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第40話 魔王軍総攻撃

 十月十三日以降、王国軍の記録には「魔王軍総攻撃」という言葉が頻出してくる。この日以降の魔王軍の攻撃は2度のセダンのように王国軍に対して大きな打撃を与えるようになった。それも王国第五軍より以北のほぼ全ての部隊がその被害者となった。


 最北の前線を守る海兵隊ケルクヴィル軍は、戦闘初日(魔王軍による工業都市ケルクヴィルへの攻撃は十月九日から開始されている)では兵数15万人を数える大部隊だったが、相次ぐ戦闘で九日の時点で13万人、十日には11万人にまで減った。彼らの正面の魔王軍は12万人だと考えられた。

 ケルクヴィル軍の損害が増えた理由の一つは、街が川を挟んで位置していた事にある。そのため、ケルクヴィル軍は街を守るために魔王軍との野戦を行った。魔王軍の野戦での強さというのはセダンによって立証されており、ケルクヴィル東方での戦闘も魔王軍は圧倒的であった。

 海兵連隊は出来る限り地平を利用し、敵から200レヒの位置まで近づいて単発銃マスケットを一斉射撃し、突撃した。魔王軍は距離を取るべく撤退するが、海兵隊の連中は海の男特有の気質によって……つまり全力で死に物狂いで、魔王軍を追いかけて白兵戦をした。

 白兵戦でも魔王軍が優勢だった場合は、一つ後ろの海兵連隊が味方もろとも射撃し続けた。白兵戦をやっていた海兵はその間に味方の陣地に逃げ込んだ。


 陣地防衛線でも、海兵隊は変わらなかった。陣地の多くが戦闘初日にして、瞬く間に奪われた。それに対してケルクヴィル軍はとにかく大量の兵士を投入して奪い返した。船乗りたちは野を駆け、奪われた陣地に突撃し、魔王軍と壮絶な白兵戦を繰り広げたのだ。



 第一軍から第三軍はケルクヴィルと王都までの防衛線を任されていた。彼らの正面の魔王軍は多く見積もっても19万である。

 彼らには河川防衛陣地があったが、魔王軍は渡河戦闘においても強力無比だった。

 砲煙によって観測した結果、王都ケルクヴィル間の魔王軍が保有する野戦砲は約1000門とされた。その十分な火力を陣地に投射しつつ、歩兵を小型のカッターによって対岸に渡した。

 フレマルの報告では、魔王軍の砲弾には信管が用いられていた。後に王国初代砲兵総監となるフレマルは、魔王軍の砲について『砲弾の重さは王国と変わらないが射程距離は3ディスタを超え、その砲弾は着弾と同時に爆発する。極めて優秀。王国軍も似たものを作るべきである。』と評した。

 この時点で多銃身斉発砲ミトラィユーズを王国軍は多く保有していた。この新兵器の火力は凄まじく、毎分130〜150発を放つ事が出来た。ある砲兵中隊は、これを用いて敵の大隊の攻撃を完全に食い止めた。



 王国第六、七、八軍の正面には魔王軍はおらず、完全に遊兵となっていた。どの軍からも前進や、ほかの戦線に救援に向かう提案が野戦軍司令部になされていた。特に第三軍のバルションは、この3つの軍からの救援を熱望していた。だが、ジョフルは動かさなかった。不明の31万レ・ブルイヤール・ド・ラ・ゲールの動きが全く掴めないため、むやみに兵を動かす事が出来なかったのである。

 魔王軍の攻撃の勢いは全く衰えなかったが、前線が動く事はほとんどなかった。ケルクヴィルでは常に一進一退の野戦が繰り広げられていたが、二十日に市街戦に突入して以降は前線が1日に50レヒ以上動く事はなかった。

 河川防衛線では、魔王軍の最も大きい占領地域でも東西に1ディスタ、南北に5ディスタであり、これも3日の後に反撃を受けて消滅した。

 双方が大量の犠牲を払いながらも前線が動かないという事は、王国軍にとっての成功であった。これまで寡兵の魔王軍に大敗を喫し続けてきた王国軍にとっては、同数の被害を敵に与える事が出来ただけでも喜ばしい事であった。

 後方では徴兵された兵士によって部隊が編成されてすぐさま戦闘に加わった。前線部隊に補充兵として加わる者もあった。


 冬が到来し、雪が降り積もってもなお、魔王軍は戦線を突破することができなかった。








 雪の降る中を2騎は進んで行く。


「この辺りはまだ雪は積もらないんだな」


「ええ、あと4日もすれば大雪になると村の長老は話していました」


 ペルダンと迎えの第九軍司令部付参謀ポール・オーバン大尉である。彼らは西の第九軍司令部に向かう。

 ペルダンは馬車を利用して王都から4日かけて

 に到着し、そこからは騎馬で移動した。途中、迎えのオーバン大尉と合流し、10月20日にアキテーヌ=ボルドーの第九軍司令部に到着した。


 司令部の設備は貴族の邸宅に置かれていた。王国軍の軍、軍団司令部は多くがシャトーに置かれた。敷地が広く、会議室や参謀の執務室に適した広い部屋が多くある上、多くの場合厩舎も併設され伝令騎兵を待機させておく事にも適していた。


 ペルダンの役目は私の手紙をアンブールとリーズに直接渡す事と戦地の視察だったが、肝心の戦闘は既に終わった後である。司令部に到着したペルダンは事後処理に追われる参謀達を尻目に、アンブールのいる部屋に入った。


「久々だな、ペルダン」


「アンブール卿も壮健そうでなにより……」


 アンブールはまず王城と東部戦線の様子を聞いた。ペルダンは最低限、防衛戦が成功しつつある事、王都において王国貴族護衛隊と王立親衛隊の対立が起こっている事を告げた。一通り言い終わると、この地での戦闘の様子と現在の状況を聞いた。


「良くはない」


 と第九軍司令官アンブールは言う。






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