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第八話 小学生との死闘

 ウワァオ〜〜ウ、遅刻だ遅刻だ〜〜〜〜い!!  オーマイガッ!!


 私はチョココロネをくわえて、アパートの部屋を飛び出した。

 アパートを出てしばらくは車の少ない裏道だ。


 チョココロネとは、走りながら食すのに最も適さないパンの1つではなかろうか? 慎重に食べ進めなければ中身がコンニチハしてエラい事になってしまう。

 しかし昨日「前々日パン8割引」というPOPにつられて今日の朝食用に買ってしまったので食べない選択肢は無い。うっかりしていると前々々々日パンになってしまう。


 私はありとあらゆるパンを走りながら食べ、どのパンが疾走のお供に適しているかを検証する価値は大有りだと考えながらも走り続ける。


 タラァリタラリ……


 ウワァァァァ!! 顎がぁぁぁ!!

 私はチョココロネからコンナチワしたチョコクリームで顎を汚しながらも走り続ける。


 今朝はアラームに気付かないくらい熟睡しており、いつもの時間に起きられなかったのだ。

 細◯たかしの髪型って一体どうなってるの? と考えていたら、なかなか眠れなかったのである。


 飼っているマングースのグッさんが見兼ねて揺すって起こしてくれたが、10分も遅い起床となってしまった。

 元々ギリギリに起きていたので、たかだか10分だが休日に流れる時間に換算すると2時間に匹敵する貴重な時間である。


 急げ急げぇ〜〜いッ!


 私は通学途中らしい1人の男子小学生を追い抜き、息を整えようと一旦走るのをやめて歩き出した。


 すると私が追い越した男児はいきなり駆け出して私を抜き、すぐ走りから歩きへと切り替え、振り返ってニタリと笑った!

 小学校中学年と思われる彼の笑みは、嫁の掃除した後の床に埃を見つけ、何と言ってイジメてやろうかと思案するような笑みだった。末恐ろしい男児である。


 私は内心ムッとしたが、それよりも遅刻だ。しばらく早歩きをして息が整ったらまた走ろうと急いでいたら、必然的にまた男児を追い抜く事になった。


 すると男児は再びダッシュで私を抜いた。そして私を見てニタリニタリ。


 時々いるのだ、こういう小学生が。2クラスに1.5人くらい、すなわち学年に3人くらいはいる。恐らく負けず嫌いなのだろう。

 いつもなら社会人としてスルーするのだが、今日は寝不足でイライラしているし急いでいるしで対抗してしまった。


 ……受けて立とうじゃねぇか、その挑戦……


 私は猛然と駆け出した。男児と並ぶと同時に、彼もスタートした。


 うりゃぁぁぁぁ!!!


 私の本気を見よ! かつて「西中の牛歩戦術」と言われた私の本気を!


 競走は続き、もうすぐ大通りだ。

2人は互角だった。肩を並べ、ビル風の如く疾走する。


 なかなかやるな……。


 やっと完食したチョココロネの糖分が吸収され、全身にエネルギーが漲る。

 私が徐々にリードしてきた。走りながら振り返ると一馬身くらいの差がついている。

 私は男児にされたように、彼を見て笑みを浮かべてみた。


 大人にはね、絶対に負けられない戦いがあるのよ……あなたにも分かる時がきっと来るわ……。


 すると突然男児は立ち止まった。


 はは〜ん、やっと負けを認めたか!


 よし、このまま風になろう。この調子で行くと遅刻どころか、若干早く職場に到着するかもしれない。


 そして次の瞬間、私は車に轢かれたッ……!



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