィッドからは息子の中でも、リチャードの騎士としての未熟さを聞いていた。
本来アディリナの呪いさえなければ、リチャードが護衛騎士となることはあり得なかっただろう。
事実、リチャード自身あまりにも騎士として未熟であった。
それは騎士団の中でも周知の事実だ。
ロイもリチャードと直接対峙して剣を交えるまで、そう信じ切っていた。
―騎士としての覚悟も意志も実力も足りない未熟者だと―
だからこそ、あの日ロイはリチャードに問いかけずにはいられなかった
『リチャード・クランストン。貴殿にアディリナ様の護衛騎士としての覚悟はあるか』
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しかしどうだ?
今自身と対峙している者は、荒削りで隙も多いが、騎士としての強い意志が感じられる。
『アディリナ様を何者からも守りたいのです。私に剣を、そして騎士とは何たるかを教えていただけませんでしょうか』
そう言って必死に頭を下げた彼を思い出す。
ああ、羨ましい
自身の大切な存在のためにがむしゃらに前を向くことができる若き騎士が。
ロイもフェリシナに魅了された一人だ。
主であり、乳兄弟のイスマエルの最愛の妻。
自身の持つその想いを伝えるつもりなど毛頭なかった。
ただただ、陰ながらでもい。側に控え、守り続けたかった
その微笑みを主人の少し後ろから見ることができればそれで良かったのだ
突如訪れる、フェリシナ様の死
ああ、ああ!ああ!
そんな願いも、もう一生叶わない
ロイは騎士となって、その日初めて涙を流し悔やんだ。
何が騎士だ!愛する美しい姫を守ることすらできないただの愚かな男だ。
誰もがロイに言う。
ロイの行動は最善であったと。咎めることは誰一人できない。
ロイが本来自身が仕える主はイスマエルだ。
あの日イスマエルの護衛を優先したロイの行動に誰もが言う。
騎士として間違いなど一切ないと。
そうだ。
あの日自身の心のままに行動していたら、死んでいたのは主人だったかもしれない。
自分の選んだ道は最善だったのだ。
そうだ、間違いなどなかったのだ。
そのはずだったのに
11年ぶりに拝見したアディリナ様のお姿はフェリシナ様そのものだ
自身を押さえつけて納得させていた感情は瞬きの間に消えてしまった。
ああ、この若き騎士がひどく羨ましい
アディリナ様の側にいられることが羨ましくてたまらない
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あの日何もかも捨ててお側にいられたなら
貴方をお守りできたのに。
貴方は今もここで変わらず美しく微笑んでいたはずなのに。
―隣でなくても良かったのだ、その微笑みを見ることさえできれば―
ああ、羨ましい。
愛する姫を守る騎士として、その立場にいることができる彼がひどく羨ましい。




