4.黒騎士、魔王に呆れられる
黒騎士が誕生してから三日、魔王は上機嫌な様子で玉座に座っていた。
そんな魔王の様子に配下の魔族が魔王へと問いかける。
「随分とご機嫌がいいのですね魔王様」
「当たり前よ、なぜなら何年も私を殺そうと戦士を送り込んできていた国が
なくなったのだからな、これで私もよく眠れるという物」
「なるほど、確かに今までは昼夜問わず勇者たちが攻めてきたせいで魔王様の
睡眠時間は大幅に削られておりましたからな」
「そういう事だ、ところで黒騎士の様子はどうだ?」
「はい、現在黒騎士は自室にて休息を取られているかと」
と配下が報告をすると魔王は少しだけ考え込むと
やがて盛大な溜息を吐いて玉座から立ち上がった。
「一応保険を打つべきかもしれないな」
「と言いますと?」
「黒猫と戦わせ学ばせる方がいいかもな」
「は!?し、しかしそれでもしも黒騎士が死ぬようなことになったら」
「逆に問いかけるがお前たちは猫と戯れた程度で壊れるように作ったのか?」
と魔王が問いかけると配下はすぐさま首を横に振り否定する。
「め、滅相もございません。黒騎士は今までで最高の出来と言えましょう」
「なら、戦わせても問題はないだろう?」
「それは、そうですが」
「なら、話はこれで終わりだ今夜黒騎士を奴の場所へと連れていく
それまでに準備を済ませておけ」
「わ、わかりました」
そして話が終わると魔王はすぐさま黒騎士の部屋へと歩みを進める。
黒騎士は部屋で武器の扱いを練習していた。
無論サジタリウスを扱うための訓練だ。
具体的な内容は至極簡単でサジタリウスに矢をつがえ
壁にある的へと当てる練習だった。
しかしいくら矢を放とうとも矢は的のすぐ横の壁や床へと刺さるだけだった。
「・・・・何故でしょう?私の狙いが悪いのでしょうか?」
と黒騎士がそうつぶやくと不意にコンコンと扉がノックされた。
黒騎士はサジタリウスをベッドに置くとすぐに扉を開けた。
部屋の外に立っていたのは魔王だった。
「魔王様、何か御用でしょうか?」
「ああ、今夜貴様の能力の最終確認をするので今晩寝ないように」
「了解しました。」
「・・・ほかにも言いたいことがあるので部屋に入っても?」
「はい、特に問題ありません」
と答えると黒騎士は魔王を唯一ある椅子に座らせてベッドへと腰掛ける。
そんな黒騎士の様子に魔王は部屋の中を見回しながら彼女に一つの質問をした。
「リズ、この部屋を見る限りお前は一切内装をいじっていないように
思えてしまうのだけれど、気のせいかしら?」
「いいえ、私は一切この部屋の内装をいじっておりません魔王様」
「それはなぜ?」
「必要性がないと判断しましたので」
「でも、貴方は仮にも女の子でしょう?部屋を飾りたいと思ったりしないの?」
と魔王がそう問いかけると黒騎士は首を傾げる。
「女性とはそういうものなのでしょうか?」
「・・・・貴方には後で色々教えた方がいいかもしれないわね」
と魔王は黒騎士の知らなさに呆れながらそうつぶやいた。
そしてこの夜魔王城の地下で一つの戦いが始まろうとしていた。