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18.道化師はただ笑う

霧が立ち込める中でリズはゆっくりとレーヴァテインを構える。

それと同時に、斬撃が飛んでくるがリズはそれを避けず

斬撃はそのまま、リズの体へと直撃する。


「な!?」

『主!?』


そんな三人の驚いた声が重なる中リズは静かに目を閉じたまま


「大丈夫、それよりも今からこの霧を晴らすために

私の魔力を貴方に貯めます」

『…その間は攻撃を防げないぞ?』

「構いません、一刻も早くアリス様の元へと行かないとですから」

『分かった、なるべく私も頑張ってみるから』


魔力を貯め始めたリズの様子に朧月と蒼月は

霧の中から二人の様子を見つめていた。


「現状分析、行動を迅速に」

『さて、どうした物ですかねー正直今攻撃したところで

あの黒騎士さんは一切動じないでしょうからねぇ』

「攻撃は無意味?」

『恐らくは、かといって他に打つ手がないので

私達に出来る事は一つでしょう」

「明確な回答求める」

『私達も全力で彼女と決着を付けます』

「理解、行動開始」


互いに頷くと蒼月は二つの刀に魔力を

流し込み始める。

霧に包まれた空間の中で仄かに

赤い光に呼応するかのように紫と青い光がその輝きを

増し始めていた。



「ほらほら、どうしたんですか?先輩早く避けないと壊れてしまいますよ?」

「っく、相変わらず貴方は力が強いですね」


リズと蒼月たちが決着を付けようとしている中で

リタとアダマスの方の戦いも段々と優勢が見え始めていた。

アダマスの振り下ろした鎌をリタが魔力を込めた籠手で

必死にガードしている。

しかしそれも限界で、籠手の方に少しずつひびが入っており

あと少しすれば壊れるのは目に見えていた。


「ほらほら、先輩-頑張らないと壊れてしまいますよー?」

「ぐぬぬぬぅ」


大鎌を必死にガードしつつも苦しげな表情の

リタに対して、アダマスは嬉しそうな顔と共に

ぐっと大鎌に込める力を増した。

それによる負荷に足元が耐えきれなくなったのか

リタがバランスを崩すとともに

大鎌がすぐ横へと突き刺さった。


「先輩、運がいいですねでも今度は逃がしませんよ?」

「・・・逃げませんよ、私はリズからアリス様をお守りするように

約束をいたしましたから」

「ふーん、ならさっさと先輩を破壊してあの黒騎士さんも

二度と立てない体に・・・」

「・・・黙りなさい」


そんなリタの声にアダマスは首を傾げるそれに対してリタは

そのまま弓を消す。


「何のつもりですか?先輩」

「私は貴方を倒します

「・・・そうですかならば先輩行くっすよ!!」



アダマスはそのまま地面をけり一気に距離を詰めようとする

対するリタの表情に焦りはなくあるのはまっすぐな表情

アダマスの鎌が迫る、しかしそれがリタに当たることは無かった。


「・・・・え?」


次の瞬間アダマスは地面に転がっていた。

何が起きたのか理解はできなかった。

確かにリタに斬りかかった、そのはずだ

にもかかわらず地面へと転がっている。

しかし何が起きたかを理解する前にアダマスへと

矢を構えた弓が構えられる。


「さて、私の勝ちですねではリズに忠誠を」

「分かりましたよ、もうというかあっちはやけに・・・」


アダマスが言いかけた時だった

総突に霧の檻が割かれゆっくりとその場から引いていく。

そこにあったのは魔力の奔流がぶつかった後だった。

しかし、そこに立っていたのはリズと蒼月たちではなく

見慣れない一人の少女だった。

金色の結った髪に何処か神々しさを感じさせる鎧を纏い

手には光輝く真っ白な剣があった。


「あれは、まさか」

「考えたくはありません、しかしあの光は」

「あれは、誰?」


そんな言葉をアリスが呟くと少女がリタたちの方へと向き直る。

ほんの少し見られただけそれだけでリタたちの体に悪寒が走った。


「貴方は、誰?」

「私、私は」


少女は少しだけうつむき考え込むと

すぐにリタたちへと視線を向けこういった。


「私の名はユリア・ベルファスト、魔王を倒そうとし

敗北し辱められていた勇者」

「・・・先輩アリス様を連れて逃げてください」

「何を!?」

「恐らく、あれに対抗できるのは魔王様とクロムさん

位です、だから早く行ってください」


アダマスが鎌を構えるとユリアは首を傾げる。

どうやらまだアダマスたちが魔王に属する者だとは

理解できていないようだった。

それを理解しているのかアダマスは武器を構えたまま

ユリアにこう尋ねた。


「一つ聞きますけれど黒騎士さんはどうしました?」

「黒、騎士・・?」


キョトンとした表情でユリアがそう尋ね返す。


(どうやら、まだ自分たちが魔王側とは気づかれてないみたいですね

けれど、四人は・・・いた気絶してる?なるほど)


「そこの倒れてる四人の内の一人なんですよね」

「ああ、それなら大丈夫ハイヒール掛けたから

魔力が回復すれば目覚めるよ?」


ユリアのその言葉にアダマスは安堵しつつも

大鎌を構える手を下ろそうとはしない

何故ならばユリアには一切の隙がなく魔族だと分かれば

すぐにでも斬りかかってくるかもしれないからだ。


「ところで、」

「?」

()()()()()()()()()()()()()()()()

「!?」


その言葉にアダマスは咄嗟に大鎌を振り下ろした。

しかし次の瞬間そこにユリアの姿はなく代わりに横から

回し蹴りが無防備なアダマスの体へと直撃する。

メキメキという音とともにアダマスの体はそのまま広場を転がり

サクラの木へとぶつかった。


「危ない、危ないごめんなさいあまりにも突然だったから」

「あ、ぐ・・・・」


痛みが絶え間なく襲い掛かり口からは血が吐き出される。

圧倒的な力の差を感じつつもアダマスが立ち上がると


「意外と頑丈なんですね貴方」

「貴方を行かせるわけにはいきませんので」

(あー、まずいなぁこれ次喰らったら自分死んじゃいますね

でも、先輩がちゃんと魔王様を・・・呼んでくれるはず)

「じゃあ、少し眠ってもらおうかな」


来る衝撃に備えようとアダマスは目をつむる

しかし、衝撃は訪れず代わりに聞こえたのは戦闘の音だった。


「少しだけ寝てしまったようですね」

「戦況不利、逃走不可能」

「やれやれ、契約早々戦闘とはブラックですね」

「我が主、無理は禁物」


その剣を受け止めていたのは先ほどまで気絶していた

四人だった。

リズたちの姿を確認したユリアは驚いた表情をする。


「あれ、もう目覚めたんだ」

「あいにくですが回復が早いので」

「そうなんだ、なら私と貴方で戦いましょう」


いうなりユリアはリズへと回復呪文を掛ける

その行為にリズが疑問を抱くとユリアは


「戦うなら対等がいいだろうから、まずは名乗りからかな」

「いいでしょう、魔王軍所属七代目黒騎士リズ・ラインハルト」

「私は勇者、勇者ユリア・ベルファスト」

「私は魔王を倒すために貴方を倒して前へ進む」

「私は絶対に貴方を進ませはしない」


会話が終わるなり二人はすぐさま

互いの武器の名前を呼んだ。


「クラウソラス!!」

「レーヴァテイン!!」


炎と光が交差し互いにぶつかる。

二人は互いに一歩も譲らずその場には光と共に

剣劇の音が鳴り響く。

二人が剣をぶつけ合うたびに地面に真っ白な雫が

落ちそれは容易に地面に穴をあけるそれほどまでに

二人の剣の熱量は上がっているのだ。


「シャイン!!」

「ダルク!!」


剣劇の合間に二人の詠唱と共に

光と闇の球が互いにぶつかり合い消滅する。

それを他の三人は見ていることしかできない。


「二人共、これ自分達介入する余地は?」

「消滅しますね」

「傍観推奨」


しかし互角と思えた戦いもすぐに差が開き始める。

段々とユリアの剣がリズの鎧へと当たりリズもユリアの

動きを終えなくなっていた。


『ごめん主、もう持たない」


そんな言葉と共にレイが人間の状態になると共に

鎧がユリアの一撃により砕け散った。


「主!!」

「さて、じゃあさよならリズさん」


リズへと振り上げられた刃を止めるために

三人が駆け出すがそれをあざ笑うかのように

ユリアが剣を振り下ろそうとすると

次の瞬間ユリアは後ろへと吹き飛ばされていた。


「ふふ、この痛み忘れたことは無いよ魔王!!」

「私としてもお前の愚かさは忘れられなかったぞ勇者」


そう、彼女は笑みと共に言った。

数年前の決戦と同じくして同じ状況だった。


「リズ、良く耐えたな後は私が片付けよう

アダマス達はリズと共に撤退しろ」

「分かりました、魔王様お気をつけて」


アダマス達の姿が消えると魔王は勇者へと向き直る。

勇者は依然としてクラウソラスを構えながら魔王を睨みつけている。


「私は貴方を倒す!」

「下らんな、勇者よ悪いがすぐに決めさせてもらおう

来たれカタストロフィ」


魔王の言葉と共に一冊の本が魔王の手元に出現した

その本は真っ黒な表紙に大きな目玉のついた不気味な本だった


「何をするつもりか知りませんがさせない!!」

「もう遅い、愚者の鎖」


突然赤い鎖が何処からともなく現れユリアへと巻き付く

それを体に巻きつけたユリアは苦痛に顔を歪ませるが

魔王はそんなユリアに問いかける。


「さて、一つ聞くが()()()()()?」

「私は、ユリア・ブリュンヒルデだぁ!!」

「嘘をつかない方がいい、それは嘘を付けばつくほどに

縛りが増すからな」

「何故、嘘だなんてお前に分かる」

「ああ、まだ気づかないのか?」

「何?」

「お前が先ほど戦ったアイツがユリア・ブリュンヒルデだ」

「・・・・・」

「ユリア・ブリュンヒルデは今は私達魔王を守る黒騎士へと

変貌している、ならば貴様は何者かな?」

「フフフフ」

「?」


突然ユリアは笑い始める。

それと同時に愚者の鎖の中からユリアの姿が消え

代わりに魔王の数メートルほど前にピエロの

格好をした人物が姿を現した。


「何者だ貴様は」

「はぁぁ、まさか勇者が魔王の手下にされてるとは

予想外でしたねぇ」

「・・・・」

「さて、では自己紹介といきましょうか。

私の名はーゲルトルト、しがない道化人でございますよ」

「お前は、何の目的でここに来たのか教えてもらおうか」

「ええ、ええいいでしょう私がここに来たのは

これすなわち貴方様の子を始末しに来た次第です。」


ゲルトルトのその言葉に魔王がすぐさま

攻撃をしようとするとゲルトルトはすぐさまあとずさり


「おっと、ご安心を今回はあくまでもあいさつ代わりです」

「何?」

「ですので今回は退かせていただきますよ」


というとゲルトルトはその場に煙幕をばらまく

すぐさま魔王がその煙を消し飛ばすとその場には

ゲルトルトの姿は無かった。


「・・・時間はもうとっくにない

あの子をすぐにでも向かわせねば」


そんな言葉と共に魔王はその場を後にするのだった。






夜の海を一隻の船が通常では出ないスピードで進んでいた。

そして、その先端で道化師は魔導具を用いて誰かと会話をしていた


「ええ、確認いたしました。

確かに勇者は失われたようですですが同時に面白いことも

ええ、ええ分かっておりますよ。

既に人員は用意しました。

恐らくは、いえ()()()お気に召すでしょう」

道化師はただただ笑う。

夜の闇よりも深い暗く黒い陰謀はゆっくりと

渦巻いていく。

その中心は一人の少女とその騎士であることは

まだ誰も知らない

これで一章は一応終わりです

ここまで読んでくれてる方はありがとうございます

次回からは二章・学園編へと入ります

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