第54話 願えど心は届かず
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その日以来、ミカはアレクを避けるようになった。
昼間は自分の部屋に閉じ篭って過ごし、大広間やフロントですれ違っても極力目を合わせなかった。
日を追う毎に募っていく淋しさは、眠ることで紛らわせた。
これで良かったのだと、自分に言い聞かせて。
彼女は、独りでいることを頑なに選び続けたのだった。
アレクは、それを最初はミカの気紛れくらいにしか考えていなかった。
すぐにいつものように目を合わせて話をしてくれるだろう、そう思っていた。
しかし、それが何日も続くと、流石に何かが変だと感じるようになった。
気が付けば、笑うこともしなくなった彼女。話しかけても無視されて、一人で部屋に引き篭ってばかり。
気紛れにしては、これは流石におかしくはないか?
思い切って真意を問うてみるべきか、それとも彼女の方から来てくれるまでそっとしておくべきか──
一人でぐるぐると考えるようになって、七日が過ぎた。
そして、遂に。
我慢ができなくなったアレクは、ミカの本心を訊くべく彼女の部屋へと向かったのだった。
コン、コン。
扉を叩く音に気が付き、ミカはベッドに伏せていた顔を上げた。
コン、コン。
「ミカさん。中にいらっしゃいますよね?」
「……アレク」
ミカはベッドから降りて、閉じた扉に手を伸ばしかけて──
ふるふる、と首を振り、手を下ろした。
「お話ししたいことがあります。開けても宜しいですか?」
「……帰って」
ミカは顔を伏せて、言った。
「帰って!」
「……ミカさん?」
扉の向こうに立つアレクの声が、困惑の色を帯びた。
「……僕、何か貴女の気に障るようなことをしてしまったのでしょうか? 分からないのです、貴女に避けられている理由が」
「お願い、帰って!」
アレクの言葉を遮るように、ミカは叫んだ。
両手で頭を抱えて、わなわなと振りながら身を縮める。
「私は、アレクの傍にいちゃいけないの! だから帰って! 私に近付かないで!」
「……意味が分からないです。ミカさん、貴女は──」
「帰って! お願いだから!」
どん、と拳で扉を力一杯殴りつけるミカ。
沈黙が横たわる。
やがて、ひたひたと扉の前から足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。
アレクが、ミカの言葉を尊重して帰っていったのだ。
ミカはぽろぽろと涙を零しながら、その場にぺたんと座り込んだ。
「……アレク……」
届くことのない言葉を、扉に向かって呟く。
「……淋しいよ……!」




