16.蒼月&朧月
お風呂に浸かりつつリズがアリスへとレイの事を紹介するとアリスは興味津々な様子で
レイを眺めはじめる。
「貴方が、魔剣レーヴァテイン」
「お初にお目にかかります魔王姫アリスさま」
「ええ、始めましてレイさん」
アリスはそう言ってレイへ握手を求めた。
レイはそれに応じるとすぐにリズの隣へと移動する。
「此度の我が主が使えたる魔王の子は随分と面白いものよな」
「そうなのですか?」
「うむ、一切の警戒心がない今の握手の間に四回はやれたぞ」
「それをすれば私は貴方を殺します」
「クク、流石にそのような事はせんよ」
レイは軽く笑うと何処から取り出したのか
瓶の中身を小さな器へと注いでリズへと渡した。
「?」
「極東から持ち込まれた甘酒というお酒じゃ」
「甘酒・・・どんな味なのでしょう?」
「いろんな酒を飲んできたワシ的には名前の通り甘い酒ってところじゃの」
「そうなのですか、それでこれをどうしろと?」
「そんなの決まっているでしょう?飲むのよ」
「すみませんが、アリス様のいる前で飲むわけにはいきませんので」
「真面目なのね、貴方は貴方の前任はもっと適当だったわよ」
「私の前任者ですか?」
「ええ、といっても私はあまり知りませんでしたが
知っているとすれば、グラムでしょうけれど」
「それは・・・」
リズが何かを言う前にその顔にお湯が掛けられる。
レイがそちらへと視線を向けるとどうやらリタとアリスが
お湯をかけあって遊んでいたようだった。
「・・・二人共、お風呂でふざけちゃだめですよ」
「ふふッ一度やってみたかったのよこれ」
「リタ・・・さすがに止めなさいよ」
「すみません、つい熱中してしまって」
リタはそう言いながらリズの方へと近寄ると
リズはいつも通りの無表情で静かにたたずんでいた。
「ごめんなさいリズ、ついね」
「別に気にしていませんが・・・それより先ほどから
こちらを覗いているそこの人たち、何の用ですか?」
リズの言葉にレイとリズはハッとして湯煙の向こう側へと
視線を向けつつすぐさま魔法の発動準備を整えた。
「随分と前から気づかれていたようですよ蒼月」
「・・・・戦闘以外は確認完了、残りは戦闘のみ」
「そうですね、では場所を移すべきかもしれませんね」
パチンと指を鳴らす音が聞こえたかと思えば
次の瞬間にはそこは大浴場ではなく
サクラ舞い散る広い場所だった。
「ここは・・・」
「サプライズはお気に召したでしょうか黒騎士さん」
「御託は不要、始める」
桜吹雪が渦をなしそれが収まると中から二人の少女が
姿を現した。
片方は茶色く腰の辺りまで伸びた着物を着た少女で
もう片方の少女は本を片手に開いた状態で持った黒髪の
眼鏡を掛けた少女だった。
「・・・・まさか貴方達は」
「我が銘は朧月」
「我が銘、蒼月」
「魔装ですか、でも何故このタイミングで」
リズがそう言うと蒼月が言葉を紡ぎ始める。
「魔王姫の入学はもうすぐ急がなければ間に合わない」
「そう言うわけで私たちの間で話し合い、すぐにでも貴方に
私達と戦ってもらう事にしましたのですよ」
「・・・リタ、アリス様を」
「うん、わかったよリズ」
リズの言葉と共にリタがアリスの傍にて自らの
現身と共に身構える。
「それで、どうするつもり?私から言わせてもらうけど
あの二人は息ぴったりだから少々面倒よ?」
「アリス様はリタに任せますが、今の私には貴方が居るでしょう?」
「いいでしょう、呼びなさい私の名を」
「ええ、力を貸してレーヴァテイン!」
「了解よ、我が主」
そう言ってレイの姿が消えたかと思うと
次の瞬間にはリズの手に剣が出現し
リズも鎧を身に着ける。
「私達もいきますよ蒼月」
「了解」
蒼月は返事をすると先ほどから読んでいた本を閉じた。
すると次の瞬間には朧月の手に蒼月と刀の二つが握られていた。
「二本持ち・・・・」
「驚きましたか?これが私たちの戦い方です。」
『気を付けなさい我が主、一応あの二人は強いわ』
「・・・ええ、肝に銘じます」
「さて、では改めて魔装蒼月&朧月」
「七代目黒騎士リズ・ラインハルト」
「「我ら、誓約に従い貴方を倒す!!」」