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ホテル・ミラージュで休息を  作者: 高柳神羅
54/74

第54話 願えど心は届かず

評価を頂きました。ありがとうございます!

 その日以来、ミカはアレクを避けるようになった。

 昼間は自分の部屋に閉じ篭って過ごし、大広間やフロントですれ違っても極力目を合わせなかった。

 日を追う毎に募っていく淋しさは、眠ることで紛らわせた。

 これで良かったのだと、自分に言い聞かせて。

 彼女は、独りでいることを頑なに選び続けたのだった。

 アレクは、それを最初はミカの気紛れくらいにしか考えていなかった。

 すぐにいつものように目を合わせて話をしてくれるだろう、そう思っていた。

 しかし、それが何日も続くと、流石に何かが変だと感じるようになった。

 気が付けば、笑うこともしなくなった彼女。話しかけても無視されて、一人で部屋に引き篭ってばかり。

 気紛れにしては、これは流石におかしくはないか?

 思い切って真意を問うてみるべきか、それとも彼女の方から来てくれるまでそっとしておくべきか──

 一人でぐるぐると考えるようになって、七日が過ぎた。

 そして、遂に。

 我慢ができなくなったアレクは、ミカの本心を訊くべく彼女の部屋へと向かったのだった。


 コン、コン。

 扉を叩く音に気が付き、ミカはベッドに伏せていた顔を上げた。

 コン、コン。

「ミカさん。中にいらっしゃいますよね?」

「……アレク」

 ミカはベッドから降りて、閉じた扉に手を伸ばしかけて──

 ふるふる、と首を振り、手を下ろした。

「お話ししたいことがあります。開けても宜しいですか?」

「……帰って」

 ミカは顔を伏せて、言った。

「帰って!」

「……ミカさん?」

 扉の向こうに立つアレクの声が、困惑の色を帯びた。

「……僕、何か貴女の気に障るようなことをしてしまったのでしょうか? 分からないのです、貴女に避けられている理由が」

「お願い、帰って!」

 アレクの言葉を遮るように、ミカは叫んだ。

 両手で頭を抱えて、わなわなと振りながら身を縮める。

「私は、アレクの傍にいちゃいけないの! だから帰って! 私に近付かないで!」

「……意味が分からないです。ミカさん、貴女は──」

「帰って! お願いだから!」

 どん、と拳で扉を力一杯殴りつけるミカ。

 沈黙が横たわる。

 やがて、ひたひたと扉の前から足音が遠ざかっていくのが聞こえてきた。

 アレクが、ミカの言葉を尊重して帰っていったのだ。

 ミカはぽろぽろと涙を零しながら、その場にぺたんと座り込んだ。

「……アレク……」

 届くことのない言葉を、扉に向かって呟く。

「……淋しいよ……!」

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