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第14話 包囲からの解放

わかりにくく、硬い文かもしれませんがご容赦ください。

 王国軍最左翼で、魔女が虐殺を行う間、その他の部隊は難戦を強いられていた。

 特に、右翼のショーフォンテーヌ軍とフルロン軍は崩れかけていた。


「ジョフル閣下、右翼が前進していません」


「ショーフォンテーヌに前進するように伝えろ。奴なら動くはずだ」


 厳密には前進していないのではなく、前進出来ないのだが、命令されたショーフォンテーヌは犠牲を顧みず、前進命令を出した。前線の将校達も九人の騎士長ヌフ・シェフ・デ・シュヴァリエ達の命令に出来うる限り従った。おかげで、損害も大きかったが、前線は押し上げていた。


 今回の戦闘は、不思議と魔王軍の動きが鈍い。前衛の四万は盛んに動き、包囲を破らせまいと運動を起こしている。が、王国軍を包囲している敵十八万は内側へ攻撃するのみで、外の王国軍など気にも留めない。

 背を向けた軍隊など、突破するのは容易なものである。


「楔を打ち込め! 突撃シャアジュ突撃シャアジュ突撃シャアジュ!」


 王国中央の騎兵隊が突撃を開始した。

 蹄は柔らかい地面をえぐり、土を舞い上げた。総勢一万騎の大突撃だ。時速三十ディスタに達した騎兵達は、重装騎兵やその他槍を持った騎兵は、長槍を脇で締めて固定し、竜騎兵や軽騎兵は射撃したのち、サーベルに持ち替えた。馬蹄が轟き、魔王軍も応戦のため発砲を開始したが、寡兵ではどうすることもできず、突撃を許してしまった。

 戦闘開始からおよそ四時間が経過している。


「砲撃用意」


「照準よし!」


「打ち方始め」


 王国軍の砲撃が開始される。

 騎兵も砲兵も、背を見せた敵に対して攻撃していた。王国軍に面している魔王軍は、先程突破した四万と合わせて九万である。


 だが、ここで魔王軍が撤退を始めた。どの軍でも敵の撤退を認識しており、ここが好機と捉えた。

 私は悪い予感がしたが、気にしない事にした。私がどうこうしたところで、全軍の動きが止まることはないからだ。

 王国全軍が包囲されていた砦に向かった。

 戦闘開始から八時間後のことである。王国軍は包囲されていた部隊との合流を果たした。


 幸いな事に、包囲されていた部隊の損害は少なかった。砦側の死者は二百の歩兵である。前回のセダンの戦いの時点で四万人が包囲されており、このうち負傷者は二千ほどだった。今回の戦いの負傷者も合わせると三千ほどになった。

 魔王軍の撤退は整然と行われた。魔女がいる王国最左翼を除けば、多くの王国軍が敵の殿軍によって大損害を受けた。

 撤退する際、魔王軍は必ず砲撃によって追撃を阻止した。むしろ、追撃する王国軍の方が潰走する例もあった。


 包囲を突破したこの時点で、王国軍の死傷者は四万を数えた。









 王国の首脳によって会議が開かれている。戦闘中のジョフルなどの軍関係者を除いた会議だ。


「まずは内務から」


「はい、すでに徴兵が開始されていますが、これによる農業、工業の影響は全体の六%に及びます」


「むしろそれだけで済むのかね?」


「徴兵が免除される条件の一つに『畑を管理している場合』とあります。なので、効率は下がるとは思いますが、収穫の変化は少ないかと。それに、国土の一割が魔王軍に侵されておりますが、比較的人口も少なく、開墾されていない地域の為、影響は軽微です」


「続いて、外務の方から」


 列席していたのは、王国を運用する大臣達である。

 会議は王国軍の宿営地で行われていた。


「魔王軍については未だに……」


 会議は殆どが経過報告である。

 この報告は五十分に渡って続いた。


「それでは最後に……」


 会議を取り仕切る王宮事務長が、議題を移す。


「勇者についてです」


 国王は頬杖をついた。


「勇者は三週間ほど前の戦闘で記憶を失いました」


 この会議の内容は、後に王の侍従から聞いてわかった。


「そのお陰で、貴族および諸侯への抑えが効かなくなり、南西では反乱の動きも見られます」


 王国の諸侯に対しての不信感というのは、実際に現実にも現れていた。


「これまでの勇者の働きというのは……」


 勇者の役割、というのは王国を纏める事といっても過言ではないらしい。この王宮事務長の話を要約すると、王国は大小様々な国を纏める形で成り立っており、それらを統合する象徴のようなものが勇者であるらしい。

 それが、近年、一部の諸侯が反乱の色を見せた為、勇者が人徳と実力によって諸侯を纏め、厳しく取り締まる事をしてきたらしい。

 記憶がなくなった時点で言って欲しかったが、私の天命はあくまで魔術革命だ。

 王国の事情など知った事ではない。と言いたいところだが、王国の国力はすなわち、魔術革命の基盤でもある。


「そして、現在も勇者の記憶は戻っておりません」


 テント内は騒然とした。


「どうやって戦闘に参加しているんだ?」


「その辺りの記憶はあるのでは?」


「静粛に」


 侍従が注意した。


「しかし、それが事実ならば……」


「はい、非常に危険です。そこでーー」


 彼が言ったのは、私がこの世界で成せばならない事を不可能にするようなものだった。


「勇者を王都の療養所に入れて、治療に専念させるべきかと」


 セダンの平原での戦闘は続いている。戦場では新たな動きが見られた。魔王軍が撤退をやめたのだ。










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