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みんなの楽しいこととリス

「そう、楽しいこと!」


クリが明るく言いました。


「例えば・・・」


「オラはたくさん食べること!」


「ボクはおもてなしをしているときかな・・・」


キュウはシュルと音を立てながら。クリは恥ずかしそうにしながら。

一人一人、楽しいことを言い始めました。

「ボ、ボクはみんなが一緒にいてくれる時」


ナイトは茶色い体を立たせて、頭をポリポリかきました。


「あたしは歌を歌っているとき!」


レインはふいに飛び、歌い始めました。


「♪ハハハハハ ハハハハ

 怖さの森は怖いけれど

 楽しいことを浮かべて楽しくしようよ

 そしたらオンボロ橋までひとっとび!

 ハハハハ ハハハハ♪」


みんなは手拍子をして、レインが歌い終わると、拍手になりました。

レインは近くの木の枝に降りて、「ありがとう、ありがとう」と言って、一人一人に頭を下ろしました。


(なんだか、怖くなくなった・・)


アオイはレインの歌を聞いているうちに、目の前が明るくなった気がしました。

目の前の黒い霧が薄くなり、しっかりみんなの顔が見えるようになりましたし、上にのびる木々が低くなって、紫色の空に黄色く光り輝く、星が見えたような気がするのです。


(そうだよ、一人じゃない)


コマドリのレインがいて、キツネのクリがいて、ヘビのキュウがいて、クマのナイトがいて・・・・。


(このどこが一人なんだろう・・・)


「ほら、怖くなくなったでしょう?」


レインがまた、地面に足をつけながら言いました。


「さあ、行こう!もう少しでオンボロ橋だから!」


クリが張り切った声で言いました。


「もう、クリったら。あたしがリーダーなんだから、それあたしに言わせてよ」


「え?いつ、リーダー決めたっけ?」


「だんだんキュウに似てきてるよ、すぐ忘れるところとか」


「でもレインは逆さの虹の見回りしてるだけだよ、そのどこがリーダー?」


(クリとレイン、なんか言い合いしてる・・・)


アオイたちはまた進み始めました。

前から、レイン、クリ、アオイ、ナイト、キュウという順番で。

アオイがまた怖くなったり、ナイトが後ろで怖くなったりしないため。

さっきよりもしっかりと道が見えてきたので、手探り手探りする必要はなくなりました。

みんな、晴れやかな笑顔で。


「もうすぐ、根っこ広場だよ」


先頭でレインが言いました。そのついでに、後ろをむいてみんなを見ました。


「根っこ広場・・・って?」


「たくさん根っこが広がってる広場のこと、シュル」


「嘘ついた人は根っこにからまって、抜け出せないんだって」


「でもそんなところ、見たことないから、噂だけかも」


(ふうん、嘘か・・・)


アオイは一度も嘘をついたことがないので心配はありませんでした。


「あっ、くりだ」


クリが言い出しました。

ただくりが落ちているのを気が付いているのはクリだけです。


「アオイにプレゼントしよっと」


クリがくりを拾うとした直後、キュキュっと音がしました。


「ああっ!」


あっという間にクリは檻の中に入ってしまいました。


「うわああああああああ!」


クリよりも、後ろにいたナイトの方が怖がってしまい、また一目散に木に隠れてしまいました。


「チチチチ!」


ふいに、木の枝から、なんだか楽しそうに笑っている、リスが出てきました。


(今度はリス・・・?)


「また?やめてよ、いたずらは!」


クリが退屈そうに檻の中から言いました。

今、楽しそうに笑顔を見せているのはあのリスだけでした。

リスはとても目に追いつけない速さで降りてきました。


(速い・・・!)


「やったあ、大成功」


「『大成功』じゃないよ・・・なんでいつもボクばっかり・・・」


「あれ?ここでは見かけない顔だけど・・・・もしかしてニンゲン?」


リスはクリの質問には答えないで、アオイを見ました。


「そう・・・アオイって言うんだ、シュル」


「あ、アオイです・・・」


静かだったキュウに急に言われ、少しアオイは戸惑いました。

言いながらも、アオイはしゃがみこんでキツネの大きさにすっぽりはまる、檻からクリを出してあげました。


「怖い・・・リスだああああ!リスだああああ!」


しかし一人だけ、ナイトはまだパニックを起こして、木々の間から間へ走っていました。

クマのナイトの叫び声は、レインの声よりも低く、とても大きく聞こえるものでした。


「大丈夫だって・・・いつも一緒に遊んでるでしょう?」


レインはナイトをなだめながら、ナイトの頭に下りました。


「なんでボクばっかりなんだよお・・・ナイトに仕掛けてよ」


「そうだけど・・・見てよ、ナイトの方を」


レインはナイトの上に乗っかり、一生懸命なだめていました。


「ナイトはさあ、面白いけど、リアクションが大きすぎて手に負えないんだよね」


「それが楽しいんじゃないの?リスは」


「そうだけど・・・レインがさ、いるからすぐ気が付いちゃうんだよね・・ほら、今ナイトの毛のゴミ取った!」


リスはチチチチと、音を立てながら、ナイトの方を指さしました。

レインは黄色いくちばしで小さなごみをとり、根っこ広場に捨てたところでした。


「いいな~、ボクも毛づくろいしてほしいな~」


クリは猫のように黄色いフワフワの毛を毛づくろいし始めました。



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