表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
美しきモノの目覚め  作者: ccm
目覚め、そして出会い
14/84

14


「ああ、ああ!アディリナ勿論だ。しかし、そんな事でよいのか?」


自身の腕に抱え込み、髪を撫で続けながらイスマエルは尋ねる。


「それと、もう一つだけ…。私の護衛騎士は今のままリチャード卿にお願いしたいのです。」



それは、その場にいる全員が驚愕した。



リチャードは絶望に打ちひしがれ、下を向くしかできなかった顔を、勢いよく上げた。




「なっ…アディリナよ、…本当に良いのか?国1番の優秀な騎士を従えることもできるのだぞ?」


今の呪いが解け、イスマエルの寵愛を受けているアディリナであれば、護衛騎士になりたいと志願するものはあまりに多いだろう。


イスマエルも、アディリナが求めるのであれば、自身の護衛であるロイでさえも容易く渡したはずだ。



確かにリチャードは由緒ある騎士家系のクランストン家の生まれである。

しかし、騎士としてその評価が低い事は周知の事実であった。


剣術の強さではない、リチャード自身の意思の弱さ


それは、騎士として主を守るために必要不可欠の要素である。



「はい。私はリチャード卿を信頼しております。彼に傍にいてもらいたいのです。」


アディリナは何の迷いもなく、その言葉を発した。










リチャードはいつだって選ばれなかった


優秀な兄たちと比較され、いつだって選ばれる事はなかった


リチャード自身、努力しなかったわけではない


―しかし幼い頃からずっと、選ばれる事はなかった―








「リチャード・クランストン。貴殿にアディリナ様の護衛騎士としての覚悟はあるか」


今まで言葉を発する事はなかった、イスマエルの護衛騎士ロイ、ロイ・スペンサーが厳しい口調で問いかける。


ロイはイスマエルの乳兄弟であるが、家は騎士の一家ではない。イスマエルと共に有るために、ロイ自身自ら志願し、鍛錬を重ね、この立場を手に入れたのだ。


自分の主人(イスマエル)最愛(アディリナ)を守る騎士としてリチャードの覚悟を尋ねずにはいられなかった。



リチャードもロイの言葉の重みを全身で感じ取り、思わず恐怖に震えそうになるのをグッと堪えた。






リチャードは幼い頃から選ばれなかった


―だが、リチャード自身も何も選んでこなかったのだ―



覚悟も信念も、主人を守るための力も全然足りない自覚はある。


しかし、リチャードはこの日人生で初めて自分で決め、選んだ。


片膝をつき、顔をあげ声を張る。



「リチャード・クランストンは、自身の全てを賭け、アディリナ様にお仕えいたします。」



リチャードのその言葉にアディリナは嬉しそうに微笑んだ。





――――――――――――――――――――――――







誰にも選ばれなかったリチャードが欲しいと、

初めて選んでくれた自身の主人(アディリナ)



リチャードはこの日初めて自分の中に生まれた愉悦感に浸った



俺が、この俺が選ばれた!

アディリナ様が、他ならぬ俺を選んでくれたのだ!


今まで出来損ないの自分(リチャード)はいない。


今の(リチャード)は、アディリナ様に選ばれたのだ!
















――――――――――――――――――――――――




アディリナが行うのは、愛し癒し、その心を自身で埋めるだけ。ただそれだけ。


リチャードは、『自身を守ってくれる存在(モノ)』だったのだ。







評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ