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第26話 対諸侯戦役

 魔導兵達は新しい装備を受け取った。

 軍服、背嚢、水筒、散弾銃一挺と、旧式の銃が三挺。

 それぞれの弾薬は四十発ずつの計百六十発である。

 集結地は、王都から六十三ディスタ離れたポワチエという町である。


 魔導兵は装備をそれぞれ浮遊させた状態で上空を移動した。

 魔導連隊は優遇を受けていた。リーズからの助言で、魔導兵の軍服は通常の歩兵よりも生地が厚く、ブーツも厚手のものが用意された。これは上がれば上がるほど気温が下がるからであった。


 闇夜、雲が垂れ込めており、今にも雨が降りそうな状況であったため、リーズは連隊に上昇するように伝えた。七千レヒほどまで登ると、雲の上に出た。

 魔導兵達は初めてみる雲海と星空に見惚れながら、集結地へと向かった。




 アンブールは参謀と共に、各部隊の工程表を作成した。集結地はそれぞれ三箇所が割り当てられた。

 北から順に、アンジェ、ヴィエンヌの県都ポワチエ、アングレームである。

 アンジェは海軍砲兵隊と、北海岸地域の部隊の集結地である。ポワチエはヴィエンヌ県とその付近の招集兵、アングレームは南部で指示を待っていた部隊に割り当てられた。

 十九日には、ほぼ全ての部隊が集結地に到着した。五日間で、移動距離最大八十ディスタの強行軍である。アンジェに向かった海軍砲兵隊のように十ディスタ以下の移動だった隊もあった。


 二十日、先に偵察行動に出ていた第一騎兵師団が諸侯軍を捉えた。

 街道をポワチエに向けて進軍していた。

 第九軍司令官であるアンブールは十六日にポワチエに到着した。彼は到着後、すぐに各軍団長を招集した。ポワチエに司令部を置いている第七軍団軍団長ジョゼフ=フランソワは軍司令部に赴いてアンブールと対面したが、この時は町の西側の地形について話したのみであった。

 二日後の十八日に、ようやくアンブールと三軍団長が揃った。

 郊外で行われたこの会談は、のちに“ポワチエの四将会談”として大々的に報じられた。この後の歴史的な大勝利があるからこその、絵画的情景である。

 十八日の時点では、戦略を確認しただけの事務的なものに過ぎない。







 敵が兵力優勢で攻撃行動に移ろうとしている以上、主導権は敵にある。王国軍に主導権をもたらすために、積極的な攻撃に出たいところだが、アンブールは敵の動きを待った。

 三都市に分散して兵を配置していたのにも、彼の用心深さが伺えた。

 だが、第七軍団は敵の位置がわかると、直ぐに行動に出た。彼らが行動を開始したのは深夜であり、アンブールは睡眠をとっていた。侍従が彼を起こす事をためらい、報告は翌朝になった。

 第七軍団は二十一日の時点ですでに、ヴィエンヌ県とドゥー=セーブル県の県境を流れるロアール川を渡りきっていた。

 何度も伝令を出して呼びもどそうとしたが、黙殺された。



 二十二日には「これ以上の命令の無視は貴官の罷免に値する」という内容の伝令を出した。

 すると、ジョゼフ=フランソワは「今戦役は速度が肝要である、と語っていたのは貴殿である。私はその骨子に沿った行動をしているまでだ」と返してきた。

 これを見たアンブールはパイプを吸い、しばらく頭を冷やした。彼が司令部を置いていたのはポワチエ郊外にある、すでに使われていないシャトーである。玄関を出ると、目の前には葡萄畑が広がっていた。


「暑いな」


 彼の着ていた軍服は旧式のもので、未だに分厚い羊毛である。外套を脱げば勿論、楽になるがそれでも額から出る汗は抑えられなかった。

 それに、湿気も不快なほどである。


「これで晴れていれば綺麗な景色だろうに」


 二、三日前から一帯を雲が覆っていた。雨は降ったがどれも小雨で戦場に影響はない。だが、今日のうちにも降るかもしれなかった。

 部屋に戻ろうとすると、背後から士官が声をかけてきた。


「アンブール卿、伝令です」


「またか。今度は何と言っている」


「王都からです」


 渡された紙には「諸侯を急ぎ征伐せよ」と書かれていた。

 アンブールは方針を転換する事を決めた。



 二十三日の正午には、ポワチエより西に二十八ディスタの位置で第七軍団は接敵した。

 諸侯軍十五万に対し、第七軍団は四万六千である。

 その日のうちに各軍団に伝令が到着し、新方針が伝えられた。

 アンジェの第三十四軍団は一度ポワチエを経由し、ロアール川の最も北にかかる石橋を渡り、第七軍団の援護を行う。アングレームの第十一軍団はそのまま西進してロアール川を渡り、諸侯軍の背後に出ることになった。

 ジョゼフ=フランソワの第七軍団に対しては退路を遮断されないように、一度ロアール川東岸まで下がるように伝えた。


 第七軍団は塹壕を掘り、敵の砲火から身を守りながら戦った。だが三倍以上の兵力差は覆し難く、夕方六時ごろに雨が降り出したのを見計らって撤退を開始した。追撃は小規模なものにとどまった。

 損害は三千ほどで諸侯軍に対しては五千の被害を与えたと予想された。



 魔導兵については、各軍団間の伝令としての任務が言い渡された。ディシプリンは斥候や強行偵察も行える事を具申したが、却下されている。

 リーズは西に向かい、自ら偵察行動を行なっていた。

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