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登場人物

 加勢かせ おさむ

  西暦1982年09月15日生まれ/28歳/男

  株式会社 舞王まおうの販売購買部、購買課。ヤカタ班の術師担当を兼務。

  仕事も含めいい意味でのんびりとしている。つまりは慌てず騒がずマイペースと言ったところ。それでいて、状況が揃えば決断は早いほうである。


 大和おおわ 文佳ふみか

  西暦1983年11月06日生まれ/26歳/女

  株式会社 舞王まおうの宣伝部、派遣課、ヤカタ班。剣士担当。

  幼少の頃から現住所に住んでおり、割合と自然と戯れる事が多く、ややおてんばである。想像力がたくましすぎ、妄想を止められなくなる事がある。

  背が低いため中学2年生以降、出来ると感じた事は手を上げて率先して行うようにしていたところ、その全てが癖になっている。


 安芸あき さとし

  西暦1980年10月10日生まれ/29歳/男

  株式会社 舞王まおうの経営管理部、人事課、課長。班に属していないが剣闘士担当。

  社長の息子である。現在は荒くれ者は成りを潜めているが、こと戦闘になるとたがが外れることもある。

  性格はお人好し寄りで来るものは拒まない。だが、出て行こうとすると泣きついてでも引き留めるもろさがある。


 細川ほそかわ しのぶ

  西暦1985年11月16日生まれ/24歳/女

  株式会社 舞王まおうの宣伝部、派遣課、ヤカタ班。弓士担当。

  人が犯す大抵の事は許す事が着る程おおらかである。現象や事象に対しては許す事が出来ず追求してしまう。

  元々身軽ではあった物の大学のサークル活動を経て、忍びがしたであろう事までをこなせる程になった。


 角館かどだて 勇次ゆうじ

  西暦1979年06月24日生まれ/31歳/男

  株式会社 舞王まおうの宣伝部、派遣課、ヤカタ班班長。勇者担当。

  他人より目立つ事をしたがる。常に人の前に立っていたいともう反面、目立てないと判断するとどんな状況であっても立ち去ってしまう。目立つためであるなら努力は惜しまない。


 川戸かわど 冨佐枝ふさえ

  西暦1984年06月21日生まれ/26歳/女

  株式会社 舞王まおうの営業部、現地課、TERRAテーリア

  押しの強いと言えば聞こえはいいが、口調が強く物怖じしないところがある。性格的には明るく基本的には人見知りしない。

  名前で呼ばれると名字を返して念を押すところがある。つまりはあまり名前を気に入っていない節がある。


 ANTICO{REX{ENDVV{ENDVOTH (あんてぃーぐぉ・りぇっくす・えんでゅ・えんでゅおす)

  REZNVM}ENDVSS (エンデュス王国)のREX=王身おうみ=国王。

  威張り散らした性格ではないことが、智達との言葉のやりとりからも窺える。


 VILFREDO{MINISTER{ZINZARETTI (うぃるふれーど・みにすてる・じんじぁれってぃ)

  MINISTERみにすてる臣身しんみ=大臣あるいは相当する職。文化あるいは自然現象を管轄=文部科学を統括する大臣に相当。

  地道な努力を苦としない。真面目であることが、一切の手抜きをしないところからしれる。しかし、心身の疲労は半端なものではない。


 ROSSANA{MAZISTERIVM{DESANTISV (るっさーな・まじぃすてりゅむ・でぃざんてぃーす)

  MAZISTERIVMまじぃすてりゅむ授身じゅみ=研究者あるいは教鞭者+天蓋の研究=天文学者。

  口があるのかと言われる程に口数が少ない。たわいのない話があまり好きではないという理由もある。高年次に至っては、会話の殆どに理屈がついて回り、周囲では閉口するものも多数いたが、人の変化にも気を遣っていたことから毛嫌いだけはされないで済んだ。


舞台

 テーリア営業拠点

  株式会社「空間倉庫」で建築したこの星の営業所。

  派遣業に登録している各社の営業と空間倉庫のスタッフが常時詰めている。ワームホールで繋がってた場所を拠点としている。


 REZNVM}ENDVSS (エンデュス王国) 王の間

  四方が石造りの玉座以外に椅子のない、装飾品は少なく割合と広い部屋。


道具

 TRANSECARZO (トランセグァールジォ)

  四輪の乗用車程の長さを持つ少人数用途に使われる。今回のものは王室が保有する馬車であるが、きらびやかな装飾がないため、地球人的な感覚だと驚く。

「着いたようですね」

「わぁ~……い?」

「暗いです」

「何だよ、誰もいねぇのか?」

 一瞬、あるいはほんの数秒足らずでワームホールの出口から出てきた勇者一行だが、出た先が薄暗く目が慣れていないことも手伝って、動揺したようである。

「聞き捨てなりませんね。ここにいますよ」

「ん? 明るくしろ。暗いからわかんねぇぞ」

「君は、当社の営業か?」

「はい。株式会社舞王、営業部、現地課の川戸冨佐枝です」

 勇次は息巻き続けているが、智は目が慣れたのであろう。だが、出迎えた冨佐枝に礼ではなく質問を投げかけてしまっている。今ひとつ二〇代とは思えない言動をする智であった。

 現地課とは株式会社舞王の営業部に設置され、派遣先に常駐する営業部署のことである。しかし、あまりにも安直すぎる命名であるのだが、分かりやすいとも言える。

「女か……」

「この男は何ですか。セクハラですね」

「ち、違う、断じて違うぞ。これまで行った星では男の営業ばかりだったから、感心しただけだ……。全く……」

「……そうですか、こちらこそすいません。んん。皆さんこちらへ」

 コツコツとやや軽い音がする中に、ペタペタに近い……、分かりやすく言うなら日本のスリッパで歩く際に近い音が混ざっている。

「なんの音?」

「何でしょうか?」

「う~ん。何だろう」

「……そう言われると。ふむ。屋外じゃない……。どこだったかな」

「あぁ! 家の中ですよ」

 忍が不審に感じた音については、ここにいる全員が感じていたようである。

 一人ずつが似た音を考えていったところ、理が結論に至ったようで、最終的に忍と文佳が「スリッパ!」と見事にハモりながら原因を掴んだようである。

「でも、何で?」

「それは簡単だろう。誰かがその物あるいは類する物を履いている、と言うことだろうな」

 忍の疑問は当然と言えた。一応この場所は屋外である訳で、なぜ屋内で履く物を履いているのかと言うことであろう。それに答えたのは智で、“誰か“とは言っているが、勇者一行全員は標準装備のブーツであることから、その“誰か”は確実に絞られることとなった。

「え、え~と。何か視線が痛いんですが。何でしょう」

「川戸さん。惚けないで下さい。あなたしかスリッパを履いている可能性はないんです」

「あ。そういうことですか……。失礼しました。私もスリッパは履いていないもので、気がつきませんでした」

「えっ?」

「そんな筈ねぇだろう」

 冨佐枝が困惑する中、文佳が可能性を持ち出して詰め寄るも、あっさりと否定する冨佐枝であった。とは言え、日本人的には暴挙と言ってよい事態であるかのようである。

「ふむ。……なるほど。よくよく考えるとこの履き物の音は、似ているのかもしれませんね」

「それは、どういうことです?」

「いえ、お気を悪くなさらないように。今私が履いている履き物は、現地の物を模したものです」

「模した物……。つまり、模造品?」

「そうです」

「……なるほどな。得心がいった。つまり、営業所内の全員を含めてだが、川戸君は今現地の履き物を履いている。いや、服装もそれに習っていると言うことだな」

「はい。仰る通りです」

 冨佐枝が思い出したかのように音についての原因を語ったのだが、智は、一つの事実から類推して別の事実を引き出したようである。その事実と言うには大げさかもしれないが、忍が「え~。ホント?」と声に出しているが、理を除いた面々も声には出さないまでも引き攣っているようである。

「音の事は分かりました。で、この歩き心地なんですが……。床は木材ですか?」

 結論が出たと判断したのか、理が気になるような表情と仕草をしながら質問を投げかけると、切り替えが追いつかなかった冨佐枝が……。

「えっ? あ、はい。そうですね。地球の樹木と違いはありますが、総じて木と言っても良いかと思います。ついでに建物の説明もしておきましょうか。壁は地球で言うところの“石”を組んだものですが、地球で言う“石”とは違いますね。……あっ、忘れてましたが、現在いる場所は、この惑星の地表、つまり地上になります、地下ではありませんよ。それと、ワームホールを原住民に見せる訳には行かないため、窓は設けてませんし意図的に明かりを薄暗くしていますので、暗いのは我慢して下さい。……話を戻しましょう。この周囲にある集落や国では、概ね木材と石で家屋を建築していますので、地球の歴史で言うと中世以前のヨーロッパに近いですね」

「なるほど……。確かに、手触りは地球の石や岩とは違うように感じますね」

「詳しいんですか……、え~と」

「加勢です。加勢理です」

「これはすまん。自己紹介はまだだったな」

「あ、いえ。後程で構いません」

 部屋を出た一同は、薄暗がりの廊下を進んでいく。すると、行き止まりに出くわした。

「何だ? 間違えたのか?」

「角館班長。廊下は枝分かれしてませんでしたけど?」

「五月蠅いぞ、ちっこいの。それくらい分かってる、わざとだ」

「そうですか」

「ふふふ。今回のご一行は楽しい方達ですね」

 そう口にしながら冨佐枝は、行き止まりの壁の右側にある壁の一部を手で押し込んだ。すると、行き止まりだった正面の壁が若干ずれた。

 ガコン。

「さ。いきますよ」

 そう言った冨佐枝は日本の時代劇さながら、正面の左反面を押して開いた。正にどんでん返しであった。

「わぁ。忍者屋敷だぁ。燃えるぅ」

 わいわいと騒ぎながら、次々とそのどんでん返しを潜っていった。

「ほう。これも原住民対策か」

「そうです。何があるか分かりませんから」

「こっちは明るいんですね」

「えぇ、ここから先がこの惑星上にある唯一の営業所本体です」

 智達が出た場所は、廊下の一部にしてはそれなりの広さがあった。とは言え、その場所には調度品もなく殺風景ではあった。それとは別に、明るい場所に出た冨佐枝の風貌に、びっくりしたような嫌がるような声を上げる面々がいた。

「これはまた。すごいな」

「はい?」

「最悪」

「着たくない」

「クックククク」

 一様に嫌悪感を露わにする智達勇者一行である。

「あ、え~、皆さん視線が痛いです。……ですが、後ほど着てもらいますのでご了承下さい」

 冨佐枝の逆襲とも言える言葉に、忍と文佳が嫌がるのを通り越して、がっくり肩を落とすどころではなく腰を折るほどに項垂れてしまったようである。

 冨佐枝は、少々恥ずかしそうにしながらも智達が全員出たのを確認して、どんでん返しを閉じてこちら側の壁に出た部分を押し込むと、どんでん返しは再び只の壁に戻った。

「それじゃぁ、依頼を受けに行こうか」

 威勢良く仕切ろうとする勇次だが……。

「ま、待って下さい」

「何だよ。ここから先のことは営業に関係なだろうが」

 勇次の気勢を遮る格好となった冨佐枝だが……。

「はぁ……。実は今回の緊急依頼は、詳細な依頼内容が提示されていないのです」

「どう言うことだ?」

「緊急であると言っていましたが、詳細は謁見の際に行うといってます。少々厄介かもしれませんね。……それと。そこの方、何年派遣業務をやっているの? 我が社では営業も勇者一行に同行する決まりなのをお忘れ?」

「チッ」

 冨佐枝の剣幕に気にくわない表情をする勇次であった。

「まだあります。この地域、いえ、これから赴く国の習慣も覚えて頂かなくてはいけないんですよ。ですから、少なくともレクチャー後になります」

「フン。習慣なんざ知ったことか」

「貴方は……。この惑星上で悶着を起こしたいの?」

「悶着上等! 俺が良いところを見せられればそれでいい」

 勇次のこの一言に、冨佐枝は返す言葉が見つからなかったのか、しばしの間無言であった。

「……はぁ。ちなみに、ここから依頼主の国までは地球の距離で一〇〇㎞はあります。それと、レクチャー時に通達をと思っておりましたが、ここの時間で三時間後に迎えが来る手筈になってます」

 言い合いするに値しないと考えたのか、気持ちを切り替えるように息を吐いた冨佐枝は、依頼主の場所と打ち合わせ済みの内容を簡単に説明した。

「なるほど。それではこちらから出向くのは以ての外だな。迎えを待つ」

「何でお前が仕切るんだ!」

「今回の指揮は、安芸さんが執るんですから従わないと」

「ちっこいのに口出しするな。いちいち五月蠅いんだよ」

 冷静に決断をした智に対して、今にも切れそうに憤慨する勇次であった。そこに文佳が追い打ちを掛けるように口を出したために、怒りの矛先を文佳に定めたようである。

「いじめは駄目だよ」

 勇次の八つ当たりともいえる憤慨に、忍が文佳の味方についたようである。

 忍はいつの間にか勇次の背後に回り込み、それ程大きくはない手が勇次の首を捕らえていた。

「ほほう。意外にすばしっこいな、細川君は……」

「この野郎!」

 吠えた勇次が背後に腕を回すが、それより早く忍が背後から姿を消したため、捕まえられず空振りに終わった。

「大人げないですねぇ……。あっ、いえ、その……」

 言ってしまってから失敗したと後悔する理であったが、時既に遅く、怒り心頭の勇次は理に照準を合わせて腕を振り下ろした。

 バシッ!

 理に届く前に、割って入った智の右手が勇次の拳を受けていた。

「いい加減にしろ」

 威厳を含んだような言い方をする智。一方で勇次の表情が歪んだところを見ると、智が握る力を更に加えたようである。

「くそっ」

 短く小さく呟いた勇次の腕から力が抜けたのを感じたのであろう智は、彼の拳を離した。

「はぁ~。女同士の庇い合い。男同士の啀み合い。あぁ~」

 なんとも嬉しそうに語る冨佐枝に、“えっ?”という表情をする面々に気が付いた冨佐枝は……。

「……んん。騒動も収まったようですので、レクチャーを始めましょう。こちらへどうぞ。……皆さん凄いですね。こんな狭い場所であれだけの立ち回りをするなんて」

「何言ってやがる、良い面汚しじゃねぇか」

「まぁ、貴方はそうでしょう」

「このぉ……」

 腹立たしさがこみ上げる勇次であったが、今し方、智に痛い目に遭わされたばかりである。流石にここは自重することにしたようである。

 智達は、冨佐枝に案内されるまま営業窓口へと続く廊下を素通りし、やや奥にある会議室と札の掛かった部屋へと通された。と、ドアを閉める前に営業所内の人物が訪れた。

「川戸さん。装備の用意をしますから必要な物を教えて下さい。それと、一行の名簿を出して下さい。衣装を用意します」

「いけない。皆さんすいません、剣や刀の鍔をお持ちの方は何人います? あと、名簿もよろしいですか?」

「西洋剣が二本と日本刀が一本。後は弓だったか。それと、これが名簿だ」

「安芸さん、凄いです。良く私の武器のこと覚えてますね。……あぁ、すいません。この辺りの武器に弓があれば……、小さい目の物なら尚いいです。一式お願いします」

 営業所の人物が「分かりました」と去って行きながら「弓矢ねぇ。あったか?」と呟いていたのが聞こえてきた。

 武器については、勇者一行であることから剣が主流であるが、希に他の武器を使用する者がいる。只、武器の全てを持ち込むのではなく、無物質特異化現象を剣技に加えるための鍔や類する部分を持ち込み、刀身は現地で調達するのが決まりとなっている。万が一に折れた場合を想定しての措置である。


 地球から持ち込んだのであろうパイプ椅子に一行が座るのを待って、冨佐枝が語り始めた。

「それでは……」

「その前に、こちらの自己紹介をしておこう。川戸君もこちらを呼びにくいだろう」

「え、えぇ」

――君って、あなたはいつの時代の人よ。

 智の物言いに、やや引きつった表情で相づちを打った冨佐枝であった。智の言動はどうも時代がかっているようである。

「そ、そうでしたね、後回しでしたね。それではお願いします」

「安芸智。経営管理部、人事課の課長をしている。剣闘士担当で二九歳だ」

「フン」

「……わたしが。大和文佳。宣伝部、派遣課、ヤカタ班で剣士担当の二六歳です」

「次あたしね。細川忍。宣伝部、派遣課のヤカタ班で弓士担当の二四歳です」

「僕……で良いですか? 加勢理。販売購買部、購買課に所属してますがヤカタ班で術師担当の二八歳です」

 勇次を除いた全員が自己紹介を終えたが、当の勇次はふて腐れたままのようで、一向に口を開こうとしないのである。

「……全く。いつまでむくれている。……埒があかんな。この人は角館勇次。ヤカタ班としての班長で勇者担当だそうだ」

「はい?」

「川戸君。聞こえなかったのか?」

「いえ、聞こえてます。この男が勇者担当ですか?」

「そうなっている。性格で決まる訳ではないからな」

 智の紹介によって、冨佐枝の勇者イメージが崩壊したようである。勇次の性格からすれば然もありなんと言ったところであろう。

「……え~と、名前と部署は先程紹介した通りです。一行の女性陣が年齢をパスしてくれたらと思っていたのですが……。え~、二六歳です」

「あ、文佳さんと同い年ですね」

「そうだね。でも、仲良く出来るかは……」

 冨佐枝が文佳と同じ年と知ったが、騒動の時にした冨佐枝の発言が文佳の中に鮮明に残っているのであろう、友達にはちょっとなりたくなさそうにしている。そう言われてしまった冨佐枝は、がっくりと肩を落としていた。

「そうだ。忘れていた。角館さんは三一歳だ。一番の先輩だぞ」

「お前なぁ。俺を苔にするつもりか?」

「いや。貴方だけ年齢を言わないのも変だと思ったまでだ」

 勇次が振り向いて睨みをきかせたことに、涼しい顔で答えている智がおり、冨佐枝は冨佐枝で、ぽかんと口を開けて佇んでいた。勇次が勇者担当であるだけではなく、年上であったことが相当にこたえているようである。

「川戸君。いつまで惚けているんだ。レクチャーとやらを始めてくれ」

「……あ、はい。分かりました。……んん。まずは緊急の依頼があった国の名ですが、エンデュス王国と言います。文字を見る機会があるかどうか分かりませんが、文字の表記を含めた言語的には地球の古ラテン語に似ていますが、文法は日本語と同じとみています。次に、エンデュス王国の近傍にある国家ですが、国境が接しているのはノデュルス皇国です。両国の東に位置しているのはアスペリュス国で、この営業所から一番近い国でもあります」

「始めて直ぐに悪いが、ちょっと確認させてくれ」

「何でしょう」

「この営業所は、そのアスペリュス国の領土内か?」

「いえ、この周辺……。南に三〇キロ程離れた場所にある、山岳地帯の向こう側までが現在のアスペリュスの国土と解釈しています」

「分かった。続けてくれ」

「エンデュス王国とノデュルス皇国は、近いことも手伝っているのでしょう、緊張関係にありますが、国境上に高い山脈があるため睨み合い程度で納まっているようです。アスペリュス国は、エンデュス王国とは友好関係にありますが、ノルデュス皇国とは敵対していない程度のようです。ここまでで、ご質問は?」

 一同を見回す冨佐枝に対して、既に質問した智を始めとする面々から質問はされなかった。

「質問がないようですので、次に移ります。え~、次は種族全般についてです。私達地球人は類人猿から進化したと言われていますが、この惑星でも同様に猿に似た種から進化したようです。但し、地球で言うところの手長猿種からと推測しています。と言うのも、身長と照らし合わせても腕が異常に長いことからの見解となってますが、DNA解析を行った物ではありませんのでご了承下さい。後は……。私達より標準身長が高く、地球の尺度で一八〇~一九〇センチ程が標準ですが、二メートルを超える方もかなりおりますので驚かないように。種族に関しては質問されても情報が不足しいますので、認識した上で笑うなどしないようにお願いします。次は基本的な習慣について説明します。挨拶ですが“こんにちは”や“Hello”と言った言葉はありません。アスペリュス国も含みますが、エンデュス王国でも同じです。相手を認識した後、すれ違うまで左手を頭の上に置きます」

 冨佐枝の説明に、少々ざわつく一同だが、冨佐枝もそれは承知であったようである。

「……言いたいことは分かります。日本の慣用句に“郷に入りては郷に従え”があるのはご存じかと」

「おいおい。それをこんな所でやれってか? 冗談じゃねぇぞ。俺には得がないだろ」

「角館さん。損得の問題ではありませんよ」

「何だ? さっきとは違うじゃねぇか、年上には礼儀か。まぁ良いけどな。……で、俺にとっては損得が重要だ」

「俺もさっきは中断させましたが、角館さん。個人的な意見は後にしませんか?」

「……チッ。勝手にしろ!」

 勇次のわがままにも似た物言いを沈めた智は、頷いて冨佐枝にレクチャーを続けさせた。

「ちなみに、左手を頭の上に置くという行為についての意味は、貴方には何も手出ししませんよと言う意味だそうです。もうお分かりとは思いますが、通行の際は日本と同じ右側通行です。そして、これから説明するのが一番重要です。謁見の際の習慣と言うよりは作法になりますが、間違えないようにして下さい。特に角館さん」

「俺か?」

「そうかもしれない。他のことは置いておくとしても、国家元首の前では恥をかかないようにしないといけない」

 既に冨佐枝の中では問題児扱いが始まっているようであるが、当の本人は、全く気が付いていないのが表情から透けて見える。智が追い打ちを掛けていることにも気が付いていないようである。

「んん。まず、謁見の間に通されたら王が出てくるまで大きな動きをせず立ち続けて下さい。出てきたらその場に右膝を立てて座って、立てた膝の上に両手を置いて下さい。顔を伏せる必要はないそうです」

「あのぉ、その姿勢にも意味があるんでしょうか?」

「その通りです。膝を立てるのは楯突きませんという意味だそうです。両手を膝の上に置くのも王に何もしませんという意味だそうです。後、日本人はどうしてもやってしまうんですが、王が出てきてもお辞儀をする必要はありません。してもとやかくは言われませんが……。座った際も顔は正面、王の方を見て構わないことになっています。これは嘘偽りを申しません、と言う意味があるそうです。ここまでで質問はありますか?」

 冨佐枝の説明に、一同はやや困っている様子である。他国の習慣を一夜漬けどころの騒ぎではなく、たった数分程度で習得することは、中々に骨の折れるものである。緊急であるが故、多少のことは大目に見て欲しいと思わずにはいられないことであろう。

「最後に、謁見では王からの質問にのみ答えるのが習慣だそうです。只、掌を上にして右腕を伸ばせば質問は出来るそうですが、定かではありません。よって、無闇に質問をしないように厳重にお願いします」

 冨佐枝も最後の部分には、あまり自身が持てないようであるのが表情からも伺えた。冨佐枝が担当に着いてから前例はないものと推察される。

「あっ、もう一つ忘れるところでした。謁見での座る位置ですが、国王に向いて右に私で左に安芸さんが並びます。四人は後ろになりますが……。そうですね。私の背を見て右から大和さん、加勢さん、角館さん、細川さんでいきましょう。質問はなしです」

 トントン。と会議室のドアがノックされる。

「はい。どうぞ」

「調達した武器と衣装の準備が整いましたよ。それと、そろそろ時間です」

「そうでしたっけ? ここに時計なかったですねぇ、あははは……」

 このやり取りから察するに、会議室は常時使用していないのであろう事が伺え、危うく迎えの時間となるところであったようだ。

「調達してある刀身はこちらです。複数ありますので選んで下さい。弓矢ですが、いささか毛色が変わってしまいます。こちらしかないようですね」

 出てきた物は弓矢と言うよりはクロスボウに近い形状である。弓らしき形状はしているが弦が結ばれていない上に小さく、使い方も今ひとつ分からない代物である。

「使い方、分かる人は?」

「申し訳ないですが、営業所内にはいないと思います」

 忍はその言葉に途方に暮れてしまったようである。

「くっくくく」

 笑っているのは言わずと知れた勇次である。

「失礼ですよ」

 すかさず釘を刺す智である。

「……」

「さて、両刃がないのか……。であれば、俺はこれだな」

 智が選んだのは、片刃だが西洋風な太めで真っ直ぐな物である。

「う~ん。鍔と柄に入る物が……。これ!」

 文佳が選んだのは、片刃で刀身が細い真っ直ぐな物であった。

「……俺は、これでいいか」

 勇次が選んだのは、片刃で智が選んだ物より更に太い物であった。

 選びながら鍔や柄に治める智に文佳と勇次である。ちなみに理は術師であるため持参したステッキを伸ばして装備が済んでいた。一番厄介なのは忍で、どうしたものかかなり悩んでいた。武装しないのもためらわれたが装備しても使い方が分からず、試す暇もない訳である。

「しょうがないなぁ。ひとまず持って行こうかな」

 忍の中で、どうやら折り合いはついたようである。

「そうそう。え~と、これが安芸さんで、こっちが加勢さん……。大和さん、角館さん、細川さん。この辺りの服装に似せてしつらえた服ですからちゃんと着替えて下さいよ。ロッカールームはここを出て右奥にあります。それと、翻訳機も装着して下さいね」

「またこれか」

「確かに、このチョーカーはどうにかならんのか」

「そうなんですよね、男性には受けが良くないんですよ。ですが、今のところは何処の惑星でも言い訳出来るタイプですからねぇ」

 勇次や智が言うように、男性でチョーカーを付けるのは地球上であっても極まれであろう。嫌がるのも分かろうというものである。一方で冨佐枝が言う言い訳がしやすいのももっともで、首に巻いていることから宗教的、あるいは民族や種族的な習わしであると言えるからである。

「そうですか? アクセサリーだと思えば問題なしです。ねぇ、文佳さん」

「そうねぇ。地球では付けたことないけど……」

「まぁ、角館さんの体格だと、余り似合わないかもしれないですけど」

「細川ぁ、またか!」

「細川君。角館さんをからかっちゃいけないな。俺にだって似合っているとは思えんのだ。角館さんも抑えて」

 味方を得たためか、勇次はその場から離れていった。

「う~ん。首回りがちょっときついような……」

「大抵の首回りには合う筈ですよ。って、加勢さん? 一段きつくしてません?」

「え? 調整が出来ましたっけ。久し振りだからうっかりしてました」

 相変わらず涼しげで、マイペースな理であった。

「うわぁー、やっぱりだめ。これ、着るんですよねぇ」

「言いたい事は十分分かってる。でもね、これもお仕事だから、頑張って着よう」

「えぇっとぉ」

「シャツ、というよりはジャケットって言った方がいいのかな。それに、生地と言うよりは革ねこれ。で、くすんだクリーム色で、その他諸々も含めて地球の美的感覚だと最悪の部類なのは分かるけどね」

「いえ、そこまで否定しない……のは無理です。そして、ボトムもパンツとは言えないし。何ですかこれ?」

「パンツなんでしょうけど、ぶかぶかすぎよね」

「むむむむ」

 愚痴や文句などのやり取りをしつつ、会議室からロッカールームに移動した一行は、現地の服装に着替えを済ませ会議室に戻ってきた。

「準備は出来たな」

「はい」

 全員からほどほどに良い返事が返ってきた。そもそも、声を掛けた智でさえ、声に気が乗っていないところから、服装に辟易しているのが窺える。

「それでは、店舗の方に移動しましょう。それと、もう少し時間があるようですから、店舗の方で待って頂きますよ」

 冨佐枝の言う通りで、エンデュス王国からの迎えがない以上、店舗の方で待つより他になかった。

 冨佐枝を先頭にぞろぞろと会議室から店舗へと移動していくと、見計らったかのように、キィッ、っと店の扉が開かれた。

「いらっしゃいませ」

「エンデュス王国、アンティーグォ・リェックス・エンデュ・エンデュオスの名により英雄あるいは勇者の方々をお迎えに上がりました」

「本当にでっけぇ……」

 営業店舗のドアを潜って入ってきた、惑星上の種族を目の当たりに勇次が思わず呟いていた。


     *


「大分ゆれるな」

「そう……ですね。安芸さん」

「乗り心地に関してはっ! 諦めて下さい。こっちではバネ? でしたっけ? がありま! キャッ。せんので」

「スピード、落として下さい」

「舌かみっ! う~」

 テーリアでの乗り物は相当に乗り心地が悪いようである。冨佐枝は何度か乗っているのであろう、覚悟の上でと言ったところのようであるが、智だけに止まらず愚痴がちらほら出ているようである。

「いたっ! 文佳さんごめん。ちょっと狭い」

「いたたたた。大丈夫よ忍さん」

「おい、営業」

「川戸です!」

「いいじゃねぇか、気にするな。これは、馬車でいいのか? 何人乗りなんだ?」

 速度も出ているためか、かなり揺れが酷い状態であり、左右に揺すられた衝撃で文佳と忍が頭をぶつけるほどである中、勇次がいつもと変わりなく平然と質問をしている。

「はぁ。地球で言うところの馬車とほぼ同じです。乗車人数までは正確に把握してませんが……。え~と」

 冨佐枝は説明しながら、車内を見回して何かを探しているようである。

「……あぁ。TRANSECARZO(トランセグァールジォ)でしたか。このタイプは少人数用と聞いています。そうですね、六人までなら大丈夫の筈ですが……。派遣課の方には少々窮屈だったようですね」

 説明しつつ冨佐枝は、向かい合わせのベンチシートに座る面々が窮屈そうなのを見て言い直したようである。

 派遣課に配属されると、概ね派遣業に従事するためどうしても体を鍛えることになる。よって、一般と比べても体格的に大きくなりやすいと言うことである。

 智達一行が乗車しているTRANSECARZO(トランセグァールジォ)は、冨佐枝の話しぶりからすると王国が特別に作らせた乗り物ではなさそうである。只、地球的な言い方をすれば“王国からの迎えに来た馬車”である。当然王国の所有と言うことになる訳で、王国の紋章と思しき装飾を大きく前後左右に頂いている。地球人的な感覚からすると、細かい細工やきらびやかな装飾を想像するに違いないが、その何れもないことに驚かされたことであろう。

「しかし、前方を見る限り、風情はないな」

 小さめの窓から前方を見ていた智が、馬車に揺すられながら呟いていた。その訳はと言えば……。

「そうなんですか? 逆向きだから分かりませんが」

「馬車、と言えば馬だろう」

「安芸さん。その疑問にお答えしましょう。こちらの時間で昨年に産業革命があって動力車という物が作られました。ですが、ご多分に漏れず値段が張るため、国内に流通させるため王国がまず購入することになったとのことです。ここからは想像ですが、今回は国外にも出ることから宣伝も兼ねたのではないかと思います」

「そうか、そうだな。他国がまだであれば絶好の宣伝になるか。だがなぁ……」

 智の疑問は晴れたようではあるが、古くからある物に新しいものを付けたとして、上手くかみ合うのかと言いたいのかもしれない。

「皆さん。このペースですと、意外に早く着くのかもしれませんね」

 馬車の揺れに慣れたのであろう冨佐枝が、到着が早くなりそうであると伝えているが、もうしばらくはこの酷い揺れに耐えなければならないようである。

「英雄あるいは勇者の方々。これよりスピードを上げます。揺れにご注意を」

 動力車を扱っている御者が、前面の窓を少し開けて注意を促してきた。

「ん?」

「うわっ」

「スピードが上がったようですね」

 馬や動物ではなく機械的な動力車であるため、加速の際に進行方向側にいた三人が、やや後方に上体を持って行かれたようである。

 フィーンと動力車から甲高い音が微かに聞こえて来た。

「何故、速度を上げた?」

「アスペリュス国の近くから離れたためではないかと……。ノルデュス皇国との関係はお話しした通りですので、早くエンデュス王国に入るためでしょうね」

「国境越えか……」

「安芸さん。正確に言うと、どの国の領土でもない場所に入ると言うことです。緩衝地域に当たるかと。ですので、何処の誰が何をしても知らぬ存ぜぬが通ってしまいます。私達はいわば国賓扱いと考えているのでしょう、素早く王国領土に入ろうとしているのだと思います」

 冨佐枝が説明した通り、このテーリアはまだ、いや地球人類と同じで覇権争いの真っ最中と言うことのようである。

 スピードを上げた車内では、横揺れがかなり酷くなっており、これ以降会話が出来ない程であった。

 しばらく酷い揺れを耐えていた一行であったが、揺れが小さくなっていった。

「揺れが小さくなったようだな」

「そうですね」

「やっと、エンデュス王国領内に入ったんでしょう。あぁ~」

「ちょっと、気持ち悪くなってます」

「文佳さん、大丈夫ですか?」

「弱っちいな」

 揺れが小さくなった馬車内では、各々耐えていた緊張を解いたようである。約一名限界に達しようとしているようであるが、果たして王城まで持つのか……。

「英雄あるいは勇者の方々ご無理をさせました、スピードを下げました。もうしばらくお待ち下さい」

 御者が事後報告とはなったものの、馬車内に報告してきた。

 それから数十分後。

「川戸君。あれか?」

「何ですか?」

 低層な町並みを眺めていた智が、近付いたことで塔のような建物を指さして確認している。

「はい。あれが王城です。エンデュス王国では居城と呼んでいます。ちなみに、町の名前はエンデュです」

 城壁に差し掛かる頃には、動力車もかなりスピードを落とし、城壁を抜け王都であるエンデュ内に入っていった。

「監視塔かとも思ったが、城壁から離れているのか、目的は何だ?」

 ぼそりとした呟きに等しかったこともあり、揺れの音がする馬車内で聞いた者はいなかったようである。

 智が見た塔は城壁からは遠く、王城に近い場所に立っていたのだが、馬車が通った道からは遠いため使用目的を見ただけで理解することは出来なかったようである。

「英雄あるいは勇者の方々。長い道中お疲れ様でした、居城に到着いたしました……。大丈夫でございますか?」

 御者が、前方の小窓を開けて到着したことを告げたのだが、智を始め馬車の揺れにほとほと疲れているようで、御者が戸惑っているようである。

 そうこうする内に、馬車の扉が外から開けられて降車を促された。勇次と智を除いてややふらつきながら馬車を降りた。降り立った面々はエンデュス王国の王城を間近に見ることとなった。

「立派とは言えねぇなぁ」

「角館さん。門兵の前で失礼なことを言わないように」

 勇次が笑みを湛えながら否定するような言葉を口にしたため、智が傍によって注意を促した。

「僕の知る王城とは違います、随分低層ですね」

 勇次に続いて理までが唸るように、がっかりしたようにも取れる表情で呟いたのを耳にした智が……。

「加勢、頼むから感想は戻ってからにしてくれないか」

「あっ、すいません。つい……」

 王城の入り口前から馬車までに連なる兵士達が並ぶ様は、正に地球の中世に習ったかのようである。

「何か猿っぽいです」

「だ、駄目よ。忍さん」

 これまた注意を受けていた筈なのだが、忍が小声で文佳にひそひそと呟くと、慌てた文佳が小声で注意していた。かすかに耳に届いた智は、ふっと溜息を漏らしていたのであった。

 智を始めとした一行は、冨佐枝が移動しないためそれに習って立っていると、しばらくして衛兵を伴って一人の人物が現れた。

「急な依頼ではありましたが、良くテーリアにあるエンデュス王国にお出で下さいました。私は、ウィルフレード・ミニステル・ジンジァレッティ。文化あるいは自然現象を管轄とした大臣あるいは相当する職を承っています」

 ウィルフレードは、挨拶の口上を述べながら左手を頭の上に置いていた。その動作に、一様に驚いている勇者一行の面々である。だが、地球式いや日本式の頭を垂れる姿勢は何とか堪えているようである。動作が染みついている日本人には中々に難しいことであろう。

――驚いた。本当にそれが挨拶なんだな。宇宙は広い……。

 驚きの表情を一瞬見せつつ、感心した表情に戻った智であった。

「……ミニステル・ジンジァレッティ。ご挨拶ありがとうございます。今回の対応に当たります指揮を任される者をご紹介します」

 冨佐枝もお辞儀を耐え左手を頭の上に載せながら、応対したウィルフレードに口上を述べると、勇次が一歩踏み出していた。どうやら勇次の自己主張のようである。だがその動作を無視して冨佐枝が続ける。

「今回の指揮を任されている、安芸智です」

 無視された勇次は、苦虫を噛み潰したような表情で拳を握りしめていたが、前に出た位置を戻すつもりはないようである。

 冨佐枝に紹介された智は、一歩前に出て冨佐枝に習って左手を頭の上に載せ……。

「一行の指揮を受けました安芸智です」

「……待てよ。班長は俺だぞ! おい、営業。無視するんじゃない!」

 門前で怒鳴り散らす勇次に、冨佐枝は肩を竦めてみせるのみである。

「ミニステル・ジンジァレッティ。……こちら側の問題を門前で騒ぎ立て申し訳ないこと許して頂きたい。緊急依頼のための体制変更に幾分納得していないもので、なんと申し開きをすればよいのか……」

 平謝りするしかない智であったが、当の勇次は、“俺の所為か?”と言わんばかりの表情でその場に立つのみであった。

 智の詫びに対して、ウィルフレードの表情から怒りなどは感じなかった。

「そうでしたか。こちらの都合で変更されたのでは納得もいかないでしょう。このことは後ほどリェックス・エンデュ・エンデュオスの耳にも入れておきますのでご安心下さい」

 柔軟な姿勢を見せるウィルフレードに対して、気にくわないと言った表情をしている勇次である。格好いいところを見せたい勇次としては、明らかに心外と言ったところのようである。

 後ろの方でほくそ笑んでいるのは文佳と忍である。やれやれと言った溜息をついたのは理であった。のんびりしているように見える理とは言え、状況は把握しているようである。

「それでは、ご案内いたします」

 そう言ったウィルフレードが先に立って歩き出すと、冨佐枝の後に智が続いた。その後に文佳と忍も続き、理が歩き出すと……。

「……退け」

 理を押しのける形をとって勇次が歩き出すと、押された理はむっとしつつもしょうがないなと言った表情で勇次の後に続いていった。

「……おせぇぞ」

「ちょ、ちょっとぉ」

「あぁ、何すんのよぉ」

 勇次が歩く速度を上げ、文佳と忍の間を割って前に出て行くと、当然文佳と忍に文句を言われる訳であるが、勇次は不敵な笑みを湛えるだけであった。

 後ろが騒がしくなったことを気にした智だが、またかと言った表情をしただけに留めたようである。

 出足で内情を晒してしまったものの、その後しばらくは問題も起こさずに居城内を移動し、二階へと上がった一行。通されたのは衛兵が警護している割合と広い部屋だった。

「こちらで、しばらくお待ち下さい」

 案内してくれたウィルフレードは、そう告げると入ってきた扉から出て行った。

 部屋の中程に立って待つ一行は……。

「一番奥が高くなってますね」

「そうだな。高い背もたれの椅子が一脚だけあるようだしな」

「えぇ。ここは王の間ですね」

「それって、王様と謁見する部屋って事ですか?」

「その通りですよ」

 皆の疑問、と言うよりは各々の境遇や知識によって大凡は見当がついていたようであるが、冨佐枝が“王の間”つまり謁見の部屋であること告げたのである。

「ちょっと暗すぎないですか?」

「大和さん我慢して。この惑星上ではこれが最新式の明かりですからね」

 冨佐枝に言われてしまった文佳は「それじゃ仕方ない」と我慢することにしたようであるが、確かに地球の明るさになれている面々にとっては、薄暗い中というのは慣れないもののようである。

 一〇分程が経った頃……。

 ギィー。と、背後の扉が開く音が聞こえてくる。入ってきたのは先程のウィルフレードともう一人で、都合二人であった。その二人は一行の左を通って一段高い玉座の左側に、ウィルフレードが玉座に近い位置でこちらに半身を見せる形で立ち止まった。

 更に五分程が経った。

 この間、ウィルフレードともう一人は、殆ど動くことがなく唯々立っていた。智達の方は、表情から緊張も手伝っているのであろう、やや疲れが垣間見えている。

 玉座の裏手から衛兵が現れた。

――ほう。玉座の裏手は一枚の壁ではないと言うことか。

 衛兵の後から現れた人物がいた。ようやく国王のお出ましとなった訳である。しかし、向かって左に立っている二人はひれ伏すことはなく、顔のみを国王に向けるのみである。

「川戸君。この国では王の前で伏すという慣習はないのか?」

「すいません、伝え忘れてました。その通りでありませんし、謁見する際と同じように顔だけであっても伏せないようにして下さい」

 智が顔を国王に向けたままに、冨佐枝と話し込んでいるが、その内容に他の四人も耳を欹てている様子で、皆小さく頷いていた。

――ん? 衛兵が移動したか。……ほう、こちらの左右に展開したか。

 国王が玉座に座ると、ウィルフレードともう一人が、作法に則りその場に座り込んだ。智達一行も事前に説明があった通りに、右膝を立ててその場に座した。並び順も先に説明があった通り、玉座を向いて右に冨佐枝、左に智。その後ろ右から文佳、理、勇次、忍の順に並んで座っていた。

 国王と共に現れた衛兵は、一行の左右に三人ずつに分かれているが立ったままである。大方の予想通り、不測の事態に備えてのことであろう。

「まずは、来て頂いたことに感謝する。私がエンデュス王国、国王のアンティーグォ・リェックス・エンデュ・エンデュオスである。それから、緊急の依頼にも関わらず早い来訪に満足しているが、依頼そのものも抽象的で詳細を謁見時に伝えるとしたにも関わらず来てくれたことに感謝する。それでだ……」

 国王の口上を聞くだけの状態ではあるが、始まったばかりであるだけではなく、地球ではそうそう経験の出来ない事態に緊張している者もいるようである。

 アンティーグォ・リェックス・エンデュ・エンデュオスは、口上を雄弁に語って聞かせていたのだが、突然尻すぼみとなってしまったようである。

――ふむ。どうやら、相当に伝えがたい何かがあるようだな。

「ふむ。……そうだ。これに控えている者達の紹介は終わっているか?」

 唐突に思いついたのか、あるいは思い出したのであろう玉座側から右に座している二人を引き合いに出してきた。

「私に近い方にいるのがウィルフレード・ミニステル・ジンジァレッティである」

 国王が、ウィルフレードを紹介するが、ここまでの案内人であったことを忘れているかのようである。その本人であるが、続けてもう一人も告げられるのかと考えていたようで、しばし静寂が訪れてしまった。

「ん、んん」

 国王が咳払いをしたことで、ウィルフレードは何か喋ることを要求されていることに気が付いたようである。

「……リェックス・エンデュ・エンデュオスよ。失礼しました。英雄あるいは勇者の方々には、お迎えに上がった際に自己紹介が済んでおりましたので、改めてすることもないかと……」

「……そ、そうであったか。ではルッサーナ・マジィステリュム・ディザンティース。お願いしよう」

「はい、リェックス・エンデュ・エンデュオス。……始めてお目に掛かります。英雄あるいは勇者の方々にお会い出来て光栄です。私はルッサーナ・マジィステリュム・ディザンティースです。天蓋の学問に携わっています、研究者あるいは教鞭者です」

 ルッサーナの自己紹介が終わると、冨佐枝の顔色が変わった。

――何故、研究者がこの場にいるの?

「こちら側の自己紹介は終わった訳だが……。緊急の要請にも関わらず早い対応に感謝する」

 冨佐枝が「通話」と小声で呟くと、全員のイヤフォンと繋がった。

「研究者がこの場にいることに疑問があります」

「川戸君。翻訳が“研究者あるいは教鞭者”となっていたがどう言うことだ?」

「この国では、身分がそのまま職業になっています。詳しい説明は省きますが、地球の英語圏のミドルネームに当たる部分が身分になります。この方は、どうやら学問に携わっているようですので研究者で良いかと。……先程疑問を提示しましたが、少々厄介な依頼かもしれませんね」

「確かにそうかもしれないが」

 冨佐枝の疑問に対して、考え倦ねる智であった。

「……まだるっこしい、俺が聞いていやるよ。良いところ見せるからな」

「待て、やめんか。敵対行動に映るぞ」

「フン。知ったことか」

「……角館さん。周りを見てみなさい、既に臨戦態勢ですよ。どうします?」

 目だけで周囲を見回す勇次は、衛兵が槍と思しき物を持ち直そうとしているのが目に入ったようで、「チッ」と小さく舌打ちし体の力を抜いた。すると、衛兵も待機へと戻ったようである。

 智達一行が、ぶつぶつと何やら呟き合っているのは目にしている筈であったが、それでも国王は未だに用件を述べる気配がなかった。

「んん。英雄あるいは勇者の方々には、以後少々の質疑を認めることとする」

「……リェックス・エンデュ・エンデュオス。よろしいのですか?」

「ウィルフレード・ミニステル・ジンジァレッティ。致し方なかろう。ついては何か話はないか?」

 国王をいさめようとしたのであろうが、逆に振られてしまったウィルフレードは、困り果てた挙げ句……。

「……んん。現状の国家間の状態については、英雄あるいは勇者の方々はご存じか。北にあるノルデュス皇国とは長年に渡って諍いが絶えず、国境付近では緊張が続くばかりなのです。で、う~む……」

 焦っているようにも、困り果てているようにも見えるウィルフレードは、しどろもどろになりながら思いつくままを語っているようである。

 一区切りついたと思われたところで、智が右腕の掌を上にして差し出した。先程、国王が直々に質疑を許可した事から智が賭に出たといっても言いすぎではないであろう。

「英雄あるいは勇者の方、質疑を許可しよう」

「リェックス・エンデュ・エンデュオス、感謝いたします。……ミニステル・ジンジァレッティの仰り用から察するところ、国境付近に問題が発生しているのですか?」

「……そ、そのような話は聞いていません」

 ウィルフレードの回答の後、間髪入れずに冨佐枝が右腕を差し出した。

「英雄あるいは勇者の方、質疑を許可しよう」

「リェックス・エンデュ・エンデュオス、感謝いたします。ミニステル・ジンジァレッティ。それでは、国内に何か出没でもしたのでしょうか?」

「そ、それも聞いていません」

 ウィルフレードは、智達から出された質問の全てに問題がないと答えている。それでいて、何か言いよどんでいる節が垣間見えているのが気がかりである。

――この床が柔らかい物であれば楽であろうに、そろそろ四人もきつくなっているであろうな。仕方がない……。

 智は、謁見のしきたりであるこの座り方に、自分も含め全員がそれほど持たないだろうと考えているのか、依頼内容をまだ告げないことに苛立っているのか、再度右腕を差し出した。

「……英雄あるいは勇者の方、質疑を許可する」

 ここに来て、国王も限界が近いのか、質問があれば楽なのであろう。正に渡りに船と言ったところのようで、矢継ぎ早にも関わらず質疑の許可が下りた。

「……リェックス・エンデュ・エンデュオス。緊急の要請は受理しておりますが、このまま止まる訳にもいきません。依頼内容の詳細をお話し下さい」

 智の敵対行為ともとられかねない内容に、冨佐枝は口を開いたものの動揺したのか言葉を失っていた。

 あまりの唐突さに周囲の衛兵も、戸惑ったようだが遅れた上にバラバラに武器を構えた。

「……止めよ!」

 武器を構えた衛兵に、制止を掛ける国王の声が室内に響いた。

「止めよ。……衛兵、待機だ」

 国王の一言の後、しばしの静寂が訪れた。誰一人として身じろぎすら出来なかったのである。

「ふぅ。……英雄あるいは勇者の方々よ。依頼の内容を告げることが出来ず、謝らねばなるまい」

 国王が謝罪する中、ウィルフレードも「私も同様です」と口添えしていた。

「……研究者あるいは教鞭者の研究結果によって、この大地には果てがないのではないかと知らされた。更には動いているのは天蓋ではなく大地であると発表されている。詳しくは、ルッサーナ・マジィステリュム・ディザンティースから話して貰おう」

 やや沈痛な面持ちで語る国王であった。そして、直々の指名のためか、ルッサーナの表情は引き締まって見えているものの、幾分か緊張の色も見えている。

「はい、リェックス・エンデュ・エンデュオス。……ご説明があった通り、私が研究している研究の中間結果を、研究者あるいは教鞭者の研究会議で資料を提示して発表したところ、その場で論争が巻き起こってしまいました」

 ルッサーナの言葉に、智や冨佐枝、理の表情が変わり、場の雰囲気が揺らいでしまったようである。

「……い、いえ、研究会議の場では良くありますので気にとめていませんし、問題もないと考えていました……。しかし、次第に畑違いの研究者あるいは教鞭者にまで広がっていきました。それでも、何れ理解されるだろうと考えました、ですが……。一部の研究者あるいは教鞭者が国民を巻き込んでの論争にまで持って行ったのです。……現在は、国内で諍いが起きそうな状態にまでに達しています」

 そこで言葉を切ったルッサーナは、目を閉じ意を決するかのように再び口を開いた。

「……こんな事態に発展していますが、研究は続けていますので、最終結果は何れ出せます。……出せますが、いつになるか分かりません。何か、何か早急に証明する手立てをお持ちではないですか?」

 ルッサーナの言葉に、智達は呆気にとられてしまっていた。勇者一行が必要である事柄と言えば、戦う関係だと高を括っていたこともある。

 智を始めとした面々は、互いに顔を見合わせていたが、その中で勇次だけは違っており、国王の許可を取らずに無言のまま立ち上がっていた。

 ざっと足を踏みしめる音がすると、勇次の行動に一呼吸送れて衛兵が武器を構えた。

「アカ、Zo()li()、アオze()lo()zo()le()Zi()ne()カラ、イlo()no()zo()Kye()se()○アカ、Zo()li()、アオze()lo()zo()le()Kyo()so()kyu()zu()ze()ゆうじオTo()ラエlo()○」

(対訳:赤と緑と青で彩られた陣から、色の加護を消し去れ。赤と緑と青で彩られた拘束具で、勇次を捉えよ。)

 衛兵の動きに首を巡らせた智は、勇次が無許可で立ち上がっているのを目にした。咄嗟にぶつぶつと何やら呟いたのである。

「俺の活躍する場はないな……」

 衛兵の武器に臆することなくそう呟いた勇次は、踵を返そうとした。

――何? 体が動かない。何でだ?

 その刹那。勇次は誰かに倒され左腕を背後で押さえられていた。

「……。てめぇ、何しやがる」

「馬鹿者! 自分が何をしているのか分かっているのか」

 衛兵ですら智の素早い動きに対応が出来ず、武器を構えたまま立ち尽くしていた。冨佐枝や理達は、何が起こったのかすら理解出来なかったようで、結果を見て固まってしまったかのように誰も言葉を発することが出来なかったようである。

――ふぅ。ひとまずは良しとするか。何はともあれ、拘束魔法が間に合った……。し、しまった。桃井に注意を受けていたのだったな、迂闊だった。……いや、消陣魔法も掛けていたのだ、気付かれてはいない筈だが……。

 吐息を漏らしながら勇次を拘束し続けている智は、やってしまったことにどうした物かと不安げな様子である。

「……リ、リェックス・エンデュ・エンデュオス。ま、誠に申し訳ありません。……勇者一行としてあるまじき振る舞い、後ほど厳罰に処しますのでご容赦下さい」

 我に返った冨佐枝が、立ち上がり掛けていた姿勢を謁見の姿勢に戻したには戻した。だが、発言の手順を踏まずに発言していることには気が付いていない、それ程動転していると言うことであろう。

「……う、うむ。英雄あるいは勇者の方々側で事を抑えたのである、問題などはない。それに、見事な動きと対応であった」

 冨佐枝の言葉に、国王も冷静さを取り戻したようで、智の行動を賞賛している。

 ひとまず、地球側とテーリアにある一国であるエンデュス王国との友好にひびが入らずほっと胸をなで下ろす冨佐枝であった。

「川戸君。衛兵は何をやっているのだ?」

「さて、何でしょう。只、安芸さんの行動を褒め称えているようにも見えますね」

 智の疑問は、衛兵が手にした武器を上へ下へと振り回していることのようであるが、こちらに長くいる冨佐枝ではあっても、この様な行動は見たことはないようである。尚、冨佐枝の解釈は、衛兵の表情が柔らかったことと、歓喜のような声を上げていることからの推測なのであろう。

「なるほど」

 未だ歓喜の声が収まらない中、理が右腕を差し出していた。冷静と言えば冷静なのであろうが、のんびりした性格であるが故のマイペースなのかもしれない。

「……ん? 発言か。許可しよう」

「リェックス・エンデュ・エンデュオス、ありがとうございます。では、その研究の方法を伺いたいのと、その研究には宗教的な何かが、その、絡んでいたりしますか?」

 理のこの発言により、謁見中であったことを一同が思い出して衛兵の歓喜の声が止んでいった。

 智は勇次の拘束を解くことはせず、理の質問の回答に耳を傾けていた。

「分かりました、お答えしましょう。研究の方法は、天蓋に向けて圧縮した水を張った箱と筒を幾層にも重ねて覗いています。水の張った箱は、高さを変えて複数にして観測したい部分を拡大するようにしています。次の質問ですが、研究は王国から承認を受けており、他の研究活動などとの関係性はありません。むろん宗教とも関わりを持っていません」

 ルッサーナの回答から、地球での状態とは違っていることが分かったようである。

 地球の中世以前は、研究資金を出していたのが国家ではなく宗教関係者からのことが多かったために、悲劇が多数起こったからである。

 ルッサーナの回答を聞いた理の表情がぱっと明るくなり、次の質問をしようとしたのだが、勇次を拘束している智が先に右腕を差し出していた。

「……この場の英雄あるいは勇者の方よ、発言を許可しよう」

 国王は、理に話の続きを聞きたいところであったようだが、智の表情、特に目に込めた何かを感じたようである。

「リェックス・エンデュ・エンデュオス、感謝します。……では。論争が争い事になったとしても、それを武力で抑えることは望ましくないと考えております。また、今回の依頼については我々一行が行う事柄ではないとも考えます。我々一行の中には現状で、天文学に詳しい専門家もおりません。それ故にこの場で依頼を受理する決定は出しかねますので、持ち帰り検討する時間を頂きたいと存じます」

 真っ直ぐであってそれでいて筋の通った智の回答に、国王は頷いて聞いていた。

「うむ。そなた等は英雄あるいは勇者であったな。もっともな意見である」

 そう口にした国王である。だが、心なしか表情が曇ってしまった様子。理が一時なりとも期待を膨らませてしまったのだ、智の言い分が正しかろうとも期待してしまった分、残念で仕方がないのであろう。

注釈

 エンデュス王国の言語翻訳:ブラウザ上のGooglラテン語翻訳から古ラテン語を参考にしています。

発音と言語は、ウィッキーペディアの古ラテン語を参考にしています。

 安芸智の呪は、日本語を元に創作した言語です。

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