オンボロ橋と明るさの森
「私、そんなニンゲンじゃないよ?!」
「でもニンゲンはすごい力を持ってるって」
アライグマ、シンが言いました。
「私はドングリ池に行って、願い事をかなえたいだけなの」
「それなら、オレも行くよ」
シンはどうぞ行ってください、と言うように、オンボロ橋から体をどけました。
オンボロ橋は名前の通り、とてもボロボロでした。
森と森をつないでいるのですがなんとか、ギリギリ・・・のような感じでした。
橋の板はもう少しではがれそうです。
アオイは唇をかみしめ、
(よし・・・ここを渡ったらドングリ池なんだ・・!)
と、思いながらゆっくり手すりを持ち、歩き始めました。
「がんばれ、アオイ!」
森の仲間たちが応援します。
オンボロ橋は踏むたびにギィ・・・ギィ・・・と音を立てます。
しかも、下を見ると、結構な高さにあることが分かりました。
(下を見ちゃダメ・・・)
ゆっくりゆっくり・・・。
しかしアオイは下を見ないせいで、一枚板がはがれていることに気が付きませんでした。
「うわあああ」
アオイは慌てて、手をしっかりにぎりました。
「アオイっ!」
みかねたイーが橋の手すりに乗り、走りました。
助けたかったのです。
しかし、オンボロ橋ももう年。イーとアオイの手が右の手すりにある中、反対の左側が明るさの森と、怖さの森から引きはがされました。
「きゃああああ」
これはさすがにレインもびっくりして空を飛びました。
パニックになったナイトは走り回り、その隣にいたシンもパニックで爪を立てて走り回りました。
キュウはシンを慌てて止め、クリはショックで口が大きく開いてしまいました。
イーと、アオイはかたむく形になりました。
「今こそ出番よ・・・ヒュウ~」
レインは羽のついた手で口笛を吹きました。
そうすると、たくさんのコマドリが集まってきて、アオイを包み込みました。
(もうダメだ・・・)
アオイはコマドリの存在には気が付きましたが、今回ばかりは持ち上がらないことに気が付きました。
そんなとき、レインがまるでアオイの心を読み取ったかのように言ったのです。
「アオイ・・あきらめちゃダメよ・・・私たちを信じて・・・!楽しいことを浮かべて・・!」
(楽しいこと・・・・)
アオイは目を閉じました。
(私の楽しいことは・・・・)
__「♪ハハハハハ ハハハハ
怖さの森は怖いけれど
楽しいことを浮かべて楽しくしようよ
そしたらオンボロ橋までひとっとび!
ハハハハ ハハハハ♪」
レインの優しい子守歌のような歌声がアオイの頭をよぎりました。
(レインたちを信じなきゃ・・・・コマドリが助けてくれたんだもの・・・)
アオイの周りに黄色い光、オーラが輝き始めました・・。
「うわあ」
それは誰もが驚く、きれいな光でした。
アオイはそのオーラと、コマドリによって助けられました。
☆★☆★
「オラたちはどうすればいいの?」
キュウがそう言いました。
アオイとレインたちはいいとして、他のイー、キュウ、クリ、シン、ナイトはどうすればいいのでしょうか
まず、レインたち、コマドリは手すりにつかまっているイーを助けました。
レインは残りの四人には「飛んで!」と言いました。
「でも・・・落っこちるでしょう!」
「大丈夫、ニンゲンの力はすごいから」
びくびくする、ナイトにレインはプカプカ飛びながら言いました。
それを信用したクリは森から森へ飛びました。
・・・・しかしやはり届かず、落っこちました・・・・
と思っていると、クリの周りにアオイのような黄色いバリアが出来て、ふわりと明るさの森に降りれました。
他のキュウ、シン、ナイトもそうでした。
「まさか・・・明るさの森に着くなんて・・・」
「信じられない・・・!」
みんなびっくりしてアオイを見ました。
(信じられないのは・・・私も・・・)
「さ、ここからは分かってる道だから、案内するよ」
「・・・・え?」
みんなはしょうがなくシンについていくことにしました。
明るさの森は怖さの森よりもずっと明るくてきれいな場所でした。
木は左右に生えて、所々にきれいな川・・・、そして青空で、光が木の間から差し込んでくる・・・。
少し少し、川で休憩をして、その水を飲みました。
アオイはずっとなにも飲んでいませんでしたから、いつもの水より、ここの森の水の方が美味しく感じました。
アオイたちはずっとごきげんでずっと歌を歌っていました。
「♪ドングリ池を目指そうよ
とってもきれいなこの場所で
どうしてここに着いたかって?
それはアオイがすごい力を出したから
嬉しいね 嬉しいよ
明るさの森へ出かけよう!♪」
(恥ずかしいな・・・。)
「ここだよ」
シンが言った言葉で目の前の池がドングリ池だと、みんな、思いました。
シンはその後、池をすさまじい速さで走り、「やった、やった」と喜びました。
どうやら住み家を回っているようです。
イーは「シンに負けたくない」とシンと一緒に走り出しました。
(ここか・・・!やっと着いた・・・!)