第28話 いつものクッキーを
以前にミカがリルディアと訪れたクッキー専門店。
そこに、彼女たちは訪れていた。
変わらぬ様子で営業している店。その中に入り、店内に漂うクッキーの香りを嗅いでアレクは傍らのミカに言う。
「此処は僕のお気に入りの店なんです。休日には必ず此処に買い物に来るんですよ」
「……知ってる。リルディアが教えてくれたから」
店主は相変わらず頭と胴体が別個になった状態で、店番とクッキー作りを同時にこなしている。
彼はアレクの顔を見ると、親しげに彼に話しかけてきた。
「おや、アレクサンダー君。今日は休日なのかい?」
「はい。いつものを買いに来ました」
「いつも御贔屓に。君は本当に美味しそうにうちのクッキーを食べてくれるから作り甲斐があるよ」
店主はアレクと笑みを交わし合い、アレクの隣にいるミカに視線を移した。
「おや。お嬢さんはこの前の……」
ミカはぺこりと頭を下げた。
店主はアレクとミカを見比べて、ほうと声を漏らす。
「デートかい? 若いって羨ましいね」
「ええ、まあ」
しれっと答えるアレクに、ミカはどきりとした。
アレクは……これをデートだって思ってるの? 私をそういう存在として見てくれているの?
急に、心臓がどきどきいい始めた。
先程彼のスプーンでパフェを食べたことと手を繋いだことを思い出し、恥ずかしくなって俯くのだった。
店の奥から姿を現した店主の体が、手にした袋にクッキーを次々と詰めていく。
全種類を少しずつ詰めてぱんぱんになった袋の口を閉じ、リボンで結って、アレクに手渡した。
「はい、スペシャルセットだよ。今回もじっくり味わっておくれ」
「ありがとうございます」
アレクは代金を支払って受け取った袋を、ミカへと手渡した。
「この近くに日光浴をするに丁度良い川原があるんです。そこで頂きましょうか」
「……う、うん」
ミカは落とさないように袋をしっかりと持った。
売られているクッキーの全種類が詰まっているというだけあって、袋はずっしりとしていた。
「それでは、また休日にお邪魔します」
「気を付けて行くんだよ」
手を振る店主に見送られ、二人は店を後にした。
アレクが言う川原は、表通りから横道に入って少し行ったところにある。
そこを目指して、二人は並んで歩いていった。




