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根っこ広場とアライグマ

「アオイはなんでここに来たの?」


リスがクリのことを気にせずに、アオイに話しかけました。


「・・・ドングリ池に行きたいの」


「ドングリ池っ?!」


リスはなんだか、慌ただしくなりました。


「ドングリ池・・・って、あの伝説の明るさの森にある・・?」


(そうなの?)


「伝説って大げさ、シュル」


「そうだよ、毎年一回だけ行ってるじゃない」


レインが後ろを向いて、言いました。

そうしているうちに、もう根っこ広場の真ん中をみんな歩いていました。

今、この季節は根っこ広場にたくさんくりが落ちているもんですから、キュウはまるで飲み込むようにくりを食べていきました。

リスもキュウを見習って、二本の歯でくりをガリガリと食べていきます。


(リスが食べるのはドングリだけじゃないんだ・・・)


アオイがそう思っているうちに、アオイはあることに気が付きました。


「リスさん」


「ん?」


ちょうどリスは四個目のくりを食べ始めたところで、口の中にまだ入っているようでした。

口を何とか膨らませて答えられるようにしました。


「みんな、名前があるけど、リスさんは名前、なんていうの・・?」


アオイがそんな質問をしたとたんに、みんな暗い顔になりました。


(私が言ったこと、なんかよくなかったかしら・・・)


「・・・・・な、ないんだ」


「ない?」


「小さいころ、お母さんとお父さんとはぐれて名前、付けてもらってないんだ・・・」


(それは・・・)


リスはきっと悲しい思いをしたに違いありません。


(お母さんとお父さんにはぐれるってどんな気持ちなんだろう・・・)


アオイはそれを考えることができませんでした。

「独りぼっち」と思ったことがたくさんあるでしょう・・・。


「・・・・じゃあ、名前、私が付けてあげるよ」


「アオイが?」


リスはくりを飲み込みながら言いました。


「そう・・・・・・・う~ん・・・名前は・・・「イー」!イーちゃん」


「リスは男だけど?」


クリはまたいらないことを言いました。アオイももうこのやり取りには慣れてきました。


「イー・・・か・・いいね、気に入った」


リスのイーはアオイの肩に乗っかって、飛び降りました。イーは喜んでいるのです。


「アオイとみんなが出会った記念っシュル!・・・シュル!」


キュウは慌てて言ってしまったのでしゃっくりを起こしてしまいました。

それがまたすごく面白いものですから、レイン・ナイト・イー・クリ・アオイで大笑いしました。

その笑いでこの怖さの森が、とても明るくなった気がしました・・・。                                         

                        ☆★☆★                


みんなで大笑いをして、根っこ広場を抜けることができました。

もうすぐ、オンボロ橋です。

もう見えてきました。


「うわあ、ここまで抜けたの初めてかも」


レインがナイトの頭の上に乗り、揺られながら言いました。


「でも変な奴がオンボロ橋の前にウロウロしてるよ」


イーの言う通りでした。

オンボロ橋の前に赤い体をした動物が行ったり来たりを繰り返しています。


「?」


これはもうみんなで首をかしげました。


(みんな、知らないこなのかな・・・・?)


そうしているうちに、あっちもこちらの方に気が付きました。


「誰・・・?もしかしてニンゲン?」


誰、と言われたのでしょうがありません。

一人ずつ紹介していきました。


「あたしはコマドリのレイン」


「ボクはキツネのクリ」


「オラはヘビのキュウ」


「ボクはクマのナイト」


「オイラはリスのイー」


「あっ・・・私はニンゲン?・・・のアオイ」


紹介し終わると、アオイの言葉だけを聞いていたようで、


「ニンゲン?ニンゲン!ニンゲン!」


と興奮しながら、爪を立てて走り回りました。


そのため、レインの足と、クリの毛、ナイトの手、アオイの足首に怪我をさせることになりました。

ただ、イーだけは、暴れているときにすっと逃げたので一つも怪我をしませんでした。

キュウはみんなの怪我したところを次々にかぶりつき、直していきました。


「ありがと」


みんなキュウに感謝をしました。


「あ、あなたは誰なの?」


「オレは、アライグマのシンだよ」


しかし怪我を直してもらって普通にしているのはアオイだけで、レイン、クリ、キュウ、イーはシンを睨んで、怒っていました。

相変わらず、ナイトだけはシンにびくびくしていました。


「どうして、ウロウロしてたの?シン」


「どうしてって・・・・・もともと、オレはドングリ池に住んでいたアライグマだったんだ」


(ドングリ池?!)


これはすごい偶然です。アオイの耳がしっかり反応しました。


「まあ、周辺の動物にも少し『暴れん坊』って嫌われていたけどな・・・」


アオイはなぜか、みんなを見ました。

やっぱりみんなの様子は変わりません。


「でも年に一度開かれる、明るさの森と怖さの森でのお開きで・・・迷子になってしまって・・・

気が付いたら、ここにいたんだ。ニンゲンなら、それができるから・・」


(え・・・?私、そんなことできないよ・・・)


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