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英雄の楽して生きよう計画  作者: TEN3
第一歩
8/13

最終試験

 試験最終日。俺は緊張からくる腹痛を我慢しながら、試験会場に向かっていた。周りに何人か同じ受験生が歩いている。その受験生達の顔は真剣そのものだ。当たり前だ。この試験は、人生を左右する物なのだ。


 円形状の天井が筒抜けな大きな建物の中に入る。内装は平たいタイルがありその一段上にはそれを囲むように席――表現するならば、観客席これが正しいだろう――があった。

 最初に比べたら少ないが、沢山の受験生が席に座っていた。俺は流させるように席に座り天空を眺める。

この試験は一番自信があるが最終試験な事もあって一番緊張する。


 すると下のタイルの所に先生らしき老人が入ってくる。その先生は前世で一般的だった魔術師のローブをしており見た感じだが、かなり年を取っているように見えた。後ろには一歩下がって同じローブ姿の若者が付き従っている。


「儂はこの学校で魔術師長をしておるローウェン・ヤクルトだ」


 老人が挨拶をすると同時に会場がざわめく。俺はその騒めきはなんなのかおおよその検討はついていた。原因は、この老人だ。自己紹介にもあった通り魔術師長をしていてその名はこの学校に入学したいと思うなら必ずと言っていいほど耳にする名だ。

 老人な長い白髭を撫でながら周りをギョロギョロと観察する。俺は念のために魔力と気力を最低限溢れ出して他を隠す。

 騒めきがひと段落したと同時にローウェンが話し出す。


「まずはおめでとうと言っておこう。よくぞここまで残った」


 そう言うと肉がほとんどない手でゆっくりと拍手をしだす。遅れて後ろの従者達もゆっくりと拍手をする。

 拍手が止みローウェンが喋り出す。


「この試験は、初級魔法と気力の扱いを見る。決してズルはしないように」


 噂通りの試験内容で俺は安堵する。


「この試験はグループで分ける。昨日の合格通知に自分が何グループか書いてあっただろう。まさか、忘れたなどと言う愚者は居ないだろう?」


 ローウェンは睨みながら周りを見渡す。俺は大丈夫だ。ちゃんと合格を知った後隅々まで読んだからな。俺は第三グループだ。

 ローウェンは周りを見てそんな者居ないと悟ったのか満足気な顔をする。


「よし。では、第一グループローウェンの下まで来い」


 すると何人か席を立ちゾロゾロと向かっていく。俺は限界まで息と緊張を一緒に吐き出し思いっきり新しい空気を吸う。最終試験だ。



 第二グループの終盤に近づいてきた。何人かが試験をしてるのを見ていて気づいた事がある。それは、1500年前と違って質が少し落ちている気がする。俺はそう考えたがすぐに答えを見つけた。この時代は俺がいた頃と違って命がとてつもなく重い。攻略者をこんなに大事に育てる環境なんて一つもなかった。だから昔は、才能がない奴はすぐに死んで才能がある奴は実戦で学びどんどん強くなっていた。つまり昔は量より質だったが今は、質より量ということか。


 俺は席を立ち下まで降りる。すると丁度よく第三グループが呼ばれて俺達は試験に向かう。


 自分でもこんなに緊張してるとは思えないほど緊張している。元英雄が情けないな。俺は自嘲する。


 緊張と戦っていると自分の番が呼ばれる。力加減を間違えるなと自分に言い聞かせながら試験官の元まで歩いていく。


「私が言う魔法を使用していきなさい。放出系はあの土壁に当てなさい」


「わかりました」


「よし、始め!」


 俺は言われた初級魔法を機械のように一定の力を保ちながら放っていく。周りから何の反応もないということは失敗してないと思う。

 初級魔法を発現させていく。試験官が始めて魔法の指令を辞め紙に何か書いていく。


「次は気力だ。私が言った部位に気力を集めなさい」


 気力は得意だ。この世界の平均的な力もリサーチ済みだしそれより少し強い力を溢れ出そう。

 俺は「了解です」と一言いい集中する。ここで重要なのは洗礼し過ぎたものは厳禁だということ。少しお粗末じゃなきゃダメなのだ。


 俺は言われた部位に気力を集めていく。周りの反応に意識を集中させながら適当に気力操作をする。


 何の反応も無く無事に試験が終わる。俺は試験官が終わりの合図をすると軽く挨拶をし、立ち去る。


 今すぐ小躍りしたい気持ちを抑え落ち着いている風を装いながらトイレに向かう。

 トイレの個室に入ると気配探知をする。周りに誰も居ない事を知り両手を天に掲げる。両手を勢いよく下ろし両手ガッツポーズを作る。


「ダラァッシャーーー!!ヤッホーーイ!」


 狭い個室の中でもはや暴れてると同然の小躍りをする。今人が見たら完全に変人だろう。だが、許してほしい。何年このために頑張ってきたというのか。何年時間を費やしたというのか。自分で自分を良くやったと褒めてやりたい。

 だが、いつまでもこの余韻に浸っているわけにはいかない。まだ合格したかわからない。もう少し上手くやればよかったと、後悔が生まれるがあれが最善だったと言い聞かす。上手くやり過ぎて前世の二の舞になったら自害しているところだ。

 俺は溢れ出る興奮を無理矢理抑え込み冷静になる。とりあえず他の受験生の魔法でも見るか。



 合格してますように。




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