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第35話 王立親衛隊

 九月二十三日、予定よりも遅れて「王立親衛隊」の設立が許可された。

 最初の人員、つまり組織の幹部の人選は私に一任された。まず、ペルダンを指名した。王への忠誠が厚く、私が信頼を開けると判断できるのが彼くらいしかいなかったのが、理由である。

 親衛隊は、武装部隊と非武装部隊に分けた。非武装部隊では幼年学校の放課活動を行う。実働部隊は、志願者及び、王国軍の徴兵基準に満たない成人男性から成る。

 非武装部隊は各県都に一個大隊、武装部隊は数に応じて連隊を作り、師団を編成することとした。

 王都と周辺の都市に人員募集の張り紙をしたところ、定数の半分程度にあたる七千余名が集まった。「第一武装王立親衛隊師団」は十月に入ってから編成される事になった。彼らは王国軍の施設を警備し、街の治安維持に努める部隊である。

 一方で、非武装部隊は「王都第一非武装王立親衛隊大隊」がすぐに編成された。これは、あくまで幼年学校の放課活動であるため、容易に編成できた。

 幼年学校の放課後の訓練は、銃の扱いや基礎体力向上のための長距離走など、王国軍の訓練まがいの事を行わせた。つまり、徴兵の適齢になった際に、すぐさま前線に投入できる兵士を生産する。


 組織幹部の人選は、ペルダン以外は全く決まってない。


「それで? だれか目星はついてんのか?」


「いいや……むしろ私にそのようなツテがあると思っていたのか」


 私と侍従ションボとペルダンは、酒場にいた。


「クソ勇者は記憶を失くしているからなあ、昔の友人の顔も思い出せんだろう」


「その通りだが」


「記憶が戻ったというのはやはり嘘だったか」


 今日は珍しく、侍従ションボも酒を飲んでいた。


「ねーちゃん、酒!」


「あいよ!!」


 ペルダンは靴を履いたまま、脚を机の上に乗せた。


「んなことよりだ」


「はい、酒! 発泡酒! 三人分ね!!」


 看板娘が酒を運んで来てくれた。私とペルダンはまだ一口も飲んでいないが、侍従ションボはすでに六杯は飲んでいる。


「何でこんな数の憲兵がいるんだ?」


 酒場では酒も頼まずに、憲兵達がたむろしていた。銃も下げている。店内にいる者のうちおよそ八割は憲兵である。


「なに、害獣駆除を行うだけだ」


「害獣?」


 先日のビザールの話は、王都にとって重要な情報を提供した。


「この数日、私は相談を受けた。その全てが、神託についてだ」


 財布をすられた男や、二十二日にも2人から相談を受けた。とくに二十日のビザールの神託は、とてもはっきりと明確なものだった。

 赤い布を腰につけた民衆達が武器を持っている。その先には、勇者がいた。勇者の姿は影のようで、ぼんやりとしている。だが、手に剣を持っていることは明らかであった、という。


「そして広場での一件以来、憲兵隊が調査を行った……その結果も理由だ」


「それで?」


「憲兵隊は以前から、王都内に地下組織が有ると考えていた。反貴族反差別、自由を求め、真に王政を信ずる集団」


 いくつもの神託から推理した結果であり、事実から導き出された結論である。

 似顔絵をいくつか机に並べた。男が5人、女が2人、全員が標的である。


「広場で民衆を煽動したもの達がいる。今から奴らを捕りにいく」


「……なるほどな」


 3人は酒を飲み干し、席を立った。

 勇者が立ち上がると、サーベルを抜いた憲兵少尉が直立した。


「第三憲兵連隊第一大隊第五中隊、第一小隊集結完了です。ご命令を、勇者様」


「すぐさま行こう……駆除だ、駆除しよう」


「はっ」





 驚くほど近い場所に彼等はいた。

 僅かに、4軒隣の店である。一般客が一階で飲んでいるのに対して、彼等は地下にいた。すでに地区一帯はほかの三小隊が封鎖している。

 客を避難させた後、釘抜きや、建物解体用の巨大なハンマーで床を壊し、地下室に侵入した。

 そこには13人の、地下組織構成員がいた。

 憲兵隊が地下への道をこじ開けるのを、彼等は待っていたのだ。

 そのうち椅子に座っていたのは1人だけである。

 脚はどちらも机の上に乗せ、踏ん反り返っていた。


 熊毛帽を被った男が、酒を飲んでいる。熊毛帽は、セダン以前の王国軍が使用していた。服も青い上着に赤いズボンであり、この男が軍に所属していた事を示している。

 忠勇なる憲兵達もこの男の迫力に怖気付いた。男が、血の広場(ラ・プラス・デ・サン)事件の発端となった事は明らかであるため、捕縛させようとした。


「お前が勇者だな?」


 男は、名をアシル=クロード・パリと言った。

 彼は、思想の話を始めた。民衆の心理は、あくまで、王への信頼忠誠は確かなものだと言った。


「お前は変わってしまった……何故かは知らんが、民草の心を忘れてしまったようだ」


 貴族に対しての不満が積年のものである事も、各種族間の障壁がほとんどない事を彼が言ったが、この程度で動揺する憲兵ではない。

 それに、似たような言葉を私は何度も聞いた。


「奴を捕縛しろ」


「はっ」


 結局、地下にいた13人は全員が捕縛され、店主も地下組織構成員を匿ったとして、逮捕された。

 聴取が行われる事となる。




 その頃、血の広場事件が起こった広場では、王国貴族護衛隊と、盗賊の裁判が行われていた。

 被告は8人である。

 裁判を取り仕切る男は、聴衆に向けて語りかけ、判決を問うた。

 護衛隊の大佐は斬首刑。それ以外の士官は絞首刑となった。盗賊は永続禁固刑である。

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