キョウキ
さて、聴いておりますかね?
結論を先に申し上げよう。
君は狂っている。
まあ、そんなに喚かないでくれたまえよ。理由をこれから申しあげるからさ。
人間ていうものはさ、詰まるところ欲望の塊なのだよ。
で、それを抑制するために、理性というものがある。
理性とはなにか?
それは、明瞭に言うならば、人にどう思われているか、どういうことをしたら好かれるか、はたまた嫌われるか。
それを判断基準に抑えたり吐き出したりする、そういうものだ。
ただし、吐き出したものが必ずしも思い通りにならぬこと、も侭あるのは知っているよね。
所詮、人間は相手をどう思いやろうとも他人、全く違う生物。
故に、勝手に憎しみは生まれるし争いが生まれる。
それはまるで自分が正しいかのように正当化し、他方、相手を非難する。
何が正しいのかなんて、立ち位置が変われば判らないのにだ。
それを勘案せず非難する。
これのどこが狂っていないと言い切れるかね?
寧ろ、狂っている、と判断している、自己評価を下している人間こそが正しいとは思わないかね?
己の有り様をちゃんと判断しているのだからね。
ん?それこそ勝手な言い分だって?
ああ、ああ、そうかも知れないね。
だが、考えてみたまえよ。そういう君だって現に頭ごなしに非難しているではないかね。
時代背景によってだ是が非となり、非が是となる。
全く狂った世の中だよ。
この世の中を回しているのが、人間。
狂っているとは思わないかい。
そうかい、まあ頑なに拒むのも君次第。所詮は他人、なんだからね。
ん?はっはっは、この考え方が狂っている、か。
生憎自覚はしているのでね。
では、頃合だ、君もこの世界の、狂った世界の糧になって戴こうかね。