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6.黒騎士、魔王の優しさを知る。

痛みに呻いてリズが目を覚ますとそこは自室だった。

ゆっくりと体を起こして辺りを見回すが部屋には誰も居なかった。


「私は、負けた・・・。」


と言いリズはクロムとの戦いを思い出した。

結果はクロムの勝ちでリズは油断したというだけで負けた。

それは些細な事だろう、けれどもリズにとってそれはとても辛い物である。

だって、リズは一つの結論を思い浮かべてしまったから。


「きっと、私は処分されるのでしょうね試験に合格できなかったから」


そうリズは呟き膝を抱えて丸まった。

そして静かに魔王が来るのを待った、しかし魔王は来ない代わりに

コンコンと扉をたたいて一人の足音と声が部屋の中に響いた。


「おはよーう後継者ちゃんってうわ、めっちゃ落ち込んでんじゃん

えと大丈夫?」

「・・・ああ、貴方ですか」


とリズはクロムにそう言った。

クロムは気まずそうにしながらリズへと視線を向けて


「えと、大丈夫?昨夜の奴そんなに悔しかった?」

「悔しいとは?」

「いやだからそのね?自分に負けてこう死にたくなったりしてない?」

「いいえ、そもそもそんな事を考える必要はもうないですよね?」

「え、なんで?」


とクロムがキョトンとした様子でリズに問いかけた。

リズはそんなクロムの様子に疑問を抱きながらも


「だって、私は試験に合格することが出来ませんでした。

つまりそれは私が黒騎士になれなかったという事です」

「ふむ、で?」

「つまり私は魔王様にとって出来損ないの部下です。

そんな私に生きている価値はありません」

「何でそう思うの?」

「何故って魔王様とはそう言った御方なのでしょう?」


とリズがそう言うとクロムは唐突に笑い始めた。


「アッハッハッハ、これは面白い。まさかそんな風に思っている奴がいたなんて」

「違うんです?」

「違うよ?あいつはちゃんとした優しさを持っている。」

「魔王様がですか?」

「うん、確かに前の魔王は全員冷酷で残忍で一切の優しさすら持ち合わせていない

正直言ってひどいやつだったがエマが魔王になってから自分も丸くなったからねー」

「・・・エマ?」

「あれ?まさかアイツから聞いてないの?」

「はい」

「仕方ないなぁエマっていうのは魔王の名前だよ。

エマ・プロメテウスって言う名前」

「変わった名前ですね」

「だろ、でも勇者の前とかでその名前を出すのは駄目だと禁止されてるんだよ」

「それは、何故ですか?」

「ありゃ、聞いてない?エマ・・・魔王の娘さんが数ヶ月後に

人間の大陸にある学園に入るとかなんとかそれで魔王の血縁者だとばれないように

っていう感じらしいんだよ」

「偽名を使えばいいのでは」


とリズが言うとクロムは手を振ってこういった。


「残念だけど無理だよ」

「何故です?」

「最近は人間の国の方で相手の名前を見る魔道具が開発されてね

偽名名乗っても一発で見破られちゃうんだ。さて、行くぞ」


と言ってクロムはリズへと手を差し伸べた。

リズはその手を不思議そうに眺めて


「行くってどこへです?」


と問いかけた。

クロムはにやりと笑みを浮かべるとこういった。


「魔王の所へだよ」


リズは嫌そうにしたが結局半ば無理やり魔王の部屋の前へと連れてこられた。

何故かクロムの背中に背負われる形で。


「・・・・・なぜ、私は貴方に背負われてるんですか?」

「自分の反撃で君が足怪我してるとは思ってなくて仕方なく」

「足怪我してたから私出たくなかったんですが」

「まあ、そこら辺は許して後継者ちゃん」


と言ってクロムはコンコンと魔王の部屋の扉をノックした。


「ちょっと、何して」

「開いている、入りなさい」


と中から魔王の声が聞こえクロムはすぐに扉を開けた。

そして扉を開けてすぐ目に入ってくるのは大量に積み重ねられた紙の山と

それにペンを走らせる魔王だった。


「あーあーまたこんな散らかって大変だねぇ」

「今のお前よりはましだと思うけど?」

「あーこれ?いやさ後継者ちゃん足怪我しちゃってるからね」

「それで罪滅ぼしのつもり?」

「ほかにやれる事無いしなー」

「なら私がそれを作ってやろう」


と魔王がいうとクロムは顔をしかめ


「えー、なんか嫌な予感がするんですけど気のせいですか?」

「別にそんな難しいことじゃ、いや難しいかもしれないな」

「どんなことを頼むつもりだよ」

「お前の孫に頼みリズに常識を教えてやってくれ」

「え?常識なら自分でも」

「・・・お前は男でリズは女だこの意味が分かるか?」

「オーケー理解した。」


と言ってクロムがそのまま踵を返そうとすると

クロムの頭に籠手を纏っての拳が振り下ろされた。

その痛みにクロムはリズは放してしまいリズの体が床へと投げ出される。


「魔王様、一つ聞いても・・よろしいですか?」


とつぶやいてリズは無理やり立ち上がった。

そんなリズの様子を魔王は心配し椅子から立ち上がると黒騎士を床に座らせる。


「まだ傷が治っていないのに無理をするな」

「別に、いいじゃありませんかどうせ私は出来損ないなのですから」

「はぁ?」

「試験に合格できずに黒騎士になれなかった私は魔王様の子供を

守ることは出来ません。」

「そんなこと・・・」

「私はクロムに負けてしまいました、勝たなきゃいけなかったのに」


そのリズの言葉に魔王は気づいた。

リズが魔王の言った事を守れなかったことにひどく苦しんでいることに

重荷に潰されそうになっていることに


「そうか、それはお前にとって辛いことか?」

「はい」

「死にたくなるような事なのか?」

「・・・・はい」

「安心しなさい、私は貴方を見捨てない」

「はい?」

「けど、優しくもしない。だから私は貴方に命令を下すわ」

「・・・・」

「リズ・ラインハルト、これくらいでへこたれるな貴様はまずクロムとその孫から

 いろいろな事を学びなさい。」

「はい」

「魔王である私が命ずる、黒騎士リズは明日に我が娘と交流をはじめ

それと同じくしてクロムから戦闘を学ぶこと、それが貴方の

今回の件での私に対する罪滅ぼしです」


と魔王はそうリズに告げるのだった。


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