アオイと滝
(ここね・・・)
おだやかなポカポカ太陽の下、地図を片手に全くおだやかではない、滝のそばに立っている少女がいました。
ゴーゴー滝はただ早く上から下へと水が流れています。
そこは至って普通なのです。
(でも、ここにドングリ池があるって本当かしら・・)
アオイ、という少女は疑うように地図をじっくり見ました。
☆★☆★☆
「ねえ、知ってる?
・・・なんかね、この近くにドングリを投げ込むと願いが叶う・・・っていうドングリ池があるらしいよ?」
そう言いだしたのは、クラスでも有名な噂好きの女子でした。
その子がインチキなことも言うことをアオイは知っていましたが、興味を持ちました。
(ドングリ池・・・?願いが叶うなら、行ってみたい!)
「ねえ、詳しく教えてよ」
そう言って、アオイに渡されたのがこの地図なのです。
(これ、本当はインチキなのかしら・・・?)
滝の真下には連結している円い小さな池があります。その池にマシュマロのように、大きな石がポツポツ
浮かんでいます。
(まあ、突っ立てるだけでは何も始まらないし・・・渡ってみよう)
「うわあ、うわあ」
石を踏み込むたびについ、アオイは言ってしまいました。
大きな石はとてもグラグラして、バランスがとりにくいのです。
ただ、最後の石だけはしっかり岩のように固定されていました。今度はつるつるで滑りそうになりました。
(こうやって滝に近づいてみたけど・・・・もしかしたら後ろが洞窟になっていて、ドングリ池があるのかも)
アオイは滝からひょっこり顔を出して見るようにしてみましたが、中はとても暗くなっていて、見えませんでした。
また、池から出ようと思いましたが、小さな池は案外広く、平地と今アオイがいる場所では飛び降りるにしても無理がありました。
(どうしてもドングリ池に行きたい・・・そうだ、滝に顔を突っ込めば、見えるかしら・・・?)
しかし、顔に水を突っ込むのにアオイは抵抗があったので試しに代わりに手首を滝の中に入れました。
その瞬間、アオイが滝の力強さを感じる前に、滝がピカリと光りました。
しかしそれは一瞬の出来事で、アオイが目を閉じるよりも、収まりが早いものでした。
そして、誰かが滝の中からアオイの手を引っ張り込みました。
それは小さなアオイがとても耐えられる力ではありません。
「わっ」
アオイは体ごと、滝の中に吸い込まれるように入っていきました。いや、誰かが入らせました。
その拍子に地図を離してしまい、飛んで行ってしまいました。
アオイは地図の飛んだ方向を見ていました。
(私、どうやってドングリ池を探さなければいけないの・・・?)
次第にアオイの視界は水色に染まっていきました・・・。