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ドングリ池と逆さの虹の森の仲間たち

〈このお話に出てくる人物〉

アオイ・・・逆さの虹の森に迷い込んできたニンゲン

レイン・・・歌が上手なコマドリ

クリ・・・・お人好しなキツネ

キュウ・・・食いしん坊なヘビ

ナイト・・・怖がりなクマ

イー・・・・いたずら好きなリス。この名前はアオイが付けたばかり。

シン・・・・暴れん坊なアライグマ


☆最終話、お楽しみください


ドングリ池は休憩場所として止まったどの川よりもきれいでした。

他のコマドリ、キツネ、ヘビ、クマ、ニンゲン、アライグマ、リスの姿がくっきりと映し出されています。

時々、アライグマのシンがパシャパシャ水をかけているときは、池が少しぼやけますが。


「ねえ、ところでドングリ、持ってきてる?」


(あっ・・・ない・・・)


レインの言葉で気が付きました。

そもそも行く途中でドングリの生えている木なんてなかった気がします。


「はい」


クリがまた手の中に入れたのはくりでした。


「くりじゃないよ・・・()()()()じゃないとだめ、シュル」


キュウはそう言うと、アオイの手の中にあるくりをシュルっと食べてしまいました。


「あっ!ボクが一生懸命とったくりだよっ!アオイのために!」


クリが不満げに言いました。

おもてなしするのを誰かが邪魔されるのがクリは好きではないのです。


「どうぞ~」


すごいスピードで走りながら、イーが手の中にドングリを入れました。


「あ、ありがとう・・・」


アオイが感謝を言うと、イーは走るのをピタッと止めました。


「どういたしまして、さ!ドングリを投げて!」


(そうだ・・・)


アオイはドングリ池にドングリを投げました。


(「良い友達ができますように・・・・」)


池はアオイが手を合わせて、お願いを心の中で言っても、何も起きませんでした。


「「「ね、願った?」」」


それもそうです。

みんな、心配になってしまいました。


(なんで、何も起こらないんだろう・・・)


でも誰もがドングリ池が一瞬だけピカリと光ったことに気が付きませんでした。


「これから・・・アオイはどうするの・・・?」


レインはアオイに訊きました。


(そうだ・・・そのことを忘れてた・・・)


目指していたドングリ池が見つかり、やりたいことを終えてしまったので、アオイはもう帰らなければなりません。いつまでもここにいれるわけではないのです。


(また、ここに来たいな・・・)


「私、家に帰る」


「ええっ!」


「もっといてよ」


「久しぶりのニンゲンだから~」


「アオイちゃんにも家がある、シュル」


みんなが口々に言いました。


「でも」


さっきま走りまわっていたはずのシンが言いました。


「どうやって帰るの?虹とここでは結構な長さがあるわよ?」


レインとシンが思っていることは同じだったらしく、代わりにレインが言ったのに、シンは悔しそうでした。


(確かに・・・・)


「さっき、アオイがすごい力を見せたじゃん、その力を使えばひとっとびだよ」


イーがチチチチと音を立てながら、なぜだか余ってしまったドングリを歯で食べました。


(すごい力って・・・)


「私なんにもやってないよ、その力がどうやってできるのかも分からないのに・・・」


「いいえ、アオイはあたしたちのこと、信じて楽しいことを浮かべたじゃない・・・

 この逆さの虹の森は感情が非常に表れやすい森なの」


レインがアオイが見えるようにあえて、ナイトの頭の上に乗っかりました。


「か、感情?」


「そうだなあ、喜ぶ、楽しい、嬉しい、悲しい、怖い、怒る・・・とか?

 オレは『おこる』が多いけど」


(そういえば・・・)


アオイは怖さの森で「怖い」と言っただけでもっと怖くなったこと、反対に怖さの森でレインの歌を聞いて

楽しくなると、森が明るくなったこと、オンボロ橋で信じて明るさの森についたこと、明るさの森で歌を歌ってもっと森が明るくなったこと・・・全てを思い浮かべました。


(本当だ・・・)


「じゃあ、今もできるのかな?」


アオイは手を広げました。絵本で手を広げて空を飛んだというお話を思い出したからです。


「うん、多分」


クリは頭の毛を毛づくろい、整えながら言いました。


「じゃあ、ボクたち・・・お別れなの?」


「ナイト!お別れじゃないわよ、また会えるわよ」


「また来てよ、今度は焼いた魚を持ってくるから」


「で、嫌だったらオラが食べる、シュル」


「ええ?おもてなしのための魚だって・・キュウのお腹の中に入れる魚じゃないって」


「これ、大事にして・・これを見てオイラたちを思い出してね」


リスのイーがアオイの手の中に入れたのは大きなドングリと小さなドングリでした。


「ああっ!ボクのあげたくりも大事にしてね~」


慌ててクリもくりを手の上に置きました。

クリの今日一番の笑顔で。


「また、ドングリ池に来て!オレ、待ってるから」


最後に言ったのはアライグマのシンでした。


(みんなありがとう・・・)


アオイは手を広げ、目を閉じて、飛びました。

またアオイの周りには黄色いオーラができていました。・・・・逆さの虹に負けないくらいとっても明るい光が。

レインが明るい高い声でまた来た時のように歌い始めました。


「♪ハハハハハ ハハハハ

 また来て アオイ

 いつでもね ニンゲンの話をするだけでもいい

 アオイの笑顔をまた見せにおいで

 さよなら また来て 逆さの虹の森より

 ハハハハ ハハハハハ♪」_____



                      ☆★☆★


「あ~あ、行っちゃった」


クリが面白くなさそうに丸くなりました。キツネのクリが丸くなる姿はまるで黄色い毛皮です。


「しばらくここから出られないね・・・・」


イーは悲しそうで嬉しそうな声を出しました。そのリスが見ているのはクリ・・・。


「は?やめてよ、出られない間ボクにいたずらしかけるとか」


そんなアオイがいなくなりちょっと元気を取り戻りたクリとイーですが、

レインは歌を歌い終わり、ナイトは涙を流し、キュウはドングリ池をじっと見ながら、悲しんでいました。

ただ、シンだけは、久しぶりの我が家に戻れることが嬉しいのかまたドングリ池の周りを走り回っていました。

そんな時、一つの黄色い光がクリの頭に降りました。

その光は少しずつ人の形を現し始めました。

しかし、クリは気が付かずに眠ろうとしています。


「あら!久しぶりね、アンダー」


レインがいち早く、気が付きます。


「アンダー?それは誰?」


「妖精よ、今クリの頭に乗ってる」


レインとナイトがそんなやり取りをしているうちに、眠りかけたクリが


「えっ?何!」


と反応しました。


妖精のアンダーは全身黄色。髪も、肌も、羽も、服も、靴も、目も、顔もすべてが黄色い妖精なのです。


「なんでドングリ池から出てきたの?」


レインがクリに近づきました。


「いやあ、あの子ねえ・・・『良い友達ができますように』って願っていたけど・・もうできてるのに

ねえ・・・もう叶ったことを願っているようなものなのよ・・・」


「でも、願ったことはヒミツなんでしょ?それは妖精のおきて破りじゃないの?」


レインが訊きました。


「もしかして、アオイのすごい黄色い光って・・妖精なの?」


「まあね」


アンダーはキュウの質問にもレインの質問にも答えました・・・・。


                        ☆★☆★


(はっ!)


アオイが気が付くと、あの滝、池に離れた平地に座り込んでいました。

アオイの手には、ドングリとくりが握られていました。


(やっぱり本当だったんだ・・・良かった・・)


アオイは立ち上がって山を下り始めました。


最後まで読んでいただき、

ありがとうございます!!

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