13.黒騎士、魔装と出会う
リズの妹、正確には魔王に堕とされる前の勇者だった彼女の妹が魔王城へと
乗り込んできてから数日が立った。
そしてその日の朝にリズは魔王へと呼び出され魔王の自室へと
足を運んでいた。
「どのようなご用件で呼ばれたのですか?魔王様」
「来たか、先日の襲撃の件についてどう思う?」
「どうとは?」
とリズが聞き返すと魔王は自らの考えを話し始めた。
「私は昨日の襲撃は私の娘を狙っての事だと思う」
「アリス様を、ですか?」
「おや、なぜおまえがあの子の名前を?」
と魔王は少しだけ警戒したような目をしそう言った。
それに対してリズは素直に答える。
「少し前に、私の部屋で一緒に話をしたときに教えていただきました」
「・・・なるほど、まあいいそれよりも問題は先日の件だ」
「はい、それで彼女らの目的がお嬢様だというのは
一体どういうことなのですか?」
というリズの問いに魔王は少しだけ黙って考えるとすぐに
一つの結論を出した。
「恐らくは誰かが先日の襲撃者に私の娘の存在を教えたのだろうな」
「誰かとは?」
「そこまでは分からんが考えられるとすれば自らこそが魔王に
相応しいとそう考える者たちだろうな」
と魔王はそう言った。
そんな魔王の様子にリズは先日の少女の言葉を思い出していた。
『そんなの嘘よ!あの人が死ぬはず・・・』
『な、なんで・・・お姉、ちゃん?」
(私の事を姉だとあの少女は言っていた、一体どういうことなのでしょう?)
「どうした?黒騎士」
「いえ、何でもありません」
(そんなはずはない、だって私は黒騎士なのだから)
とそう考えて先ほどまでの思考をリズは頭から振り払う。
そんなリズの様子に魔王は少しだけ疑問を抱くがすぐに
「まあ、そう言うわけでだあまりにも早速だがやってもらいたいことがある。」
とそう言った。
それに対してリズはすぐに
「ええ、それが魔王様の意思なのであれば」
とそう答えた。
魔王城地下闘技場
「来たか、魔王様とリズ」
魔王に連れられてリズが地下格闘技場へとたどり着くと
そこにはクロムがいた。
「師匠、なぜここに?」
「ああ、魔王に頼まれてこれをここに運んできたのさ」
といったクロムの後ろには数本の武器が刺さっていた。
剣、大剣、戦斧、杖、大鎌そして剣によく似たものが刺さっていた。
「そこの二つは何ですか?」
「ん?これは極東の方の国で作られた刀という武器だ」
「なるほど、なぜ二本あるのですか?」
リズの言う通り刀は二つ地面へと刺さっていた。
その二つはとても似ていてそれぞれ黒と白の鞘に収まっていた。
「これは二つで一つの武器だからよ、だが今日はこれじゃなくてこっちだ」
といいクロムは一番端の剣を指さした。
その剣は見ていると真っ黒な剣で見ていると
吸い込まれそうになるような感覚をリズは感じた。
「これらはかつての黒騎士がそれぞれ使っていた武器で
名称はアウィリオンハーツだ。」
「アウィリオンハーツ?」
とリズが聞き返すとクロムは頷いた。
「命名したのは魔王だ」
「どういった意味なんですか?」
「特に意味は無かったんだけどね二代目辺りの黒騎士が意味を
考えてくれたんだけど、なんだったかしら」
「守るための力であり盟友であるだったはず」
というクロムの言葉に魔王は納得と言った感じで頷いた。
「そうそう、そんな感じだったわね」
「いやーあの時のシズナさんは可愛かった」
「たしか今は極東に帰ってしまったのよね?」
「花嫁修業だとかなんとか」
「あら?相手が見つかったの?」
「全然、むしろいないのにしてますね」
と完全に思い出話に花を咲かせている二人にリズは
若干困惑しながら声を掛ける。
「師匠、魔王様本題に入っていただいても?」
「あーすまんつい、な?」
「私もやってしまった、さて今日からお前にはこの武器
全てを扱えるようになって貰う」
「全部をですか?」
「そうだ、俺も無茶だといたんだけどなぁ」
「私的にはお前ならばできるとそう思ったから」
という魔王の言葉にリズは少しだけ考えつつも
頷くと剣の前へと立った。
「分かりました、まずはこの剣からですよね?」
「ああ、その剣に触ればすぐにでも・・・」
「よいしょ」
とクロムが言い切る前にリズは迷いなくその剣を抜いた。
それに対しクロムが何かを言おうとするが
次の瞬間にはリズの視界には戦場が写った。
「・・・ここはどこですか?」
とリズがそう呟いて辺りを見渡すと少し離れたところに
丘がありそこに誰かが立っていた。
リズがその人影に近づくと不意に人影がリズの方を振り向いた。
それは銀色の短い髪に水色の瞳にスノークリスタルの模様が
浮き出た黒い鎧に身を包んだ女性だった。
「ほう、また新たな黒騎士が生まれる時代となりえたか
本当に時の流れとは早いものよな」
「あの、」
「なに、みなまで言うでないむしろ我を最初の盟友に選ぶとは
なかなか見どころが・・・」
「残念ながらリズの最初の盟友は私」
とその場に声が響く。
気づけばリズの横に少女が立っていた。
その少女は青い髪に青い瞳と青に包まれた少女だった。
その少女を見た途端に女性の方は疑問を浮かべ問いかけた。
「なぜ貴様が私の空間にいるリタ」
「何故も何も契約者の傍にいるのは当然の事だと
貴方も理解しているのではないですか?エリ」
とリタと呼ばれた少女が答えるとそれに対して
エリと呼ばれた女性はリズの事を睨みつける。
「どういう事か説明してもらおうか、今代の黒騎士」
「魔王様の提案により私は貴方を含めた他の七ツの武器と
契約しなければなりません」
「七つ?」
「グラムは封印されてしまったので」
「・・・なるほど、話は分かったが私と契約を果たしたいのであれば
貴様が契約したそのサジタリウスと共に私を打倒してもらおうか」
「え?」
「リズ、それについては後で話しますから今は彼女、
魔剣レーヴァテインとの戦いに集中を」
という少女の言葉にリズは頷くとすぐに隣の少女の名を呼ぶ。
「サジタリウス!」
「はい」
と少女は返事をするとすぐに青い弓へと姿を変えてリズの手元に出現する。
リズはそれを構えて女性、レーヴァテインと向き合う。
「では、私も全力を以て相手をしよう」
というとレーヴァテインは自らの手に剣を出現させるとリズへと
一気に踏み込むのだった。